監督と一緒に歩んだ名捕手への道。昨夏岡山王者・岡山学芸館正捕手が語る、夏の甲子園が無くなって
話を聞かせてくれた溝上孟瑠選手 ※写真提供=岡山学芸館野球部
「見えない敵に負けて憎めないことですが、悔しい気持ちでいっぱいです」
20日に日本高野連から発表された夏の甲子園の中止。戦後初の非常事態から数日後、電話取材で話を聞かせてくれた岡山学芸館・溝上 孟瑠がハッキリとした確かな口調で素直な気持ちを語ってくれた。
昨夏、4年ぶり2回目の甲子園となった岡山学芸館で正捕手として初戦の広島商、3回戦の作新学院戦で出場。甲子園を経験し、新チームでは佐藤貴博監督から責任感の強さを評価されて副主将にもなった。その強さは電話取材中からも垣間見えた。
「去年岡山大会を優勝でき、甲子園を経験させていただきその時、スタンドで応援していた仲間たちのためにも自分たちの代も甲子園に出場するという気持ちを強くもってやってきたので、残念です」
しかし新チームの時は溝上も苦戦した。佐藤監督も溝上の武器と語っていた、インコースを果敢に使う強気なリードが、後輩たちと噛み合わないことが多かったのだ。
「これまで先輩投手2人と組んできて自分の中では、『リードができている。これで間違っていない』と思っていました。けれど後輩と組んでみると、自分のリードだと委縮すると言いますか、投手の投げたいボールと自分のリードが合わなくて。そこで先輩に助けられてきたことを再確認できましたし、相手の気持ちを考えることの大切さを学びました」
佐藤監督も溝上が投手陣と上手く連携が取れていないことには気がついていた。そこで取り組んだのが、野村克也氏の本を読むことだった。捕手と言うポジションは何なのか、担任と生徒という間柄も上手く使って、名捕手の考えからキャッチャーのイロハを伝えてきた。
「1年生の時は勉強、野球ともに意識が低くなっているところがあったのですが、佐藤監督が担任の先生になられてからは精神的にも強くなりました。沢山怒られましたが、そこには愛情があって。だからこそ、昨夏は先輩と先生のためにも戦えました」
冬場は4番として打力強化に努めてきたが、投内連携では必ず投手陣とのコミュニケーションを取って意志疎通を深めてきた。溝上のなかでも確かな手ごたえを持っていたが、それを試す舞台はなくなった。
「最後まで副主将らしく全員を前向きにさせることを忘れずに、『次のステージに向かって頑張っていこう』と声をかけていきたいと思います」
1つ1つ丁寧に答えていく溝上の強さが電話取材中は非常に印象的だった。改めて球児の凄さを感じた。岡山県では県独自の代替大会開催に向けて検討が進んでいる。次のステージに向かう前に、独自の代替大会が開催されれば納得した形で高校野球を終えて欲しいと強く願う。
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