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上沢 直之投手(専大松戸-北海道日本ハムファイターズ)【前編】「現在の基礎を作り上げた2つのヒント」

2016.05.16

 2012年以来のパ・リーグ優勝を目指す北海道日本ハムファイターズは、この男の復活を待望している。専大松戸出身の上沢 直之投手だ。3年目の2014年に8勝をマークしブレイクすると、昨季も5勝を挙げ、ここまで通算13勝と順調に勝ち星を積み上げている。

 高校時代から大器と騒がれた上沢を開花させたのは専大松戸持丸 修一監督である。高校時代、どんなことを上沢投手に教えたか、そのヒントをいろいろと教えていただいた。

■上沢選手インタビューもあわせてチェック!
「名将・持丸監督の出会いで開花したサッカー少年」
「フォークを覚え、飛躍のきっかけを掴む」

まず走り方から直した

高校時代の上沢 直之選手

 中学から野球を始めた上沢投手。それほど強いチームではなく、全国的にも無名な選手だったが、投手としての素質を見出した持丸監督は1年春から上沢を起用する。上沢の恵まれた素質はすぐに広まり、持丸監督もプロへ行く逸材だと評していたが、野球選手としての基礎が足りなかった。

 まず直したのは走り方だったという。
「素質は素晴らしかったけれど、走り方がドタバタするような走りだったんですよね。良い投手はまず走り方が良い。地面を軽く駆けるようなスムーズさ。上沢はそれがなかったので、遅かった。まずはそういうところを直さなければ上達はないと思っていました。だからここは入学してから高校が終わるまでずっと厳しく言ってきました」

 持丸監督の指導の下、投手だけではなく、野球選手としての基礎を作り上げていった持丸監督。上沢の代はかなり強化に力をいれていた世代。上沢以外にも林田 かずな(専修大卒 千葉銀行※軟式)、重野 雄一郎(JR東日本東北)など大型選手が揃っていた世代だった。この世代がクローズアップされるようになったのは2年春。県大会2回戦で、選抜出場の東海大望洋(現・東海大市原望洋)と激突したのだ。その試合に先発した上沢は、7回12奪三振の好投。打線も爆発し、東海大望洋にコールド勝ちする。その後、専大松戸ベスト8に進出。投打ともに総合力が高い専大松戸ナインに注目が集まるようになったのだ。

 そして2年夏はベスト4、2年秋もベスト4と県内上位を勝ち進むようになり、上沢はエースとしてチームを引っ張った。今もそうだが、当時から上沢はストレート主体の投手だった。全く変化球を投げないわけではなく、むしろキレ味鋭い縦の変化球もあったが、ここぞという場面ではストレート。そこには持丸監督の「ストレート」に対する強いこだわりがあった。

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[page_break:変化球の割合を減らしストレートにこだわった理由]

変化球の割合を減らしストレートにこだわった理由

上沢 直之選手(北海道日本ハムファイターズ)

「やっぱり最後はストレート。これは投手ではなく打者にも言えることなのですが、キレの良いストレート、本当に速いストレート、キレのあるストレートを打つには、実は変化球を打つよりも難しいと思っています。まず変化球もしっかりとしたストレートがあって初めて生きるものですから。今年の千葉県で言えば、早川 隆久木更津総合関連記事)君を完璧に打ち返せる選手が、高いステージへ行けるわけです。早川君のストレートのキレは本当に素晴らしい。逆に投手でいえば、キレがあって、速さがある投手が高いステージへ行けます」

 そのため持丸監督は、試合中、上沢にカーブ、フォークの割合を減らして、極力、ストレートで勝負で行くことを指示した。ストレート中心でいくと、球種が少ないので、相手からすれば狙い球は絞りやすくなる。また当時の上沢は調子の波が激しい投手だった。
「上沢は今日良ければ明日も良いということはなかった投手でしたからね。だから連投向きの投手ではなかった。ストレート中心だから調子が悪いと球数が多くなる。それでもこの方針は変えませんでしたね」

 この方針が良く出た試合もあれば、悪く出た試合もある。よく出た試合は2010年秋習志野戦(試合レポート)。この試合、7四死球出しながらも1対0の完封勝利。気力十分だった上沢は、ストレートも絶好調で、ほぼストレートのみで強打の習志野打線を封じ込んだ。また2011年春東金商戦(試合レポート)もストレート1本のみで、5回まで10奪三振に抑える素晴らしい投球を見せた。

 しかし素晴らしい投球ばかりではなく、2010年秋の準決勝木更津総合戦で打ち込まれたり、2011年春の流通経大柏戦(試合レポート)ではストレートが走らずに立ち上がりから多くの痛打を浴び、4回途中で降板してしまうなど、悪く出ることも多かった。

 最後の夏も決して良い投球ではなく、初戦の千葉明徳戦(試合レポート)では10回を投げて6失点。そして4回戦の東京学館浦安戦では6回3失点で敗戦投手に。一度も甲子園に出場することなく、上沢の高校野球が終わった。

 持丸監督は「変化球の割合を増やしたり、交わす投球をさせたら、球数は減っていたかもしれないし、もう少し勝っていたかもしれません。上沢にストレートを磨かせたのは、次のステージで活躍してほしい思いがあったからです。先ほども申しましたようにストレートが絶対ですから。私の指導は甲子園に出場することが全てではありませんからね。次のステージで活躍するために高い技術と強いメンタルを身に付けさせるのがこちらの役割。それにより選手たちが野球でごはんが食べられればと思っています」

 ストレートにこだわる姿。この上沢がブレイクした3年目の投球を見ると、実を結んだといえる。

 後編ではプロ入り前のエピソードなどに触れていき、現在の活躍について思うことを持丸監督に語っていただきます。

(取材・構成=河嶋 宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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