試合レポート

川越東vs浦和学院

2020.09.27

Aシード・浦和学院敗退!川越東が対浦和学院戦初勝利!

川越東vs浦和学院 | 高校野球ドットコム
浦和学院先発・宮城誇南

【熱戦の模様をギャラリーでチェック!】

 小雨舞う中始まった[stadium]県営大宮球場[/stadium]の第一試合は、浦和学院川越東の一戦である。この対戦は4年ぶりとなる。前回は2016年秋初戦で激突し、その時は佐野や蛭間などを擁する浦和学院が8回コールドで勝利しそのまま優勝を飾った。それ以来の対決となる。

 両チーム不動のオーダー。先発は浦和学院がエース左腕の宮城誇南(1年)、一方の川越東は背番号11の1年生左腕・伊藤匠海が初先発し試合が始まる。これは昨日中止になった[stadium]上尾市民球場[/stadium]でのオーダーと全く一緒だ。唯一違う所は、昨日は浦和学院が先攻であったが、この日は川越東が先攻となった所だ。

 試合は序盤から両先発が安定した投球を見せる。

 浦和学院の最初のチャンスは3回裏であった。この回先頭の河原杜吾(2年)が右中間へ二塁打を放ち無死二塁とする。続く松嶋晃希(2年)はバントの構えで初球様子を見たが、そこで二走・河原の離塁が大きくなった所をキャッチャーに刺されてしまう。結局松嶋は四球を選び出塁すると、二死後1番・吉田匠吾(2年)も死球を選び二死一、二塁とするが後続が倒れ無得点に終わる。

 一方の川越東も4回表、一死から2番・種田太一(1年)が四球を選び出塁すると、宮城のモーションを完全に盗みすぐさま二盗を決める。二死後、4番・久永丈太(2年)がレフト前ヒットを放つが、二走・種田は本塁憤死し無得点に終わる。

 先制したのは浦和学院であった。

 5回裏この回先頭の高松陸(2年)がレフト前ヒットを放ち出塁すると、続く河原がきっちりと送り一死二塁とする。ここで、8番・松嶋が左中間へタイムリー二塁打を放ちまず1点、さらに続く宮城もセンター前へタイムリーを放ち浦和学院がこの回2点を奪う。

 対する川越東も7回表、この回先頭の種田がレフト前ヒットを放ち出塁すると、続く富田拓海(2年)がきっちりと送り一死二塁とする。さらに4番・久永の所で浦和学院・宮城がワイルドピッチを放り二走・種田は三進するが、後続が倒れまたしても得点を奪えない。

 だが、8回からゲームが目まぐるしく動く。

 まず、ゲームを動かしたのは浦和学院であった。

 おそらく球数制限や明日以降の試合の事も頭をよぎったのであろう。これまで2安打無失点と川越東打線を封じていた宮城を7回で一旦下げセンターへ、8回から吉田匠がマウンドに上がる。

 だが、2番手・吉田匠はこの回先頭の大平泰地(2年)に四球を与えると、続く神保直希(1年)の所でワイルドピッチを放り無死二塁とされ早くもマウンドを3番手・小田部夏行(1年)へ譲る。だが、小田部も結局神保を歩かせ無死一、二塁とされると8番・加藤大空(2年)に犠打を決められ一死二、三塁となった所で、先発・宮城が再度マウンドへ上がる。

 ここで川越東は宮城の代わり端を攻め、先発・伊藤への代打・内藤遼馬(2年)がセカンド強襲のタイムリーヒットを放ちまず1点、さらに一死一、三塁から白水大陸(1年)のセカンドゴロ併殺崩れの間に2対2のとする。

 だが、川越東も7回5安打2失点と好投した伊藤に代打を出していることもあり、8回裏からは2番手・右サイドの福田壮汰(2年)がマウンドに上がる。

 浦和学院はその裏、先頭の吉田匠がセカンド強襲ヒットを放ち出塁すると、一死後3番・尾崎亘(2年)が死球で出塁し一死一、二塁とする。ここで4番・吉田瑞樹(2年)がセンター前タイムリーを放ち浦和学院が再度1点を勝ち越し、福田をマウンドから引きずり降ろす。

