試合レポート

早稲田実業vs静岡

2016.11.12

静岡、早実相手にやや意識過剰だったか…、悔やまれる力み

早稲田実業vs静岡 | 高校野球ドットコム

先発・池谷蒼大(静岡)

 今、高校野球で最も注目を浴びているのが清宮 幸太郎君であろう。その、清宮君のいる早稲田実業が登場するとあって、朝8時30分プレーボールという早い時間にもかかわらず、早くから多くの人が集まった。例によって、徹夜組も出たくらいである。いささか、呆れるくらいの過熱ぶりと言ってもいいものなのだが、それらをも含めての高校野球ということなのだろう。

 日大三との打ちあいの末に、劇的なサヨナラ勝ちで東京都大会を制した早稲田実業。一方の静岡静岡は県大会では準決勝で聖隷クリストファーの投手が打てず0対1で完封負けした。その後に3位決定戦を制して東海大会に進出。東海大会では、エースの池谷君も好投し、本来の力を示して危なげない試合運びで勝ち上がって2年ぶりに東海大会を制した。したがって、この明治神宮大会も2年ぶりの出場となる。

 いずれにしても、戦前からの地域を代表する伝統校同士である。

 試合はいきなり動いて、静岡静岡は二死走者なしから稲角君、成瀬君、小栁君とクリーンアップの3連打で先制する。しかし、その裏に早稲田実業も一死から四球と清宮君の右前打などで一二塁とすると、いくらか意識して力んだか池谷君が連続死球としてしまい、早稲田実業は労せずして追い着いた。

 そして3回、まだ本瀬来のリズムになり切れていない池谷君に対して早稲田実業は、3番清宮君死球で、4番野村君も四球となり、その後バントで一死二三塁。雪山君の右前適時打と橘内君の中犠飛で2点をリードする。

 ところが、静岡静岡も食い下がり、4回すぐに先頭の4番成瀬君が中前打で出ると、バントで進め、藤田君の左中間二塁打で1点差として、続く森君も左前打して同点とした。こうした、取られたらすぐに取り返していくという静岡静岡の姿勢はやはり強豪校だなと思わせるものがあった。

 同点となって、池谷君も本来の調子を取り戻しつつあるのかなと思わせる内容になってきた。


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決勝打となる適時三塁打を打った小西優喜(早稲田実業)

 早稲田実業は、5回から先発の池田君に代わって2番手として服部君が投げた。服部君は安打はされつつも、2イニングを何とか抑えて、さらに7回からは3番手の赤嶺君のマウンドとなった。早稲田実業としては、消す党は当初からの予定でもあり、どのタイミングでどういう順番で投入していくのかということがテーマだった。エースナンバーをつけている中川君が体調を崩して投げられない状態だったということも影響していたのかもしれないが、比較的早いタイミングでの継投となった。

 こうなると、次の得点が試合を左右しそうになってきたのだが、早稲田実業は7回、簡単に二死となってから、清宮君が右翼手頭上をライナーで破っていき、フェンス直撃打となったことで却って単打になった一打で出塁。やや力んだ池谷君の暴投で、球が一塁側に転がる間に一走の清宮君は三塁まで進む。野村君死球で一三塁となって小西君。左翼への大きな飛球かと思われたが、打球は落下点に入ったかと思われた成瀬君の後ろに落ちた。これで2者が帰って、結果としてこれが決勝点となった。

 試合後、静岡静岡の栗林俊輔監督は、「立ち上がりから、池谷が相手を意識してしまったのか、力んでしまったのが痛かったですね。それを取り返すだけのパワーがなかったということです。暴投や、四死球が失点につながってしまいました」と、悔いた。「全国という舞台でやってみないとわからないこともあるんですね。県の球場でも、神宮でも甲子園でも、やることは変わりないはずなんですけれども、どこか同じではなかったんだと思います」と、相手を意識しすぎていたことを振り返った。

 早稲田実業の和泉実監督は、「前2人が警戒されている中で、5番の小西がよく打ちました」と、7回の小西君の打撃を評価していた。そして、チームとしては、「選球眼をもっと磨いていくこと」をテーマとしているので、打たされないで我慢をすることも大事なことになる。そういう意味では、4四死球の野村君なども、よく我慢したといっていいのではないだろうか。

 この日は3打数2安打1四球だった清宮君は、都大会決勝では5三振を喫したこともあって、「悪いところを修正できて、身体の開きもなく向かっていけたのだと思います」と、1週間で自らの悪癖をある程度直すことができたことに対しても納得していた。

(取材・文=手束仁
(撮影:img55… 佐藤純一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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