早大学院vs都立東大和

　かつて、“都立の雄”と言われ夏の西東京大会では2度の決勝進出という実績もある都立東大和。その後やや低迷感もあったが、福島靖監督が就任して6年目、近年は着実に春秋の都大会にも進出を果たしている。今春も、駿台学園などを下して4回戦に進出して帝京とは大乱打戦の末敗れたものの、この夏のシード権を獲得している。

　早大学院は早稲田大の直系附属校として人気校で入試難易度も高いことで知られているが、木田茂監督は「野球でも早稲田実を倒せるようになりたい。その思いでやっている」という熱さだ。その早稲田実とは、今大会は組み合わせでは勝ち上がれば準決勝で当たることになる。当然、それまでは負けられない。その早大学院を支えるのは昨年から投げているエースの柴田迅君だ。

　そんな両校の対戦は、いい緊張感を伴って始まった。早大学院は初回先頭の宮崎君が初球の死球で出る。これで、都立東大和境の藤原君はちょっと、内側が投げづらいと意識したかもしれない。続く内田君が三遊間を破り、バントで進めて一死二三塁。そして、軟ゴロが失策となって早大学院が先制。さらに併殺崩れの間に2点目が入る。早大学院としてはいささかラッキーな形の先制だった。

　早目に反撃したい都立東大和。西東京でも屈指の速球派の好投手柴田君に対して食い下がっていった。140キロ超のストレートにも振り負けていなかった。それを感じていたのか、柴田君もやや力みが見られて、球が若干上ずり気味になった。

　3回の都立東大和はそこを突いて、先頭の1番藤村君が右前打で出ると、バントが送球ミスで一二塁とし、さらに捕逸もあって二、三塁となる。それでも、ここから柴田君は2者を抑えて二死。ところが大野君に四球で満塁とすると、続く6番小林君に対して、追い込んで三振を取りに行った球が少し高く入り、それを小林君は逃さず中前へはじき返して同点の2点タイムリー打となった。

　早大学院としては終盤勝負になるという読みだったようだが、そんな展開になっていった。どちらも投手の球数を増やしていくという戦いだったのか、比較的待球的な攻めになっていって、同点で迎えた7回。この回の攻防が結果的には明暗を分けることになった。

　この回早大学院の木田監督は6番に代打の切り札上和野君を送り出すが、期待に応えて左前打で出塁。磯部君も四球で一二塁として、一死後、1番に戻って宮﨑君が右前打して勝ち越し打となった。さらに、内田君も一塁手を襲う安打でこの回2点目が入った。

　勢いづいた早大学院は8回にも5番後藤君が左前打で出ると、送りバントが安打となって一二塁。一死後磯部君の左中間二塁打と9番柴田君の犠飛で2点を追加した。結果的には、この2点非常に大きかった。

　それでも、都立東大和も粘りを見せる。9回一死後、3番青柳義君が気持ちを込めた左中間三塁打で出ると、錦戸君も期待に応えて中前打で三塁走者を帰して、5番大野君も三遊間を破ってつなぐ。これで都立東大和の安打は10本目となったが、全員安打にもなった。それでも、柴田君はそれを振り切る力投で最後は併殺で切って取って逃げ切った。

(文＝手束仁)

注目記事
・第98回全国高等学校野球選手権大会　特設ページ