 だが、その後の一死一、三塁のチャンスは川越東投手陣3番手左腕の杉都真(2年)、4番手右腕の新井大悟(2年)という小刻みな継投の前に凡退しこの回は1点で攻撃を終える。



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三塁打を放った矢矧慶多

 すると、最終回川越東は、この回先頭の富田がレフト前ヒットを放ち出塁すると、続く久永はきっちりと送り一死二塁とする。ここで5番・矢矧慶多(2年)が右中間へタイムリー三塁打を放ち3対3としさらに一死三塁と一気に逆転のチャンスを迎える。

 ここで大平は初球スクイズをするがファールになり、2ボール1ストライクから再度スクイズを狙うが、打球はキャッチャー前の打球になる。打球を見て戻る三走・矢矧。それを見てキャッチャーは三塁へ送球するが走路でサードとランナーが重なり送球は転々と転がる。川越東がラッキーな形で勝ち越し点を奪う。

 このままでは終われない浦和学院もその裏、一死から途中出場の三奈木亜星(2年)がセンター前ヒットを放ち出塁すると、二死後1番・吉田匠もピッチャ強襲ヒットを放ち二死一、二塁と同点機を迎えるが後続が倒れ万事休す。

 川越東浦和学院を4対3で下しベスト8へ駒を進めた。

 まず川越東だが、この日はとにかく今大会初先発の伊藤が良く投げた。強打の浦和学院打線に対しても臆することなく投げ込み、7回2失点に抑えたことがその後の逆転につながる一つの伏線になった。そして、打線では少ないチャンスを確実に物にし、特にこの日は中軸の2年生達が意地を見せる形となった。とにかく川越東は対浦和学院戦初勝利となる。この勝利でベスト8が決まり、来春のシードが決まった。

 野中監督は試合後、「1年生投手同士の素晴らしい投げ合いでした。新チームは全力の声と全力疾走そこから始めました。チームのテーマは監督からの自立。例えばサインの意味を考えること。このサインにはどういう意図があるのか。シフトを敷かれたらどうするのか。プラスαのことができないと大学野球では通用しない」と、選手の自立が終盤の結果を生んだと説いた。

 「埼玉県に新しい風を吹かせたい」

 これは、野中監督が就任時から常々口にする言葉だが、実際に旧チームでは東大に現役合格する選手などもおり、昨日の中止が決まるまでの雨天中断中選手達はそれぞれに単語帳などを開き勉強を始めるチームだ。新しい風を吹かせることができるかは今後の戦いにかかっている。

 まずは昌平戦に向けこの雰囲気を継続して臨めるかが鍵だ。この日やや湿りがちであった打線の爆発に期待したい。

 一方の浦和学院だが、旧チームからのレギュラーが多数おり、今大会はAシード。それだけにここでの敗退は痛恨であろう。8回の継投に関しては

 「私の判断ミス」

と森監督も潔く認めたが、吉田匠にも前もって伝えてあったようで、吉田匠も自分の実力不足だと悔いていた。今大会最激戦区にいただけに翌日やその後の大会の展開を考えると、1年生の宮城にあまり負担をかける訳にもいかない。

 難しい局面ではあった。むしろ、打線が中盤までに川越東・伊藤を捉え楽な展開に持ち込めなかったことが痛かった。今大会総じて犠打が決まらず走塁ミスも出た。自分達で苦しい状況を作ってしまったことは今後への課題か。

 敗れたとはいえ、各個人の能力は圧倒的であり、今大会登板のなかった三奈木なども来春以降は当然登板の機会もあるであろう。浦和学院が来春のいわゆる”ノーシード爆弾”になることは間違いない。

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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