Column

天理 中村監督による新エース改造指令が奏功【前編】

2022.01.13

 全国屈指の名門として名高い天理(奈良)。昨秋の近畿大会でも4強入りを果たし、3年連続のセンバツ出場をほぼ手中に収めた。25年ぶりのセンバツ頂点への挑戦。今回はチームの昨年秋の大会を振り返る。

天理 中村監督による新エース改造指令が奏功【前編】 | 高校野球ドットコムあわせて読みたい
天理 中村監督による新エース改造指令が奏功【前編】
3年連続センバツへ 今年の天理の注目選手は?【後編】
「甲子園であの紫を」天理に憧れU-12で現エースと共に進学決めた主将【前編】
楽天・浅村を目標に、主将としてセンバツV目指す【後編】
天理 ドラフト1位・達の後継者は188センチのサイド右腕【前編】
フォーム改造で別人。天理の長身右腕 達から借りた「ひみつ道具」で手応え【後編】
父は元Jリーガー 天理の4番は名門・生駒ボーイズ出身【前編】
通算17本塁打誇る天理のスラッガー「目指している部分は一緒」元Jリーガーの父は目標の存在【後編】

奈良県3位からの「反撃」

天理 中村監督による新エース改造指令が奏功【前編】 | 高校野球ドットコム
戸井 零士

 日本ハムからドラフト1位指名された達 孝太投手(3年)が抜けて始まった新チームだが、南澤 佑音投手(2年)が新エースとして台頭。打線も甲子園経験者の戸井 零士内野手(2年)と内藤 大翔内野手(2年)を中心に活発だ。

 昨年はセンバツで4強入りを果たすも、夏は奈良大会準決勝で敗退。新チームの主将は1、2年生の投票で決められることになっており、今年のチームは戸井が自身の票も含めて満票を獲得した。

 副主将は投手、捕手を含めた内野手、外野手から主将がそれぞれ1人ずつ選ぶことになっており、戸井は南澤、藤森 康淳内野手(2年)、大城 志琉外野手(2年)を指名。彼らを中心に新チームがスタートした。

 センバツに出場した過去2年と比べて、「力は一番ないですけど、まとまりは同じくらいあると思います」と中村 良二監督は話す。そのまとまりを生み出しているのが、ほかでもなく主将の戸井だ。「自分の背中を見せながらやれるタイプのキャプテン」と指揮官が評する戸井は、下林 源太内野手(現・天理大)、内山 陽斗外野手(3年=法政大進学予定)といった過去2年の主将と同じように背中で引っ張れる存在。近年の好成績は主将の力によるところもかなり大きいようだ。

 しかし、秋の奈良大会は苦戦を強いられる。準決勝の高田商戦で南澤が打ち込まれ、9対13で敗戦。3位決定戦で奈良北に7対3で勝利してどうにか近畿大会の切符を掴んだが、課題の残る結果となった。

 県大会3位から近畿大会を勝ち上がったのは2年前と同じ。高校生は短期間で大きく成長するが、中でも一気に飛躍を遂げたのが南澤だ。元々はスリークォーターで投げていたが、達への憧れもあり、高校に入ってからはオーバースローに転向していた。しかし、球に強さがなく、変化球のストライク率も悪かった。それを露呈する試合となったのが、敗れた高田商戦だったのだ。

[page_break:フォーム大改造が成功]

フォーム大改造が成功

天理 中村監督による新エース改造指令が奏功【前編】 | 高校野球ドットコム
南澤 佑音

 この敗戦を機に中村監督は、南澤にスリークォーターへの再転向を提案した。「何か変えないといけないと思ったので、思い切って覚悟を決めて変えました」と南澤も素直に受け入れた。

 すると、近畿大会では1回戦の滋賀学園(滋賀)戦で10回2失点、準々決勝の市立和歌山(和歌山)戦は9回1失点でそれぞれ完投。高田商戦とは見違えるような好投でチームを4強入りに導いた。

「ストレートも良かったし、バッティングカウントでスライダーやカーブで簡単にストライクを取れるんですよ」と中村監督はスリークォーター転向後の南澤について語る。エースが本来の投球を取り戻したことで守りが落ち着き、投打のかみ合った試合を展開することができるようになった。

 準決勝では大阪桐蔭(大阪)と対戦。全国屈指のチームを相手に力試しという位置付けで挑んだが、1対9で7回コールド負けを喫した。打線は先発の前田 悠伍投手(1年)に対して9安打を放ったが、要所を抑えられ、逆に守りでは12安打で9失点と効率良く得点されてしまった。

「前田君から、そこそこチャンスは作りましたけど、ここぞの一本を出させてくれなかった。大阪桐蔭さんは試合巧者というか、チャンスを作ったらことごとく点に絡めたんですよね。それで点差の開いた試合になったんじゃないかなと僕は分析しています」

 11月20、21日には香川県での招待試合に参加した。秋の香川大会で4強入りしたチームと2日間で4試合を戦い、4戦全勝。「しっかり力試しに行って、4勝して帰ってこられた。それが凄く彼らの中では自信になったと思うんですよね」と中村監督は選手たちの成長ぶりに手応えを感じていた。

 後編ではこの冬の取り組みを紹介する。

(取材=馬場 遼

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.07.24

2連覇ならず…浦和学院、頼みの投手陣が崩れ、春日部共栄に逆転負け

2024.07.24

享栄、愛工大名電を破った名古屋たちばなの快進撃は準々決勝で終わる...名門・中京大中京に屈する

2024.07.23

「松坂さんを超える投手になる」偉大な先輩を夢に見る横浜のスーパー1年生が最速147キロを計測!4回5奪三振完全投球で決勝進出に貢献!

2024.07.23

全国トップレベルの投手陣が打ち込まれる…仙台育英、被安打19、8失点で15年ぶりの決勝戦敗退

2024.07.23

23年ぶり夏将軍復活へ!松山商「勝利の最短距離を走る野球」で初戦突破!

2024.07.20

伊集院の好左腕・新藤、終盤力尽き、鹿児島実に惜敗【24年夏・鹿児島大会】

2024.07.20

枕崎が1時間半遅れの試合でも集中力を発揮!堅守を発揮し、2年連続の8強!【24年夏・鹿児島大会】

2024.07.21

【中国地区ベスト8以上進出校 7・20】米子松蔭が4強、岡山、島根、山口では続々と8強に名乗り、岡山の創志学園は敗退【2024夏の甲子園】

2024.07.20

【夏の逸材123人成績速報】198センチ左腕、世代屈指のスラッガー、大分の県立に現れた150キロ右腕などドラフト候補が大活躍!北海道NO.1左腕がプロ志望を表明

2024.07.21

愛工大名電が今夏3度目のコールド勝ちでV4に前進!長野では甲子園出場37回の名門が敗退【東海・北信越実力校20日の試合結果】

2024.07.08

令和の高校野球の象徴?!SJBで都立江戸川は東東京大会の上位進出を狙う

2024.06.30

明徳義塾・馬淵監督が閉校する母校のために記念試合を企画! 明徳フルメンバーが参加「いつかは母校の指導をしてみたかった」

2024.06.28

元高校球児が動作解析アプリ「ForceSense」をリリース! 自分とプロ選手との比較も可能に!「データの”可視化”だけでなく”活用”を」

2024.06.27

高知・土佐高校に大型サイド右腕現る! 186cm酒井晶央が35年ぶりに名門を聖地へ導く!

2024.06.24

愛媛の組み合わせ決定!今春優勝の松山商・大西主将は「どのチームと闘っても自信をもってベストなゲームをしたい」シード4校主将が意気込み語る!