試合レポート

木更津総合vs帝京三

2021.10.31

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圧巻の2安打完封劇!木更津総合エース・越井颯一郎が躍動

木更津総合vs帝京三 | 高校野球ドットコム
ベンチへ引き返してくる木更津総合・越井 颯一郎

 千葉県大会では投打で圧倒して頂点に立った木更津総合。今大会屈指の戦力相手に「力勝負になると思います」と正面から向かっていったのは帝京三

 この秋から大牧監督が指揮を執り、いきなり結果を出している帝京三は、エース・三上 大貴が注目される。県大会で参考記録ながら完全試合を達成した実力者が、木更津総合の注目右腕・越井 颯一郎とどこまで投げ合えるか。投手陣の出来がポイントに思われたが、その通りの試合展開となった。

 木更津総合・越井は、初回から142キロを計測するなど全力投球で帝京三を圧倒。三者凡退の圧巻の投球で勢いを作ったかのように思われたが、帝京三・三上も負けていなかった。

 先頭の山田 隼に四球で出塁するも、変化球主体に打たせて取る投球で良い打球も帝京三の野手の守備範囲へ。2回まで無得点に終わった。

 ただ3回、木更津総合は併殺崩れと盗塁で二死二塁とチャンスを作ると、3番・菊地 弘樹がしぶとく三遊間を破ってタイムリー。木更津総合が先制点を掴むと、リードをもらった越井は4回以降は変化球も織り交ぜた巧みな投球。帝京三にヒットすら許さず、1点のリードを死守する。

 打線はその後、帝京三・三上もスライダーを中心にした投球で追加点を奪えなかったが、8回にエラーなどで一死満塁とチャンス。ここで5番・大井 太陽の犠牲フライなどで2点追加。3対0と試合を決めた。

 越井は最後まで投げ抜き完封勝利。エースとしての役割を果たし、帝京三を下した。

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木更津総合先発・越井颯一郎

 今大会注目右腕として挙げられた越井は、前評判通りの投球を見せた。完封勝利という結果はもちろんだが、ボールの質を見ても凄まじかった。

 初回から球場のスピードガンで142キロを計測。その後も140キロ台を連発するなど、立ち上がりから飛ばしていき、帝京三に対して投球でプレッシャーをかけているようにも見えた。

 テイクバックが大きいフォームだが、踏み出す左足でしっかりとブレーキをかけると、その反動を利用しながら強烈な縦回転で身体を捻る。その動きに合わせて腕も力強く振れているからこそ、140キロを超えるスピードボールを投じることが出来る。

 ただこの試合で越井が評価したのは変化球だ。特に「スライダーが一番良かったです」と自己分析するように、120キロ台を計測する切れ味鋭いスライダーで帝京三から空振りを奪うシーンは多く見られた。さらに、タイミングを外す100キロ前後のカーブや、さらに110キロ台のチェンジアップも使って、最速146キロの真っすぐだけに頼らない幅の広い投球で帝京三に的を絞らせなかった。

 なおかつ、9回を投げて打者30人に与えた四死球は1つだけ。2回に5番・三上に当てたものだけで、四球は1つもない。公式記録を振り返っても、ボール球は116球のなかで37球だけ。ストライク率で考えれば、68.1%と持ち味であるテンポの良い投球が十分発揮された。

 その点に関しては越井自身も、「打線に流れを持ってくるには、テンポと元気が必要だと思っている」とコメント。チームの勝利のためには、気持ちを出すことだけではなく、テンポの良さも大事にしていた。それを考えれば、今日の投球は及第点だったと言えるだろう。

 ストレートに注目しがちだが、変化球も使ってテンポの良さも光る越井。次戦は強打・東海大相模。どんな投球で選抜を大きくたぐり寄せるか。

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帝京三先発・三上大貴

 木更津総合・越井の前にヒット2本に封じられた帝京三。ホームは遠かったが、堅い守備力で県大会では打線が活発だった木更津総合を抑えて接戦に持ち込んだ。これは大牧新監督が大事にしてきた「やれることをしっかりやる」という凡事徹底が実践できたからこその結果だ。

 特に中心選手である三上は、木更津総合相手に素晴らしい投球を見せた。身体はまだ細いが、しっかりと胸を張って鋭く横回転できる投球フォームから、ストレートは130キロ後半を計測。また外角への制球が良く、ボールになったとしても際どいところに投げられており、審判の手が上がってもおかしくないボールが多かった。

 そのストレートを際立たせたのは、110キロ台のスライダーと120キロ台のチェンジアップ系の変化球だ。鋭く変化するスライダーはコーナーを突いて空振りを奪う。または見逃してカウントを稼ぐために使うと、120キロ台のチェンジアップ系の変化球は、ゾーンで勝負。ストレートに近い軌道で小さく変化しているのか、木更津総合の各打者から凡打の山を築き、リズムを作った。

 タイミングを外すカーブも時折使っていたが、基本的にはこの2球種を軸にしつつ、大事な場面で130キロ後半の真っすぐを投げ込む。変化球主体の技巧派右腕で木更津総合・五島監督も「バッターが打ちずらくて、千葉にはあまりいないタイプかなと思います」と評価した。

 県大会で5回参考ながら完全試合をしたのもうなずける投手だったが、今後はマークされる立場になる。春以降、三上はじめ帝京三の真価が問われるだろう。そのマークをはねのけ、春に結果を出せるか注目だ。

(取材=田中 裕毅

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ヘッドスライディングで顔は真っ黒な・山田 隼

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死球に悶絶気味の帝京三・三上大貴

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勝利の瞬間に笑顔を見せる木更津総合・越井颯一郎

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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