Interview

「朗希世代」の主将だった近大・坂下翔馬、「165センチのスラッガー」への夢

2022.04.25

 2019年に侍ジャパンU-18代表の主将として、ロッテ・佐々木 朗希投手(大船渡高出身)、ヤクルト・奥川 恭伸投手(星稜出身)らと日の丸を背負って戦った坂下 翔馬内野手(3年)。智辯学園(奈良)では甲子園に2度出場し、近畿大でも1年生から主力として活躍している。身長165センチと小柄ながら各カテゴリーで輝かしい実績を残している坂下に話を聞いた。

「大きいやつには負けるな」が励み

「朗希世代」の主将だった近大・坂下翔馬、「165センチのスラッガー」への夢 | 高校野球ドットコム
高校時代の坂下 翔馬(智辯学園)

 小、中学生時代にはそれぞれ全国制覇を経験した。中学1年生の時にはカル・リプケン12歳以下世界少年野球大会の日本代表にも選ばれた実績を持つ。早くから全国にその名を轟かせていた坂下は、「地元のレベルの高い高校で甲子園に行きたい」と2016年春に全国制覇した影響もあり、地元・奈良の名門である智辯学園に進むことを決めた。

 智辯学園でも1年生からレギュラーとして活躍。「体が小さくても大きいやつには負けるな」と小坂将商監督から声をかけてもらったことが励みになっていたという。

「絶対に大きいやつに負けたくないという気持ちで常に練習していたので、監督さんにかけてもらった言葉の中で一番嬉しかったし、僕も自信を持って野球に取り組むことができました。小さいからといって長打を打てないと思われるのが僕は嫌だったので、大きいやつに負けないためにトレーニングをいっぱいしたりとか、バットを振る本数を増やしたりとか、守備の球を受ける数を増やしたりとか、自分の体をどう使えば大きく飛ばせるであったりとか、そういうことを色々考えて練習していました」

 こうした努力が実って、世代有数の内野手に成長した。最後の夏は甲子園に出場して、初戦で八戸学院光星(青森)に8対10で敗れたが、「凄く充実していた高校野球生活でした」と悔いなくやり切ることができた。

[page_break:侍のキャプテンで成長]

侍のキャプテンで成長

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坂下 翔馬(近畿大)

 甲子園が終わった後には侍ジャパンU-18代表に選出された。「正直、思っていなかった」という主将にも任命された。全国から選手が集まってくることもあり、コミュニケーションの取り方にも苦労したが、巨人・山瀬慎之助捕手(星稜出身)、DeNA・森敬斗内野手(桐蔭学園出身)、ヤクルト・武岡龍世内野手(八戸学院光星出身)など、所属チームで主将をしていた選手がサポートしてくれた面が大きかったという。

 U-18のメンバーには4月10日に完全試合を達成した佐々木朗希もいた。「大人しくて、自分からガツガツ話すようなやつじゃなかったです」と当時の印象について語っていたが、高校時代から投げる球は、ずば抜けていた。完全試合を達成した際には、「やっぱり凄いな」と思ったという。

 U-18で周りから刺激を受けて、大学や社会人志望からプロ志望に進路変更する選手もいたが、「周りのレベルを見て、自分はもう1回大学でレベルアップしてからプロの世界に行きたいなと改めて実感しました」と坂下は当初の予定通り、近畿大に進学した。

[page_break:不振でもぶれない選手へ/来年のドラフト指名目指し]

不振でもぶれない選手へ

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坂下 翔馬(近畿大)

 大学でバットが木製に変わったが、「自信はありました」と1年秋から打率.324をマークした。高校から打撃を大きく変えたわけではなかったが、「振る中でしっかりアジャストして、ブレないようにスイングするのを心がけてやっています」とよりミートすることの意識が強くなったようだ。

 しかし、2年春は打率.180の大不振。「何をしてもダメな時期でした」と試行錯誤する日々が続いた。その中でも「守備に繋がったら自分は終わりだと思っていましたし、打撃の面では自分の周りにもいいバッターがいっぱいいるので、打つことだけじゃなくて、しっかり塁に出ることを考えてやっていました」と状態が上がらない中でも最善を尽くした。

 打撃面が不調でも試合に使われ続けた理由は、守備が安定していたことが挙げられるだろう。守備面で高校時代より成長したのは、スローイングの安定感だと話す。

 「スローイングは松丸(文政)コーチに教えてもらってからは全然ブレなくなりました。捕球の面でも凄く指導されていたんですけど、高校に比べると、安定感が増したかなと思います」

 2年秋には再び打率3割超えと打撃の調子を取り戻し、今春には4月10日の関西学院戦ではリーグ戦初本塁打を記録するなど、攻守で活躍を見せている。

来年のドラフト指名目指し

 今年からは3年生ながら副主将を務めており、文字通りチームの中心選手となっている。練習でも学年関係なく、チームメイトを叱咤する。

 「最初は抵抗がありましたけど、自分のためにもなると思っています。3年生で副キャプテンは気を遣うところも出てくるんですけど、先輩たちのおかげでだいぶやりやすくやらせてもらっています。勝ちたい気持ちはみんな一緒なので、同級生、先輩関係なくガツガツ言っていこうと思います」

 実力もさることながら、闘志を前面に出してプレーする姿も坂下の魅力の1つだ。来年のドラフト指名を目指す坂下に目指す理想像について語ってもらった。

 「小さいからといって、ヒットだけじゃなくて、甘い球が来たらホームランも打てて、怖がられるバッターと、堅実な守備と小技ができる選手を目指して、これからもチームに貢献できるように頑張っていきたいです」

 今季好調の近畿大を支える坂下の活躍に注目だ。

(取材:馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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