回旋動作を改善したい
試合では回旋動作をスムーズにするためにも大きく息を吐いてみよう
投球動作やバッティングの動作など、野球のプレーには「体をひねる」動き=回旋動作、が多くあります。回旋動作は腰で行っていると思われがちですが、実は脊柱の中でも胸椎部分が一番大きくひねられます。腰椎の回旋可動範囲は左右5°程度ですが、胸椎の回旋可動範囲は左右30°程度動くといわれています。回旋動作を改善したいと考える場合は、まず胸郭の動きをチェックすることから始めましょう。
胸郭とは腰の上に位置し、胸部を保護する「かご状」の骨格部分を指します。背骨の一部である12個の胸椎と肋骨、胸骨で構成され、心臓や肺などを外的ストレスから守ります。12個の胸椎一つ一つが少しずつ右、あるいは左へと回旋することで、体全体を大きくひねることが可能になります。この動作をスムーズにするためにまず思いつくのがストレッチでしょう。ウォームアップなどでよく見られる胸郭のストレッチとしては、四股踏みの状態で左右の肩を交互に体の中心に持ってきて体幹をひねる動作が挙げられます。比較的どのタイミングでも手軽にできるものです(イチロー選手もよく行っていましたね)。この他にも四つんばいで片手を頭の上に乗せ、乗せている側の肘を天井に向けるように体をひねる動作なども胸郭のストレッチとして実践したいものの一つです。
また試合など緊張した場面では知らず知らずのうちに呼吸が浅くなり、体全体が少し浮き上がったような状態になることがあります(本人は気づかないこともあります)。そうすると胸郭内では呼吸をつかさどる横隔膜の位置が高くなり、回旋動作に支障がでることがあります。この時は緊張をほぐす意味でも「一呼吸置く」と言われるように、大きく息を吐いてみましょう。息を吐くと副交感神経が働き、脈拍を少しおさえることができるため、ドキドキした脈拍が落ち着きます。また息を吐くことで横隔膜の位置が下がり、内臓を押し下げて胸郭内部にスペースをつくることができます。この状態で体をひねるようにすると、より大きな回旋可動域が得られるようになります。
この他にもウォームアップでキャリオカステップを取り入れたり、ツイストランジを入れたりすることでも胸郭の動きが良くなることが期待できます。さまざまなアプローチ方法がありますので、場面場面に応じて実践してみてくださいね。
文:西村 典子
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