木更津総合vs東海大相模
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出場校トップクラスの東海大相模投手陣を攻略!ベスト4進出の木更津総合の打撃アプローチ法とは?
打球の行方を見る芦川(木更津総合)
11月2日、秋季関東大会準々決勝・木更津総合vs東海大相模の一戦は木更津総合が4対1で東海大相模に勝利し、ベスト4進出を決めた。この試合の活躍選手を取り上げていきたい。
両校は2019年の春季関東大会でも対戦しており、4対3の好勝負を演じている。ともに名門校同士の対決もあって、平日ながら水戸市民球場の内野席は、ほぼ埋め尽くされた状態に。両校の人気の高さが伺えた。
東海大相模の先発は庄田聡史、木更津総合の先発はエースの越井颯一郎となった。
この試合は木更津総合の打撃力が全国レベルだと実感させられる試合となった。東海大相模の先発・庄田は秋季神奈川大会準々決勝、準決勝と2試合連続で完投勝利を挙げ、今年の東海大相模投手陣の中で最も投球ができる。立ち上がり、130キロ後半の速球をマークして、ボールの勢いは悪くなかった。ただ、木更津総合の打力が上回った。
1回表、一死から2番朝倉暖が四球で出塁し、3番菊地弘樹が内野安打で一、二塁。そして4番水野岳斗が中前安打で満塁のチャンス。5番大井太陽の三ゴロの間に1点を先制。そして6番芦川正真が左中間を破る適時二塁打で二者生還し、いきなりの3点先制。スタンドがざわつき始める。
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1回裏、犠牲フライで1点を返されたが、5回表には水野岳斗がライトの頭を越える適時二塁打で貴重な1点を追加した。
観衆を驚かせたのが木更津総合の打撃である。計10安打。まずグリップを短く持ち、振り抜きがしやすい形になったのも1つの要因だったが、もう1つは打席内のアプローチである。完成度が高い庄田に対し、変化球を狙う指示を出し、また普段の打撃練習では、変化球の後に直球、直球の後に変化球と、バッテリーならば同じ球を続けるのではなく、緩急を使って投げる。そこに惑わされないよう、準備をしてきたのだ。初戦では6安打3得点しか取れなかった。しかし4番水野は「初戦を勝って、楽になったと思いますし、良い状態で入ることができました」と語る。この日も甘く入った変化球を逃さずに2安打1打点の活躍と1年生4番として楽しみな活躍を見せた。二塁打を放った芦川は試合後でも笑みを見せ「練習試合では打てなくて、調子が上がらなかったですけど、大会前の5日間でしっかりと打てて良かった」と喜んだ。
2年生たちの気合が凄かった理由として、前チームは秋の関東大会準々決勝で敗退、夏は決勝戦敗退。あと一歩で負けた悔しさが成長の原点となった。
芦川は「あと一歩で負けた悔しさを忘れず、やってきたことが実って嬉しいです」と答えた。五島監督は選手たちの思いを汲み取り、「夏も秋も、あと一歩で敗れていて、選手たちも気持ちが入っていた。とにかく先制点が大きく、芦川がよく打った。甲子園がかかった試合で東海大相模さんを破ることができたのはこのチームにとって大きいですね」と選手たちを大きく称えていた。
全国トップクラスの投手陣である東海大相模にこのゲームができたのは五島監督の言葉通り、大きな経験値となったはずだ。
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145キロの速球、80キロ台の超スローボールも!木更津総合の146キロ右腕・越井颯一郎が覚醒の快投
先発・越井颯一郎(木更津総合)
木更津総合の146キロ右腕・越井颯一郎もまさに一本立ちしたといえる快投だった。初戦の帝京三戦では完封勝利。前評判通りの投球を見せ、この日は完投勝利を挙げた。
この試合もアドレナリンを発揮し、145キロのストレートを投げ込み、観衆をざわつかせた。2回以降は135キロ〜140キロのストレートに伸びがあり、対応力が高い東海大相模打線を力で押すほど。120キロ前後のスライダーを右打者だけではなく、左打者の内角にも投げ分け、狙い球を絞らなかった。
