高校野球のスカウトが中学球児を見る視点 強豪校を破るためのリクーティングと育成方法とは?
U-15日本代表の選手たち
現在、日本の高校野球は一部で、「リクルート勝負」と囁かれることがある。特に強豪校の関係者が狙うのは、中学生ながら、140キロ台の速球を投げる、スタンドの中段へ飛ばすスラッガーなど中学生離れしたパフォーマンスを見せる「スーパー中学生」、または各連盟の代表選手や侍ジャパンU-15代表などだ。
しかしそのような選手はほんの一握りだ。
「スーパー中学生」と呼ばれる選手のほとんどは、毎年甲子園を狙えるような強豪校に進学するため、その強豪校を倒しての甲子園出場を目論む高校は、選手の「将来性」に目を光らせてリクルート活動を行っている。
では一体、その「将来性」とはどこから判断しているのだろうか。複数の高校野球の指導者と取材を進める中で、ある共通点が見えてきたので紹介していきたい。
「完成形」のパフォーマンスが高い選手を見極めるポイントは「センスの良さ」
多くの指導者が口にするのが、例え体は大きくなくても身のこなしがよく、器用で「センスのあるタイプ」の選手を育てがいがあるということだ。つまり現在のパフォーマンスではなく、完成形を予想しながら、高校野球以上のステージで大成する可能性を持った選手を見極める。
中学硬式、中学軟式でも、体が出来ていないがためにパワー不足でレギュラーを掴むことが出来ていない選手は多い。しかし、そんなレギュラーでない選手でもよく見ていけば、「出足の良さ」や「スローイングの正確さ」、投手でも「指先の器用さ」、「手足の長さ」、「肩、肘の柔軟性の高さ」などセンスの良さが垣間見える瞬間が随所にある。
そういった選手に声を掛け、入学後はトレーニングや栄養管理を行って体を大きくしていくことで選手のスケールを伸ばしていき、パワーとセンスを兼ね備えた選手に仕上げていくのだ。「体が大きい選手」よりも「体が出来たときに大成するであろう選手」をスカウトしていくということである。
近年、こうした育成方針を持つ指導者が増えてきたのは、トレーニング理論の普及が大きく関係している。正しいトレーニング方法が一般化してきただけでなく、練習中に補食を摂る光景も最近では珍しく無くなってきた。トレーニング、栄養、休息、すべての面で指導者の知識レベルが向上してきたことで、選手の育成方法もより明確になってきているのだ。
強豪校を破って波乱を起こす「新興勢力」は、毎年全国各地で台頭しており、中学時代は無名だった選手が化けて、ドラフト候補となり、指名されているケースも多い。
そうしたチームの練習方法や選手の中学時代に着目すると面白い事実が見えてくるかもしれない。
つまり取り組み方次第で、逆転は可能なのだ。
(記事=栗崎 祐太朗)
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