試合レポート

東海大福岡vs神戸国際大附

2017.03.25

東海大福岡・安田、神戸国際大附・黒田が技巧派としてお手本の投球!

 神戸国際大附の左腕・黒田倭人東海大福岡のサイドスロー・東海大福岡 安田大将の両先発投手が持ち味を存分に出した試合だった。ストレートの最速は黒田が134キロ、安田が126キロ程度だったが、2人には速くない欠点を補って余りある技巧があった。

 安田の技巧は横変化のスライダーとシンカーを交えた横の揺さぶりで、神戸国際大附各打者は的がまったく絞れなかった。4回までのアウトの内容を見ると、12アウト中、フライアウトが実に11個数えた。それが5回以降は一転して15アウト中、ゴロアウトが10個という〝ゴロ地獄″に見舞われる。

 神戸国際大附各打者の「ストライクの見逃がし」が多かったのも安田の技巧を物語っている。4回までの見逃し率(全投球に占めるストライクの見逃しの割合。数値が低いほうが好球必打、20%以上は消極的と判断)は約24%。バットを振れていない様子がひと目でわかる。それが最終的に18%まで上がるのである。途中から慌てて好球必打に切り替えている様子が目に浮かぶ。

 奪三振0でわかるようにボールの質に特徴があるわけではない。あえて最大の武器は何かと言われれば「テンポの速さ」だと答えるだろう。捕手から返球されてから投げるモーションを起こすまでのタイムは3秒台。神戸国際大附各打者は球威がないので簡単に打てると思ったのだろう、無為無策のまま安田のペースにまんまと嵌り、横の揺さぶりに翻弄されまくった。考える余裕があれば逆方向へのバッティングなど、やれることはいろいろあったはずだが、その余裕を与えなかった。

 黒田はチェンジアップ名人と言ってもいい。カウントを取るときは大きく落とし、勝負に行くときは小さく鋭く落とす。腕の振りも小さく落とすときはストレートのときと同じように速く振り、大きく落とすときは少し緩む。スピード帯もストレート、チェンジアップ、スライダーがあまり変わらず、打者にとっては判断が難しかっただろう。安田の奪三振0に対して黒田は10個。そのうち9個は変化球で取ったものだ。

 試合は1対1のまま膠着状態を迎えるが、こういうときはだいたいエラー、四死球が絡むというのが高校野球の約束事。東海大福岡は9回裏、先頭の星野光紀(2年・三塁手)が四球で歩き、続く6番打者がバント失敗で1死後、神戸国際大附にエラーが続出する。7番中山聖也(3年・右翼手)のバントを捕手が送球エラーして一、二塁になり、8番橋本尚樹(3年・遊撃手)のショートゴロは併殺にもってこいの打球で延長戦突入かと思ったが、送球を受けた二塁手が一塁送球を焦って悪送球、星野が生還して劇的なフィナーレとなった。両先発の球数は黒田が117球、安田が95球、試合時間は1時間37分。高校野球のお手本となるような好ゲームだった。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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