広陵vs創志学園
珠玉の投手戦!河野が制し、広陵がコールド勝ち!
好投を見せる河野 佳(広陵)
この夏の甲子園出場経験があり、そして来年のドラフト候補として期待される西純矢(創志学園)、河野 佳(広島広陵)の投げ合いは珠玉の投手戦といっていいものだった。
広島広陵の河野は甲子園の時から140キロ中盤の速球を投げ込んでいたが、甲子園に比べて、より骨太になった印象がある。174センチ76キロとがっしり体型から投げ込むストレートは、常時140キロから144キロのストレートを計測。回転数が高く、低めにぐっと伸びていく。
さらに変化球は125キロ前後の横に曲がるスライダー、130キロ前後の縦スライダー、115キロ前後のカーブと、いずれもストライクが取れて、空振りが奪えて、ゴロを打たせたり、フライに打ち取ることができる。とても精度の高さを感じる。高校生としてはかなり完成されているが、それはフォームの土台の良さがもたらしている。彼がいいところは上半身と下半身の連動が取れた投球フォーム ワインドアップから指導しゆったりと左足を上げてから前足に踏み込んで内回りのテイクバックから打者寄りのリリースができる完成度の高い投球フォームだ。
だが前回の関西戦では6.1回を投げて、8失点と大荒れなピッチング。何を変えたのかというと、脱力を意識したという。
「前は力みすぎたところがありました。でも、今日の試合前に中井監督からお前は西投手より低めを制球できるといわれ、もう一度、低めをしっかりと意識しようと投げました」
その証拠として、今日は低めのストレートで三振を奪うなど持ち味が出た。
「とにかく低め、低めと意識したことが結果的にフォームが良くなり、ストレートの球筋が良かったと思います」
と振り返るように、ピッチングに全く隙がなく、創志学園の打者は「完全に打てない投手ではなかったのですが、とにかく打たされました」と口をそろえる。河野の持ち味が存分に出た試合だったといえるだろう。
西純矢(創志学園)
一方で西。ワインドアップから 体を大きく体を旋回させて、真上から振り下ろす投球フォームは健在。常時140キロ~148キロのストレートは高校2年生投手では、トップクラス。しかし西は「良いときはストレートは空振りが奪えるんです。」とストレートは本来の勢いではないようだ。確かに良いときの西はもっとミットに突き刺すような勢いから空振りを奪うストレートだった。ストレートが走らない代わりに、130キロの横スライダー、120キロ後半の縦スライダーの割合を多くする。西は不調な時でも、どうすればゲームメイクができるのか、それをテーマにしてきた。2回裏に河野に先制適時打を浴びたものの、以降は無失点。
「課題にしていた粘りのある投球は途中までできていたと思います」というように
7回まで1失点のピッチング。5回裏には150キロを2球計測した。不調でも大崩れしないピッチング。たとえ惜敗したとしても十分に評価できるものだと思っていたが、8回裏に崩れる。いや創志学園が崩れたといっていい。6番宗山 塁(2年)の中前安打から始まり、その後、西もバント処理ミス、その後ミスが続き、8番藤井 孝太(2年)が詰まりながらも左前安打から2点を追加。その後もスクイズや敵失で5点目をとられ、最後は4番中村颯大(2年)がストレートをとらえてライトの頭を超える三塁打となり、二者生還。広島広陵が8回コールド勝ちで決勝進出を決めた。
広島広陵はミート力が高く、ファールで粘れて、さらに小技で畳みかけられ西も「レベルが高い打線でした」と評するように、西をじわじわと追い詰めて攻略したように、手強いチームである。エース・河野以外にも夏を経験している控え投手がいる。もし神宮大会進出が決まれば、優勝候補に挙がるチームになるかもしれない。
ただそれ以上に創志学園が自滅した印象が強い。これは全体に責任がある。西は「こんな試合にしてしまって本当に申し訳ない。もう一度鍛えなおします」と反省の様子。また捕手・横関も「8回裏の場面、僕が西を落ち着かせることができれば」と悔やめば、また主将の川畑透人は「まだ西に頼りすぎてしまっている。僕らがしっかりとカバーしなければ」と西頼みのチームをどう脱却するのか、これは夏までの最重要課題となるだろう。
選手たちは「夏へ向けて切り替えてやっていきます」と、すでに夏を見据えている様子だった。いずれにしても、ぜひ来季はどんなゲーム展開になっても勝ち抜ける強い創志学園になることを期待したい。
(文・写真=河嶋 宗一)