4回裏には80キロ台の超スローボールを投げ込み、アクセントをつけてからの約60キロ差の140キロ前後の快速球を投げた。さすがの東海大相模打線も面食らった。ただ、五島監督は多用しすぎには注意を払っており、越井にはスローボールの頻度を減らして打ち取る配球を求めている。五島監督の方針には賛成で、あのボールはよほどの余裕のある展開しか使えない。その点、正捕手の中西が工夫をしていた。
「東海大相模打線が強力なのは理解していたので、攻め方も同じコース、球種にならないよう気を配りました」
まずバッテリーが決めていたのは先頭打者を絶対に抑えること。大西は「ベンチからも、先頭は絶対に抑えろ!といわれていましたし、一番気をつけた場面でした」と、単調にならない攻めを心がけた。結果として、3回以降、先頭打者を抑え込み、終始、越井のペースで投げることができた。
中西は「立ち上がりが課題の投手ですので、3回まで1点以内に抑えることができてよかったですし、短い球数で抑えるイニングもあったのが良かった」と勝因を語った。
フルスロットルで投げれば145キロ投げられるスピード能力があり、変化球は縦横、緩急も使える。引き出しが豊富で、そしてボールも強い。木更津総合は毎年、好投手を輩出するが、先輩たちに負けない器を持った逸材であることは間違いないだろう。
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1ヶ月前と別人!23年を代表する遊撃手・百崎蒼生(東海大相模)が攻守で大躍動
3番ショート・百崎蒼生(東海大相模)
敗れた東海大相模。県大会や関東大会初戦で見せた速攻劇で優位な展開に持ち込み、強力な投手陣で圧倒する戦いができなかった。何より今年の投手陣の中で最も投球ができる庄田が打ち込まれ、出鼻をくじかれる展開となった。その中でも楽しみな選手がいる。それが1年生ショートの百崎蒼生だ。県大会までの百崎は、リストの強さを活かし、鋭い打球を飛ばし、強い送球をするイメージで、守備はやや粗さがあった。しかし1ヶ月でこれほど変わるのか…と驚くほどの成長を見せた。
まず打撃。初戦では5打数5安打。この試合でも木更津総合のエース・越井から4打数2安打、2試合で打率.778と大当たりを見せた。広角に打ち分ける打撃が光った。見ていて感じたのは下半身の動きに粘りが生まれたこと。速球、変化球に対しても体が突っ込まず、どのコースに対しても反応して、広角に打ち分けができている。
打撃以上に成長を感じたのが、守備だ。県大会までの百崎は、ステップも不安定で、肩の強さでカバーするスタイルだった。ただ、この1ヶ月でいわゆる「足が動く」守備ができている。まだ粗さはあるが、バウンドの合わせ方が良くなり、難しい処理にも対応し、さらに三遊間寄りのゴロ、セカンドベース寄りのゴロにも素早く処理して、送球がしやすい形になったため、百崎の強肩がより生きて、鋭い送球ができるようになっている。
東海大相模は県大会終了から1ヶ月空き、調整が難しい部分があったという声があったと聞かれる。ただ高校生にとって練習も練習試合もこなせる1ヶ月は個人のスキルを成長できる期間でもある。東海大相模の場合、百崎だったといえるし、最も成長した選手ではないだろうか。
熊本泗水ボーイズ時代は中学通算19本塁打を放ち、両翼100メートルのHonda熊本グランド左中間スタンド最深部に、推定120メートルの本塁打を叩き込んだ逸話もある。その凄さを中学担当の記者から聞いていたが、その凄さをようやく実感できた。
早い話になるが、2023年のドラフト戦線はかなり楽しみになるのではないか。来春、どんな成長を見せてくれるのか、楽しみにしたい。
(取材=河嶋 宗一)
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先発・庄田聡史(東海大相模)
声を出す深谷謙志郎(東海大相模)