試合レポート

拓大紅陵vs東京学館船橋

2017.09.20

拓大紅陵、8点差を逆転されるも、9回裏に逆転サヨナラ!

拓大紅陵vs東京学館船橋 | 高校野球ドットコム
壮絶な試合を物語るスコア

 野球は何が起こるかわからない。そう実感するゲームだった。1回表、東京学館船橋は二死二塁から4番川田亮之介(2年)が詰まりながらも中前適時打で1点先制。何気ない1点に見えるが、今、試合を振り返れば、川田の打撃の調子を急上昇させるきっかけとなる一打となった。

 1回裏、拓大紅陵は一死満塁から5番三谷太陽(2年)の適時打で逆転に成功。その後、8番北野将也(2年)の適時打で、さらに押し出しで5対1と点差を広げる。2回裏、東京学館船橋は2番手に背番号1の貫井瑠力(2年)がマウンドに登る。その立ち上がり、3番水島滉陽(2年)が内角低めをとらえ、ライトスタンドへ。まるで宇佐見真吾(巨人)のゴルフ打ちホームランを見ているようなホームランだった。

 拓大紅陵は6番小俣剛志(1年)の適時打、9番廣岡が甘く入った直球を見逃さず、左中間へ痛烈な二塁打で9対1。完全に試合の主導権を握ったかにように見えた。しかし、3回表、二死二、三塁の場面で、4番川田がストレートをとらえて右中間を破る適時二塁打で、2点を返し、9対3。まだまだあきらめないと意思表示するような二塁打だった。ここで拓大紅陵は先発の鈴木貫太(2年)がレフトへ。背番号1の右サイド・安藤太雅(2年)がマウンドに登った。

 3回裏、東京学館船橋は3番手としてマウンドに登った1年生右腕・松永幸誠が好投。テークバック大きめにとって、振り下ろす右の本格派。ストレートは常時125キロ~132キロと、先に登板した2投手と球速的に変わりないのだが、ボールの角度が良く、また不規則に動く球質なので、ネット裏から見ると打ちにくい球筋。スライダーも手元で変化しており、精度も高く、三者凡退に抑える松永。上背もあり、さらに球速が速くなる見込みがある。昨夏のエース・日暮寛太(現・国学院大)のような速球派右腕に成長していてもおかしくない。それだけ見込みがあった。

 1年生の好投で流れをつかんだ東京学館船橋は一死満塁で再び4番川田。川田は128キロの甘く入ったストレートを見逃さず、レフトスタンドへ飛び込む満塁ホームラン。川田は3打数3安打7打点の大活躍で、1人で2点差に迫った。川田は実にパワフルな打撃ができる右のスラッガーで、ポジションは一塁手。しかし大学以上のステージでも続けることができる技量、パワーを持ったスラッガーであった。

 主砲の一打で東京学館船橋は二死満塁から9番村上大志(2年)の押し出し四球、1番本間大の左前適時打で同点に追いつく。そして2番八木の押し出し四球でついに勝ち越しに成功する。

 流れは一気に東京学館船橋に。松永は4回裏に三者連続三振を奪う快投を見せると、5回裏には一死満塁からライナーゲッツーで打ち取るなど、ついている流れとなった。


 そして6回表、先頭打者が四球で出塁。この走者をバント2つで大事に送って二死三塁。拓大紅陵はレフトに入った鈴木を投手に戻したが、1番本間大祐(1年)がストレートをたたいてライトスタンドへ飛び込む2ランで、12対9の3点差で点差を広げた。

 これで試合が決まったかように思えたが、やはり二転、三転するこの試合。簡単には終わらなかった。

 ここまで粘り強く投げていた松永だが、8回裏、拓大紅陵は1番原田翔馬(1年)の二塁打からチャンスを作り一死三塁から3番水島がライトを破る適時三塁打で1点を返すと、さらにバッテリーミスで1点を返し、12対11と1点差に迫る。

 ここで東京学館船橋は投手交代。本間雄太(1年)が登板し、後続をしのぎ、試合は9回に突入する。本間は球速こそ120キロ後半だが、スライダーが120キロ~120キロ中盤とストレートと球速差がない変化球が武器の投手であった。こういう投手を控えている東京学館船橋は選手層は厚いように感じられる。だが、サヨナラを狙う拓大紅陵を狙う二死二、三塁から2番小林快志(2年)の中前適時打で二者生還し、サヨナラ。3回戦進出を決めた。最大8点差を逆転された拓大紅陵は野球の怖さをたっぷりと感じた試合だったことだろう。東京学館船橋も勢いで一気に逆転した試合運びはさすがであった。7回以降の攻撃が雑に終わったのは残念。やはりそういうところから隙というのは生まれる。

 拓大紅陵は先発全員安打をしたように、どの打者もスイングが鋭い。秋の時点でこれぐらい振れる打者が多いのは、非常に楽しみ。特に3番水島はバットコントロールと脚力の高さが光る左の好打者でさらに長打力が増すと楽しみ。そして4番鈴木は腕っ節の強さを生かした右の強打者で、芯に入ると軽々とスタンドインが期待できるポテンシャルを持ったスラッガーで、今後も注目してみたい逸材だ。

 また拓大紅陵の選手は立ち居振る舞いがすばらしい。派手なガッツポーズ、喜び方をしない。この試合は逆転サヨナラと大きく喜んでもおかしくないものだが、試合後の選手たちは粛々と応援団へ挨拶した。もちろん高校生だから、派手な喜び方はあってもいい。拓大紅陵の選手たちの姿勢は清清しく、高校生、あるいは中学球児のお手本となるようなものだった。次は銚子商戦。千葉を盛り上げた伝統校同士の対決は大きく盛り上がりを見せそうだ。

(文・写真=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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