スキャプラプレーンと投球動作
ケガ防止のためにスキャプラプレーン上での投球動作を意識しよう
選手の皆さんは普段のウォームアップで腕を挙げたり、回したりといった動作を行っていると思います。投球動作につなげるためのエクササイズとして行っているものですが、ここでぜひ「スキャプラプレーン」という言葉や概念についても学んでおきましょう。
日本語では肩甲骨面(スキャプラ=肩甲骨、プレーン=面)とも呼ばれています。肩甲骨は体の上背面に位置し、三角形状の平面的な骨ですが、丸みのある肋骨に沿って位置するため水平面に対してやや角度(水平面から前方に30°程度)を持っていることが特徴として挙げられます。背中に壁をついて円を描くように腕を横から回そうとする(肩関節外転)と、腕を視界の中でとらえることができると思います。腕を挙げるときはこのスキャプラプレーン上で行うと、関節を包む関節包や靱帯のバランスが安定し、上腕骨への回旋ストレスがかかりにくいと言われています。
スキャプラプレーンは水平面に対してやや前方に角度を持っていますが、肩甲骨を引き寄せるようにする(肩甲骨内転)とこの角度をよりひろげて投げることができます。腕を挙げるときに肩甲骨を引き寄せた状態で行うと、より水平面に近くなるため、ピッチャーであればバッターに対してリリースポイントが見えにくくなります。ところが肩甲骨を引き寄せないまま、腕だけを後方から挙げようとするとスキャプラプレーンから外れるため、腕はスムーズに挙がりません。それでも何とか挙げようとすると肩をすくめるといった代償運動が起こったり、肩の前方に過度なストレスがかかって痛みを発症したりといったことが考えられます。
投球動作の時に「胸を張るように」と表現されるのは、肩甲骨の引き寄せ動作を意識させる言葉であり、スキャプラプレーン上で投球動作を繰り返すことが、ケガの予防にもつながるものです。トレーニングにおいてもスキャプラプレーン上でエクササイズを行うとより効果的で、安全な動作につながることをぜひ覚えておきましょう。
文:西村 典子
球児必見の「セルフコンディショニングのススメ」も好評連載中!