常葉橘vs美濃加茂
少ないチャンスを巧みに生かした常葉橘が接戦を制す
常葉橘・鈴木楓君
8年前のこの大会では現広島の庄司隼人投手を擁して優勝している常葉橘。以来県内の強豪としての位置づけとなっている。これに対して美濃加茂は92年以来という久々の東海大会出場となった。
美濃加茂は内田君、常葉橘は鈴木楓君の先発で、お互いにテンポがよく、自分のリズムで投げ合っていく投手戦となった。
先制したのは美濃加茂で4回、先頭の4番中村翼君が失策で出るとバントで進んで一死二塁。6番土屋君の中前打で生還した。常葉橘の鈴木楓君としても、2回には一死満塁でのスクイズを自らのグラブトスの好プレーで併殺として切り抜けた後だっただけに、ちょっと気持ちが緩んだところもあったのかもしれない。
試合展開としては、この1点が思っていた以上に重くなっていくのかなと思われかかったところだった。そんな折の6回、先頭の3番山野君が三塁線を破る二塁打で出塁すると続く高沢君は死球で一二塁。しかし、伊藤君は併殺打となり二死三塁。チャンスが潰れたかと思われたところで、暴投が出て同点となった。常葉橘としては、攻めようとしたら上手くいかずというところでの幸運な得点だった。
「県大会も何となく、するすると網の目をかいくぐるようにしながら勝ってきました」と、小林正具監督は言っていたが、まさにそれを立証してくれるかのような同点劇だった。
美濃加茂・池戸君
そして7回、二死走者なしから1番に戻ると長倉君が左翼線に二塁打。続く小林宗弘君が初球を叩いて左中間への三塁打で長倉君をかえした。父親でもある監督の期待に応えた。
「昨日、一昨日と2日間、学校の仕事や進路のための学校回りなどの出張で練習に出られませんでした。その間にコーチが練習は見ていてくれたんですけれども、選手との距離感を感じていましたけれども、そこでまぁ、よく打ってくれましたね。県大会の途中から、ヘッドを残す感覚があったのが、練習でよくなったんじゃないでしょうか」と評価していた。
この1点を8回からは、鈴木楓君をリリーフしたエースナンバーの谷脇君が2イニング、安打こそ許したもののしっかりと押さえて常葉橘が逃げ切った。先発した鈴木楓君は7回を被安打4、3四球で1失点は上出来の内容ではないだろうか。「谷脇は、肩が少し重いようなことを言っていましたから、この日は調子のいい鈴木で行けるところまでという考えでした」という小林監督の期待には十分に応えた内容だった。
美濃加茂としては、結局先制したものの追加点が奪えないままで、ずるずると来てしまったのは痛かった。愛知女子商との系列校ということもあってか、先発した内田君など愛知県出身の選手も比較的多い美濃加茂。久しぶりの東海大会だったが、敗戦とはいえ接戦の好試合を演じたということで、夏へ向けては好感触になったと言っていいのではないだろうか。
(文=手束仁)