日本航空石川・継投の裏にある事情
第90回記念選抜高等学校野球大会8日目は3試合が行われました。その中から第1試合の日本航空石川の継投の場面を取り上げます。
先発の左腕・杉本壮志投手が素晴らしいピッチングを見せ、明徳義塾打線を無失点に抑えていました。
局面は8回表の守り。先頭打者に四球を与え、次の打者が送りバントを決めた時点で、中村隆監督はエースナンバーを背負う大橋修人投手への継投を決断しました。
この時まだ無失点。継投によって、明徳義塾打線の流れが変わるのではないかと見ていて感じました。実際、次の打者にヒットを浴びて1アウト一、三塁になった後、ワイルドピッチで明徳義塾に先取点を与えてしまいます。継投が成功なのか失敗なのか。微妙な展開になっていきました。
しかし、日本航空石川には継投せざる得ない理由がありました。中村監督はこう話します。「杉本は手と足が攣っていた。先頭打者に四球を与えた後、主将の小坂伝令に出し確認させました。その次の打者がバントをしてくれたので、ここが限界かなと思って代えました」。
伝令で走った小坂敏輝主将も、「監督の指示とともに、杉本の状態を確認しました。他の選手が杉本の手を伸ばしたりした。ベンチに戻って監督に報告し、大橋にもいつでもいけるよう準備するように言いました」。
ワイルドピッチで1点を失った日本航空石川。しかしこの1点だけで踏みとどまったことを、小坂主将はバッテリーに対して讃えたそうです。
9回は三番手の重吉翼投手が満塁のピンチを併殺で凌ぎ、9回裏の原田竜聖選手の逆転サヨナラ3ランへと繋げました。
ちなみに明徳義塾の馬淵史郎監督も杉本投手の異変を見抜いていたことを話しました。
「(杉本投手は)終盤はスタミナ切れする投手だというのが秋を見た時の情報だった。(8回は)水を飲んでからマウンドに向かったので何かあるなとは思っていたんです」。
継投は難しい。でも奥が深い。両チームの様々な思惑も混じり合う。あらためて野球は魅力のあるスポーツですね。
大会第8日の結果です。今大会では主演である選手と同じく、グラウンドで試合を作る共演者と言うべきジャッジをする審判の方と一緒に紹介しています。
今日は大会第9日。3回戦残り4試合です。
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(文:松倉雄太)