貧血を改善するためには
貧血にはさまざまな原因が隠れている。鉄分不足と決めつけず、まずは医療機関で血液検査を受けよう。
■冬のトレーニングを評価する
スポーツ選手にみられる貧血として代表的なものに鉄欠乏性貧血があげられます。文字通り血液中の鉄分が不足して起こる貧血のことで、貧血全体の約7割がこの鉄欠乏性貧血だと言われています。貧血はどちらかといえば女性に多く見られる内科的疾患ですが、スポーツ選手に限っていえば男性にもよく見られます。日頃から激しく体を動かすスポーツ選手は、大量の汗をかくことによって汗の中に含まれるミネラル分が失われ、鉄分も汗とともに体外へ排出されてしまうことが知られています。一般の人よりもたくさん汗をかくスポーツ選手は、より多くの鉄分が汗とともに失われますので、鉄欠乏性貧血を起こしやすいと考えられています。
貧血の症状としてわかりやすいのは、顔色が悪い、疲れやすい、安静にしていても脈が早いといったオーバートレーニングに付随するものです。ただしすべてが貧血によるものではないことも多いため、このような状態が続くようであればまず医療機関で検査を受けるようにしましょう。血液検査を行うと貧血だと思っていたが違う原因だったということもあり得るからです。「サプリメントなどで鉄分を補給しているがあまり変化がない」といった場合は鉄分不足ではない可能性があります。身体が大きい選手の場合は消費カロリーに対する摂取カロリーが不足し、そもそもエネルギーが足りなかったというケースもあります。
また自己判断で鉄をとり、体内の鉄分がそれほど不足していない状態で激しい運動を続けていると「溶血性貧血」という貧血を起こすリスクが高くなります。これは激しい運動などによって赤血球の細胞膜が壊れてしまい、それが原因となって起こる貧血のことです。陸上の長距離選手などにより多くみられるものですが、体内の鉄分が過剰になってしまうと細胞膜が壊れやすくなるといわれています。市販されている医薬品の鉄剤を購入するときは必ず医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
さらに失血性貧血という症状もあります。これは潰瘍性大腸炎やクローン病などの腸の病気によって腸壁から出血し、それによって貧血を起こすことがあります。自覚症状がなくてもこうした病気を抱えているケースもあり、こうした貧血も医療機関で尿検査、便検査などを行うと血液が混じっているといったことでわかる場合があります。食事量や食事内容に問題がない選手でもこうした失血性貧血を起こしていることがあります。
貧血にはさまざまな原因が考えられるので、こうした症状でパフォーマンスに影響が出る、どうしても調子が上がらないといったときはまず医療機関を受診して原因を調べてもらうようにしましょう。赤血球はおよそ120日で半減し、新しい細胞と入れ替わるので、4ヶ月程度を目安にコンディションを把握するようにしましょう。
文:西村 典子
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