目指すは強豪校を封じる好投手!今年の千葉の注目株・由良一翔(小金)!
2015年から4年連続で高卒プロ入り投手を輩出している好投手王国・千葉。強豪校だけではなく、県立高にも140キロ越え、将来、次のステージで大化けしそうな投手がいるのがこの県の魅力だ。
2019年度の掘り出し物として期待がかかるのが小金・由良一翔(ゆら・かずと)だ。最速139キロのストレート、縦横のスライダーで勝負する右の本格派だ。このままいけば、夏には大きく注目を浴びる可能性を持った逸材に迫っていきたい。
中学時代は2,3番手 坊主にしなくていい方針に惹かれ、小金に進学
由良 一翔投手
178センチ74キロ、さらに投手らしいなで肩。軽いキャッチボールからでも他の選手と比べて、明らかにストレートの勢いが違う。何より左足を挙げたときのバランスの良さ、体重移動の滑らかさ、しなやかな腕の振りを見れば、一目で逸材ということが分かる。船木友晴監督、主将・中島啓太もチームの柱として期待する。
そんな由良の歩みを振り返ると、千葉県野田市出身で父親の転勤に伴い、奈良県に引っ越し。小学校3年から野球を始めたとき、奈良県の少年野球チーム(青和ブルースターズ)に所属していた。小学校5年に野田市に戻り、野田南部中に進む。野田南部中は野田市でも非常に生徒が多い中学校で野球部に入部すると、同級生には由良を合わせて25人もいた。
選手層が厚く、なかなかベンチ入りできず、試合に出場できるようになったのは2年秋から。新人戦は県ベスト8、最後の夏でも県ベスト16と強いチームだったが、最後までエースをとることはなかった。エースは市立柏の倉島京佑、さらに千葉商科大付・松本佳将がいた。それでも由良は同級生に負けないよう取り組んでいたことがあった。それが決め球の習得だ。
「自分のピッチングスタイルは速球ばかりだったので、どうすれば抑えられるかと考えたとき、縦のスライダーが必要だと感じました。自分が投げやすい握りを研究して、指で切るイメージで投げたところ習得できました」
由良が小金に進むきっかけは3つあった。
「あまり遠くない東葛地域を考えていて、大学進学のため進学校に絞っていました。ただ偏差値が高すぎると、なかなか野球に集中できないので、自分の学力でも野球に専念にできるのが小金でした。小金は駅から歩いていける距離にありますし、何より小金は坊主にしなくていいところに惹かれました(笑)」
由良の説明にもあったように小金は特に坊主にする必要はなく、高校生らしい髪型であれば、OKなのだ。
思春期の中学生らしい理由だが、この選択が由良の能力を大きく伸ばすことになる。
専大松戸と対戦して見えてきた自分の課題
インタビューに答える由良 一翔投手
1年生の時から練習試合・公式戦の経験を積んでいく由良。入学当初の最速は120キロ台だったが、1年秋の佐倉との練習試合で最速131キロをマーク。その後も順調にスピードアップした。その一因として指力を鍛えるトレーニングを挙げた。
「菅野智之投手が実践しているトレーニングなのですが、5キロのボールを掴んで話すトレーニングを中学の時から継続していました。それが高校生になって体が大きくなるとともに速くなっていきました」
小金は体づくりの一環として身長マイナス体重が100になることを推奨している。体づくりを進めていき、2年夏には最速139キロをマークする。由良自身、驚きの球速だったが、「139キロ出ていても、それでも打たれていました。2年夏が終わって勝たせるピッチングをしないといけないと思いました」とエースとしての自覚を見せる。
秋の大会では松戸馬橋戦で1失点完投勝利を挙げ、上々の滑り出しを見せたが、松戸国際戦、県大会出場をかけた我孫子戦に敗れ、県大会出場を逃す。
「まず松戸国際戦では自分のエラーから決勝点につながり、守備が課題となりました。そして我孫子戦では相手が直球を狙っているのを分かっていて縦スライダーを投げたのですが、縦スライダー一辺倒となってしまい、ピッチングの幅の狭さが課題となりました」
この大会の反省を踏まえ、大会後はフィールディング練習に力を入れ、投球練習でもスプリット、カーブ、ワンシームなどの変化球を磨く練習に取り組み、狙い球を絞らせない投球ができるよう努めた。
また由良にとって自分の力不足を実感したのが、昨年11月に行われた松戸市内大会で専大松戸との試合だった。なんと1イニング15失点を喫し、4対22で敗れた。ここで感じた課題について聞くと、「甘いところはしっかりと打たれていたこと。さらに打たれた時にテンポが一定となって修正ができていませんでした。あとはいろいろな方に指摘されていたのはストレートなのですが、初速は速くてもベース上での強さがないので当てられることを指摘されました」
投球術で強豪と勝負する!
ピッチングでは全体的なレベルアップに努めるため、プロ野球投手の動画などを見て、日々のピッチング練習に取り組んできた。さらにトレーニングでは学校近くの整骨院でTRXトレーニングに取り組んで、上半身強化を行った。
またミズノ社の計測アプリ「MA-Q」で投球練習の球速を測ると、常時133キロ~137キロで推移し、最高球速137.7キロ、回転数2492を叩き出した。(計測結果はこちら)由良は「力んだときは回転数が悪かったので、力まずしっかりと外角へコマンドできれば、それなりの球速、コントロールが出たので、それを意識していきたい。気温が低い中での投球だったので、3月、4月になっていけば、もっと良くなる可能性はあると思います」と手応えを感じていた。
勝ち上がれば専大松戸と対戦する可能性がある。
「もし専大松戸と対戦となれば、明らかに格上で、普通にはかなわない相手。できる限り、スピードというより厳しいところをついて、少ない失点で抑えていきたいと思います」
今年1年の意気込みとして「エースとしてなかなか勝てていないので、小金の最高戦績を残していきたいです。今年の千葉は木更津総合の根本太一君が注目されていますが、速球ではかなわないので制球力、変化球の切れ、投球術で勝負できればと思います」
あくまで自分のスタイルで勝負することを誓った由良。常にピッチングを深く追求した成果をこの夏、最大限に発揮していきたい。
文=河嶋 宗一