瞬発力を支える土台とは
関節可動域を最大限にひろげることで、大きなパワーを生みだそう
パフォーマンスを支える体力要素の一つに、力とスピードを掛けあわせたパワーが挙げられます。より大きな力を短い時間で素早く発揮する能力であり、瞬間的に力発揮を行うことから「瞬発力」と表現されることもあります。シーズンを目前に控えて「瞬発力をつけたい」という選手もいると思いますが、体力的な土台(基礎体力)が十分に備わっていないと、瞬発力を求めて負荷をかけた結果、ケガをしてしまった…といったことにもなりかねません。瞬発力を下支えする体力的な土台とはどのようなものでしょうか。
1)筋力
大きな力を発揮するため、筋力は欠かせない要素の一つです。特にジャンプ動作では下肢筋力が備わっていないと荷重関節(体重のかかる股関節、膝関節、足関節など)に過度なストレスがかかってケガをしやすくなります。瞬発力を高めるためには着地の衝撃を受けて、その力を利用してさらに大きな力を発揮するということを繰り返すため、基礎的な筋力が乏しい状態で優先されることは、瞬発力の強化よりも筋力レベルの向上です。オフシーズンから続けてきた筋力トレーニングを継続して行うことを心がけましょう。
2)体幹の安定
また瞬発力を強化するためには、大きな力に対して体幹が前後・左右などにブレないことも重要です。スイング動作や投球動作など体から離れていく遠心性の力に対し、そのたびに体幹がブレてしまっては力のロスにつながってしまいます。体幹を安定させるためには背骨や骨盤の近いところに付着する深層筋(いわゆるインナーマッスルと呼ばれるもの)を中心にトレーニングを行うことが必要です。一方、体幹の表層部にある筋肉群は回旋するときのパワー発揮などに役立ちますので、こちらもあわせて強化しておくようにしましょう。
3)柔軟性
体をバネのように使うときは関節を固めて(ロックして)力が地面に吸収されないように保ちますが、これは単に関節が硬い方がいいというわけではなく、場面場面によって関節をコントロールする力が備わっていることを意味します。大きなパワーを発揮する際には加速する距離が長いほど、より強くなることを考えると関節可動域(関節の動く範囲)は大きい方がよいと言えるでしょう。関節可動域を制限しないように筋肉の柔軟性を高めておくことも求められます。
瞬発力を鍛えるためのトレーニングは体に大きな負荷がかかりやすく、あらかじめ体力的な土台を大きくしておくことが必要です。トレーニングによるケガを防ぐためにもこうした体力面を十分に強化した上で、瞬発力の強化に取り組むようにしましょう。
文:西村 典子
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