グランドで行う疲労のモニタリング
野手のベースランニングは定期的に測定し、疲労の指標に役立てよう
練習や試合が終わった後に「疲れた~」とつい言ってしまうことは日常茶飯事でしょう。体力的な疲労だけではなく、プレッシャーのかかる場面でのプレーなどで精神的にもストレスがかかり、これが蓄積していくとオーバートレーニング症候群と呼ばれる慢性的な疲労状態におちいることもあるので注意が必要です。
●主観的な疲労度を記録する
疲労は目に見えて数値化できるものが少なく、グランドでは皆さんの主観的な評価によるものが大きな役割を占めます。練習日誌をつける習慣がある人は、そこに「疲労度」を書いておくと良いでしょう。10段階に設定し、0は「回復が非常に不完全/非常に疲れている」状態、10は「回復が大いに順調/活力がみなぎっている」状態を表すようにします。毎日記録しておくと、週末にかけて疲労度が増大し、休みの翌日はコンディションが良いといった傾向もわかるようになります。
●投球速度や投球数のモニタリング
投手については投球速度や投球数を管理することで疲労のモニタリングを行うという研究が多く発表されています。試合が終盤になるにつれ、投球数が増えて投球速度が少しずつ落ちてくることは、皆さんの経験からも理解できるところではないかと思います。ただしあえて全力で投げようとすると、体に余計な力が加わってしまい(いわゆるブレーキをかけながらアクセルを踏む状態)投球速度が上がらないばかりか、関節や筋肉により大きな負担がかかることが懸念されます。投球速度や投球数を管理することは、ピッチャーの疲労状態をはかる上でのよい指標となりますが、あくまでも力むことなくいつもどおりのプレーを続けることが疲労状態の把握には不可欠です。
●野手は走速度を参考に
野手についても年間を通して疲労をモニタリングすることはとても重要です。グランドでの指標としては走速度の測定が一つの参考数値となるでしょう。オフシーズンに入る前や、シーズンインする前に体力測定を行うことがあると思いますが、この時にホームから1塁への駆け抜けタイム、1塁~3塁(もしくはホームから2塁)までの2塁間のタイムを測定しておきます。シーズン中は改まって測定時間を設けることは少ないと思いますが、走塁練習の一つとして定期的にこれらの走速度を測っておくと、疲労の蓄積を評価する指標となることが期待できます。指導者やトレーナーなどの専門職の方は、ランニングパフォーマンスが基準値の10%以上低下したときは選手のコンディションを注意深く観察し、疲労の蓄積について考慮することも検討しましょう。
参考資料)NSCA「Strength & Conditioning Journal」May 2016. Volume 23. Number 4
文:西村 典子
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