試合レポート

城東vs新野

2018.07.23

緊迫の投手戦に敗れた新野、栄光の歴史に幕

 

 1950年に創部された徳島県立新野高等学校野球部。特に平成の世に入り、中山 寿人監督が1988年に就任してからは徳島県内・四国のみならず全国に縦じまの「ARATANO」を轟かす実績を残してきた。

 

 1991年秋は県大会初優勝。続く四国大会でも初出場で岡豊(高知)・西条(愛媛)を撃破し準優勝。翌年センバツに初出場を果たすと、初戦で日本高校野球界の盟主・横浜(神奈川)に0対3の状況から7回裏1点・8回裏6点の大逆転勝ち。「タケノコ打線」「ミラクル新野」の愛称と共に聖地へ驚きを与えた。

 

 1996年夏は同年3月をもって徳島商へと去った中山監督から指導を受けた選手たちが躍動。同年ドラフト4位で広島東洋カープに入団した福良 徹を主将に徳島大会を初制覇すると、甲子園でも2勝。特に馬淵 史郎監督率いる明徳義塾(高知)にこれも0対3から7回表に3点・9回表に1点を奪い4対3で逆転勝ちした2回戦は、3回戦で新野を破り「奇跡のバックホーム」で全国制覇を成し遂げた松山商(愛媛)と共に、大会に残る名シーンとなった。

 

 さらに2015年4月からは中山監督が20年ぶりに同校監督に復帰すると昨年は同年代四国NO1の高校通算35本塁打を放った折下 光輝が読売ジャイアンツ育成7位指名を受け、同校2人目のプロ野球選手を輩出。地区の人口は減少傾向歯止めがかからない状況だが、今も新野高等学校野球部は阿南市新野地区の誇りである。

 

 しかし、そんな新野は今年4月・阿南工との統合校「阿南光」が誕生したことに伴い、学校自体が2020年3月で1943年開校以来の幕を閉じることに。野球部はそれに先立ち、新チームから3校野球部が統合し「阿南光」として新スタートを切ることになったからだ。

 

 よってこの徳島大会は新野のユニフォームで戦える最後の大会。あのセンバツと同じタッグを組んだ土肥 健一部長・中山 寿人監督と2年生9名・3年生9名の選手、3年生男子マネジャー1名・2年生女子マネージャー1名は初戦で名西を4対0で下すと、この第4シード・城東戦も必死になって戦った。

 

 が、県内屈指の右腕と評判の高い城東武口 哲也(3年・177センチ80キロ・右投左打・徳島市加茂名中出身)の卓越した投球術は彼らの闘志をもってしても及ばなかった。この日は最速139キロのストレートを130キロ前半に留めながら120キロ台でツーシーム・カットボール・スライダー、110キロ台でチェンジアップ・カーブをコーナー集める配球で3回表に失策で1点を返されても全く動ぜず128球散発5安打3四球10奪三振完投。そして武口は6番に入った打撃でも8回裏二死三塁からこの試合3安打目となる右越適時二塁打。一死満塁からの併殺崩れ・失策で奪った初回から動かなったスコアを、自らのバットで動かした。

 

 

 一方の新野も持ち味は出し切った。5月から投手に転向した多田 京司(3年・175センチ71キロ・右投右打・阿南市立那賀川中出身)が135球を投げ10安打を浴びながら粘投。年齢制限規定によりこれが最後の公式戦大会参加となる湯浅 龍星(2年・174センチ81キロ・右投左打・ヤング阿南シティーホープ出身)も、二塁送球1.8秒台の素晴らしい右肩で走力の高い選手そろう城東の2度二盗を阻止した。

 
 

 最後の試合は1対3。これで新野高等学校野球部は68年あまりに及んだ歴史を閉じることになった。ただ、たとえユニフォームが変わっても、時代が変わっても記録と記憶は残るもの。新野の魂を継ぐ2年生10人は縦じま採用が予定されている阿南光のユニフォームを身にまとい、阿南工2年生17人・阿南光1年生10人と手を取り合って阿南の地に新たなる栄光を築いていく。

 

(レポート=寺下 友徳

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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