試合のパフォーマンスを支える補食
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
平成最後となるセンバツ高校野球大会は東邦高校の優勝で幕を下ろし、いよいよ夏の大会に向けての新たな戦いが始まったところも多いと思います。また連休などを控えて練習試合や遠征など、より多く実践練習を行うチームもあるでしょう。さて今回は試合のパフォーマンスを支える補食について、その役割や効果的な取り方などについてお話をしたいと思います。
なぜ補食をとるのか
試合中にエネルギー源が不足しないよう、補食を活用しよう
●補食をとる目的とは
まずは補食をとる目的についておさらいをしておきましょう。野球選手に限らず、スポーツ選手にとって補食をとる目的は大きく3つ挙げられます。
1)運動中に消費されるエネルギー源を補給する
スポーツやトレーニングなどで体を動かすと、体の中に蓄えてあるエネルギーを消費します。運動前にしっかりと蓄えた状態であっても、時間の経過とともに体を動かすエネルギーが不足するようになります。エネルギー不足の状態でプレーすることを避けるために、適度に補食をとり、エネルギー源を補給する目的があります。
2)運動時に失われる水分やミネラル分を補給する
運動をしていると体温が上昇するため、その体温を下げようと汗をかくようになります。汗には水分だけではなく、カリウムやマグネシウム、鉄分と行ったミネラル分も一緒に排出されてしまいます。こうしたミネラル分が不足してしまうと血液中の電解質バランスが崩れ、足のけいれんなどを引き起こす要因ともなります。脱水・熱中症予防、足のけいれん予防のためにもこまめな水分・ミネラル分補給が必要になります。
3)運動で傷ついた筋線維を修復する
3つめは体づくりに欠かせない筋線維を修復するために必要な栄養素の補給です。主に練習や試合後にタンパク質を含む食材をとるようにします。通学時間が長く、夕食までの時間が1時間以上空いている場合は、夕食までの「つなぎ」として軽く補食をとるようにするとと、小腹も満たされ、夕食にも大きく影響しないのでオススメです。
試合でのパフォーマンスを支えるものとしては主にエネルギー源、水分、ミネラル分の補給が重要になってきます。これからを効果的にとるためにはどのようにすれば良いでしょうか。
パフォーマンスを支えるものを効果的にとるために
汗をかくと水分だけではなくミネラル分も不足する。運動中はこまめな水分補給を心がけよう
●試合時間から逆算して考える
試合中のエネルギー源を補給するためには主に炭水化物を含むものをとるようにします。炭水化物を含む代表的な食べものはご飯やパン、麺類などが挙げられますが、基本的には固形物の方が消化・吸収に時間がかかり、柔らかいものほどすみやかにエネルギー源として利用されることを覚えておきましょう。一口サイズのおにぎりやパンなどであればエネルギー源として利用するまでに1〜2時間ほどかかることを想定しておきます。逆にゼリータイプの栄養補助食品やバナナなどは、比較的すみやかに吸収されやすい(〜30分程度)と言えるでしょう。またよく噛んで食べる方が消化・吸収しやすくなるため、あわてて食べるのではなくよく噛んで食べることも大切なことです。
《エネルギー補給に適した補食の例》
・小分けにした一口大のおにぎり(ラップで巻いておくと手が汚れていても食べやすい)
・菓子パン(好きなものを事前に準備しておいてもよい)
・バナナ(消化吸収が比較的早い王道の補食。カリウムを含み筋けいれん予防にも)
・ゼリータイプの栄養補助食品
・クラッカー(塩味がついていると塩分も一緒にとれる)
・ハチミツ漬けレモン(糖質+クエン酸補給) など
●水分・ミネラル分補給のタイミング
「喉が渇いた」と感じるときにはすでに軽度の脱水状態となっていることが多いといわれています。水分・ミネラル分補給は一口〜コップ1杯程度の水分をこまめにとるように心がけましょう。特にランナーで出塁した後にそのまま守備につく場合や、運動量の多いピッチャー、そしてプロテクターをつけて熱さが体にこもりやすいキャッチャーは、攻守交代のタイミングで補給することを心がけましょう。
試合中にはスポーツドリンクやお茶、水などを準備するところが多いと思いますが、スポーツドリンクとお茶や水などを交互に飲むようにすると、スポーツドリンクによる糖分の摂り過ぎを抑えることができます。お茶は利尿作用のあるカフェインを含まないものが望ましく、ミネラル分を多く含む麦茶などが適しています。主に水を摂取する場合は塩分を含む補食もあわせてとるようにし、ミネラル分の補給も忘れないようにしましょう。
《水分・ミネラル分補給》
・ウォータージャグ(中身はスポーツドリンク、麦茶など)
・オレンジジュース(糖分補給にもつながる。飲みすぎには注意)
・梅干し(塩分補給+クエン酸補給)
・塩昆布(梅干しが苦手な選手に)
・アーモンドチョコ(糖質+マグネシウム補給。筋けいれん予防として)
こうしたものを参考に、食べやすいものをあらかじめ準備しておくと、試合中のエネルギー補給、水分・ミネラル分補給に役立ちます。ぜひ参考にしてみてくださいね。
(文=西村 典子)
次回コラム公開は4月30日を予定しております。