高卒プロを掲げる大型左腕・下慎之介(健大高崎)は他の高校生左腕に負けないために何をアピールするのか?
今年の高校生左腕で注目度が高いのが高田琢登(静岡商)、松本隆之介(横浜)の2人だ。そしてその2人に続こうとしているのが健大高崎の下慎之介だ。恵まれた体格から投げ込む速球の最速は143キロ。最後の夏になると、145キロ前後の速球を投げ込む投手は多く出てくる。高卒プロ志望を掲げる下は同級生投手に勝つために何をアピールしようと考えているのか。
昨秋からの下の進化を分析
下慎之介(健大高崎)
下の強みというのはいわゆる競合相手と比較しながら、自分の強み、弱みを理解していることだ。社会人ならば必要不可欠なスキルだが、これは野球選手にとっても同じことだといえるだろう。
下の場合、高校生3年生の時点で備わっている。ただ憧れをもって高卒プロを志望しただけではないというのが理解できた。
そんな12日の作新学院戦のマウンドは本人にとっては満足いくものではなかった。いきなり1番は高校通算25本塁打の横山陽樹を歩かして、牽制で横山を刺したものの、2番・磯を歩かしてしまい、3番・鈴木蓮に二塁打を打たれてしまい、一死二、三塁のピンチを招いてしまう。しかしここから冷静だった。作新学院の4番・加藤を内角直球で詰まらせ、セカンドフライ。そして5番高工を三振に打ち取り、ピンチを切り抜けた。以降、下は最速140キロをマークした速球と、切れのあるスライダー、カット気味の直球をコンビネーションに5回2失点の力投を見せた。
だが、下は「内容は全くよくなかったです」と振り返り、特に連続四球を出したことを反省点に挙げた。
「普通ならば、あれほど四球を出してしまうと、点を取られてしまう流れになるので、そこは修正したいです」
制球が乱れた要因としてはワインドアップしたことも影響にある。フォームのバランスがしっくりいかず、4回以降はセットポジションで投げていた。
下の持ち味は実戦力の高さ、粘り強さだといえるだろう。
一つずつ球種を振り返っていくと、ストレートは6月に計測した最速143キロ、ただ見た目以上に勢いを感じるストレートで、正捕手・戸丸秦吾もこう評する。
「実際に受けていても、球速表示以上に勢いを感じる投手です。もともとスライダーの切れ味が凄い投手で、相手校からスライダーが注目されていたのですが、今ではストレートもだいぶ威力が出てきたと思います。またほかの球種の変化球の精度も高まってきたと思います」
高卒プロ入りを果たして両親を楽にさせてあげたい
下慎之介(健大高崎)
下は見た目以上に打ちにくい。打たれにくい実戦力を求めている。松本と高田を比較すれば、ストレートのスピードでは勝てないということは下自身、理解をしている。
「松本君、高田君と比べたらストレートの球速では間違いなく勝てないです。だから実戦での駆け引き、粘り強さで勝負できればと思いますし、ストレートは詰まらせるようなストレートを目指しています」
またこうした駆け引きの上手さは日々の投球練習から培われている。下について投球練習で意識していることについて以前伺った時、「今では投球数はあらかじめ決まっていて、3球1セット、5球1セット。そしてカウントを設定して投げます。このカウントから初球はカーブから入ろう。ストレートから入ろうとか、実戦で投げるイメージです」
初戦の相手は好投手・清水淳擁する安中総合に決まった。下の野球人生を占う上で大事な一戦が続く。高卒プロを志望した理由についてはこれまで支えてきた両親を楽にさせてあげたいという思いがあった。
「強豪大学でやりたい思いはあったのですが、自粛期間中に親と接するうちにプロに入って、野球を職業にして両親に恩返しをしたいと思っています」
自粛期間中も所属していた高崎ボーイズの仲間たちと一緒に練習を行い、キャッチボール、遠投を多めに行い、同じ高崎ボーイズ出身の戸丸相手に投げ込みを行うなど調整は順調だ。
果たして下は今年の高校生左腕でもトップレベルの投球を見せることができるのか、注目をしていきたい。
(記事=河嶋 宗一)
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