習志野の元気印・根本翔吾!全力プレーで勝利と幸運を呼び込む!
生まれながら人々に愛される選手というのがいる。10年ぶりに選抜出場の可能性が高い習志野の根本翔吾だ。168センチ65キロと小柄ながら走攻守三拍子揃った外野手としてチームをけん引した根本。笑顔の時と真剣な表情のギャップの激しさに惹かれる高校野球ファンが非常に多い。取材を進めると、愛される選手というのがよく理解できた。
高校レベルに対応するためにまずは打撃強化

桐生第一戦、キャッチャー・兼子将太朗と喜びを分かち合う根本翔吾(習志野)
根本の活躍でまずクローズアップされるのが、昨秋の関東大会1回戦の桐生第一戦だ。延長13回裏、一死満塁の場面でセンターの根本のもとへ打球が飛んだ。三塁走者が還ってしまえばサヨナラという場面で、根本は大遠投。キャッチャーのミットにダイレクトで収まりタッチアウト。球場が一気に沸き、ナインとグラブタッチしながら満面の笑顔でベンチに戻る根本。あのプレーで根本のことを覚えた方も多いはずだ。
習志野の小林徹監督は「あの子は普段から明るい子ですし、純粋なので、周りから応援してもらえる人間性を持った子だと思います。たまたまといっても、ああいうプレーができる準備は普段の練習からきちんとしています。だから運を呼び込みますし、彼はなんといっても人からパワーをもらえる人柄。そういう選手だと思います」と、根本の勝負強さは人柄から来るものだと称する。
実際に見てもプレーするときは全力疾走。ベンチにいるときは大きな声を出してチームメイトを鼓舞して、喜ぶときは大きく喜ぶ。取材となれば、礼儀正しくて爽やかで、童顔と。愛される要素しかない。
その根本のこれまでの歩みを知ると、努力を重ねながらここまで昇りつめたことがわかる。小学校1年生から野球を始めた根本は豊住ヤンガーズに所属。左投げながら人数も少ないこともあり、投手と捕手を兼ねていたという。卒業後は名門・佐倉シニアに入部。ハイレベルな先輩、同期に揉まれながら、自分は足が武器だと印象付け、2年生で外野手のレギュラーを獲得し、3年生ではセンターとなった。習志野に進むきっかけはシニア・高校の先輩・加藤駿(東京情報大)の存在があった。
「佐倉シニアから数々の先輩が習志野高校に入っていて活躍されている選手がいて、自分の憧れていた加藤選手が習志野高校に行って活躍をしていたので、同じ道に進みたいと思いました」
こうして習志野の門をたたいた根本。中学で全国大会を経験した根本でも最初はレベルの高さを感じていたが、1年秋にレギュラーを獲得。しかし準決勝で中央学院に敗退。エース・大谷拓海を打ち崩せなかった。
「今まで簡単に打てていたのですが、高校生のボールは本当に球威があってなかなか打てませんでした。冬の間は打撃が当面の課題となりました」
冬場はウエイトトレーニングで体を鍛えたが、「振っていかないと振る力は身に付きません」と数を重ねて振り込んだ。そして春は関東大会ベスト8まで勝ち進み、根本自身、「打球は飛距離も出るようになって少し成長は感じました」と手ごたえを感じていた。
桐生第一戦のバックホームはただがむしゃらに投げたい気持ちだけだった

根本 翔吾(習志野)
夏へ向けて「千葉県は好投手が多いので、どう打つのか、練習試合でもそれを想定して練習していきました」と準備した根本。夏は2回戦から準々決勝までの4試合で15打数4安打と1番打者としてチームを牽引し、ついに準決勝で中央学院と対戦した。根本は打倒・中央学院に燃えていた。
「1年秋では中央学院に負けて冬の練習が始まりました。そこから中央学院に勝つために目標にして頑張ってきたので、絶対に勝たないといけないという思いが強かったです」
根本はこの試合で適時打を打つなど3打点の活躍を見せたものの、最後はサヨナラ負け。悔しい敗退となった。新チームになると、根本は主将に就任。夏ただ1人のレギュラーとして、1年生レギュラーが多い新チームを引っ張ってきた。県大会1回戦では拓大紅陵と対戦。2回戦では市立柏に9回までリードされているという状況から逆転勝ちと、苦しい試合が多かった。
「苦しかったのですが、最後まで諦めないで出来たことが勝ちに繋がったと思います」と振り返る。
そして関東大会初戦・桐生第一戦の13回裏。一死満塁の場面で根本のもとへ打球が飛んだ。
「打球が飛んできた時には取って投げるまで何も考えず、がむしゃらに投げたらたまたまジャストでいってくれたので良かったです」
根本は肩が弱いと思っているようだが、エースの飯塚脩人は「ほぼ定位置だったので、根本なら刺せると信頼してました」と根本のスローイングに期待していた。主将として甲子園に行くために全力でチームを引っ張っていた根本。その頑張る姿に土壇場で野球の女神がほほ笑んだ。
その後、根本は東海大甲府戦、桐蔭学園戦でマルチヒット。計12打数4安打の活躍で成長した姿を見せた。
この冬は打撃強化に取り組む。根本はタイミングの取り方を苦手にしており、打撃練習中、小林監督からタイミングの取り方を指導されている姿があった。
「タイミングの取り方を克服して好投手から打てるようになりたい」と意気込む。
来る選抜へ向けて「一つでも勝てるようにチームに貢献したいです」とあくまでチームのために尽くすと話した根本。
目指せ甲子園1勝へ。
甲子園の舞台でも人々を惹きつける全力プレーを見せつける。
文=河嶋宗一