投球フォームと上腕二頭筋長頭腱炎
投球動作と上腕二頭筋長頭の痛み
投球動作を繰り返していると肩の前側に痛みを感じることがあります。投球動作に伴う肩痛を「野球肩」とまとめてしまうこともありますが、特に肩を挙げる時や大きく胸を反らせた肩の最大外旋位、リリースでのひねり動作などに肩の前側に強い痛みを伴う場合、上腕二頭筋長頭の腱に炎症を起こしている可能性があります。
上腕二頭筋はアームカールなどで鍛えられる上腕の筋肉ですが、二頭筋という名前の通り長頭と短頭と呼ばれる2つの筋肉で構成されています。そのうち長頭は肩甲骨から始まって肩の前面を通り、前腕の骨に付着します。上腕骨にはこの長頭腱を正しい位置で安定させておく溝が存在しますが、ここに繰り返し大きな負担がかかると炎症を起こしたり、時にはその溝から腱が逸脱してしまうこともあります。大きな負担の原因として考えられているのは、オーバーユース(使いすぎ)が代表的なものですが、肩の前側に負担のかかりやすい姿勢であったり、繰り返される投球動作によっても炎症を起こすことがあります。
《下半身や体幹を活かしていない手投げ状態》
大きな力を上半身のみに頼って投げようとすると、肩への負担は大きくなります。特にリリース時に体が開いてしまう、ひねり動作を肩や腕で行う、肘が十分に上がっていない状態で担ぐように投げてしまうといったフォームは肩の前方にストレスがかかり、上腕二頭筋長頭を傷める一因となります。
《猫背や肩が前方に丸まっていないか》
背中が丸まった猫背や、肩がやや前方に移動し丸まった状態は、姿勢そのものが上腕二頭筋にストレスをかけている状態と言えます。この状態から肩を挙げたり、投球動作で腕を大きくしならせようとすると、さらに肩の前側に負担がかかって炎症を起こすことが考えられます。肩の位置を横から確認し、姿勢をチェックしてみましょう。
肩の前側に痛みを伴う場合はRICE処置を基本とし、痛みが継続する場合やだんだんと強くなる場合は医療機関を受診して、適切な処置を受けるようにしましょう。また上腕二頭筋長頭腱炎の場合は、患部のケアやリハビリテーションとともに原因と考えられる姿勢や投球フォーム等についても見直す必要があるかもしれません。
文:西村 典子
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