具志川商vs福岡大大濠
初の決勝進出に導いた具志川商の二刀流・新川俊介に漂うカリスマ性
本塁打を放つ新川 俊介(具志川商)
4月28日、春季九州大会の準決勝第2試合は具志川商が8対0で福岡大大濠に8回コールド勝ちを収め、決勝進出を決めた。
ついに三度目の対決で福岡大大濠を破った具志川商。近年どころか、2001年にスタートした21世紀枠として出場した学校の中でもトップレベルの実力を持ったチームではないか。そう実感させるほどの力強い試合運びだった。
その具志川商を牽引するのがエースで、主砲である新川俊介ではないだろうか。登録上、180センチ78キロ。だが、それ以上を感じさせる体格の良さがあり、具志川商の選手の中でも際立つ。
投げては最速144キロ、打っては通算10本塁打以上と、投打で才能あふれる存在だ。そんな新川は1番レフトとしてスタメン出場した。1番起用は初めてだという。この起用の意図について喜舎場正太監督はこう語る。
「うち(具志川商)の打線の力量やもし対戦してみた時、どういう並びが一番嫌なのかなと思って打線を組みました。そこで一番良い打者を並べて行った時、1番になったのが新川だったのです」
その新川は早速、期待に応える。福岡大大濠の1年生右腕・松尾尚哉が投じたチェンジアップを見事に振り抜き、左中間を切り裂く二塁打を放つ。
「大会に入って打撃の調子が良くて、打ったボール(チェンジアップ)もよく見えていて、しっかりと捉えることができました」
さらに第2打席。狙っていたカーブを見事に振り抜き、レフトスタンドへ。打った瞬間、本塁打と確信できるものすごい飛球だった。第3打席でもバックスクリーンのフェンス際のセンターフライ。ここまで12打数4安打ではあるが、ヒット1本1本の中身が濃く、数字以上に恐ろしさがある。
そのパフォーマンスを支えているのは技術の高さだろう。投手としては吉田輝星(金足農-北海道日本ハム)を参考にしているように、下半身主導で体重移動を行い、打者よりでリリースできる球持ちの良さがあり、まさにお手本のような投球フォーム。
そして打者としてはインパクトまで無駄がなく、そして捉えた瞬間にかち上げるようなスイングでボールを遠くへ飛ばす。腰が入っていて、鋭く旋回できるフォームであり、長打を量産できるのが分かる。センバツの時から投打で高いセンスを発揮していたが、グラウンドレベルで間近でみてみると、これほど迫力がある選手なのかと驚くことばかりだ。
喜舎場監督は技術の高さだけではなく、独特の感性についても評価する。
「私は良い意味で彼が考えていることが分からないところがあります。たとえば私は投手出身なので、試合を見ると、このコースが投げられれば、打てないと思ったら、そのコースを捉えて豪快な当たりをしたかと思えば、ど真ん中を見逃したり、また投手としてバテバテかなと思った矢先に最速を出したり、読めない選手です」
人々の予想を良い意味で超えるパフォーマンスが見せられる。そういう選手こそ高いステージで勝負できる条件が備わっているだろう。ある種、カリスマ性を持ったプレイヤーだ。
かつて部員不足で悩んでいた具志川商を率い、強い組織力で強豪私学を立て続けに破るまでのチームを見守ってきた喜舎場監督も新川の可能性を強く信じている。
決勝戦の相手は今大会最強の投手力を誇る九州国際大付が相手だ。新川自身、簡単にいかない相手というのは理解している。
新進気鋭の具志川商の象徴として新川の一投一打が見逃せない。
(取材=河嶋 宗一)