試合レポート

中京大中京vs東邦

2016.05.01

昨秋の悔しい思いをぶつけた中京大中京が気持ちで上回った伝統の一戦

中京大中京vs東邦 | 高校野球ドットコム

中京大中京・磯村君

 何はともあれ、愛知県の高校野球としては黄金カードであり、名門校対決だ。昭和の時代からの伝統の一戦である。スタンドは多くの高校野球ファンで埋まった。愛知東邦は、昨年秋の東海地区大会優勝校でセンバツ出場も果たした。また、中京大中京は昨夏の代表校で、ともに県内で最も甲子園に近い位置にある同士と言ってもいい対戦である。

 やや重い緊張感の中で始まった試合、お互いに少し硬いかなと思われたが、愛知東邦の先発松山君は、先頭の伊藤 康祐君にいきなり中前打されたことで却って落ち着いたかのようだった。しかし、中京大中京の磯村君は先頭の濱嶋君を追い込んでから死球となってしまい、次の高木君の二ゴロも併殺が取れなかったこともあってか、いくらか力んでしまい、結局3四球で押し出して1点を与えてしまった。愛知東邦の強力打線を意識しすぎていたところもあったようだ。

 こうして始まった試合、2回からは落ち着きかかったのだが3回、中京大中京が二死からの猛攻で4点を奪い返した。この回、一死後9番磯村君は左前打で出るが、三塁ゴロで二死一塁となる。しかし、ここから杉井君が中前打すると、内藤君は死球で満塁。杉本君の軟ゴロは失策を招いて同点。これで勢いづいた中京大中京は、5番佐藤 勇基君が右前打して二者が帰る。さらに一三塁で、鵜飼君も左前打してこの回4点が入った。まさに、昨秋の悔しさの思いをぶつけたような中京大中京の連打だった。

 しかし、愛知東邦打線もさすがに破壊力がある。その裏、二塁打の高木君を置いて、松山君が右翼芝生席に放り込む2ランでたちまち1点差とした。磯村君としては、インコース低めを狙って投げたのだが、それをうまく運ばれてしまった。打者が一枚上だったと、磯村君自身も脱帽だった。しかし、そこから磯村君は切り替えて、組み立ても少し変えて、その後に崩れなかったことが大きかった。


中京大中京vs東邦 | 高校野球ドットコム

東邦・松山君

 次の1点がどういう形になるのかと注目されたが、中京大中京は5回に二死走者なしから2つの四球と佐藤勇君の左前打などで満塁として、この日に起用された20番の諸橋君が一二塁間を破ってさらに1点を追加した。結果的には、試合の流れからしても、この1点が功を奏した感じとなった。

 松山君に一発を浴びたものの、強打の藤嶋君に対しては初回こそ警戒しすぎて四球を与えたものの、その後は磯村君が打ち取っていたことも、自信となったのではないだろうか。球威やスピードで封じ込むというのではなく、投球の上手さで、その後は愛知東邦打線に三塁も踏ませなかった。
ただ、3回戦では豊川から10点を奪った中京大中京打線も、松山君の手元で微妙に動いてくるカットボールなどに手こずって、その後はなかなか打ちきれないままだった。

 結局、後半は投手戦の様相となって、磯村君がそのままリードをキープしていく好投で中京大中京が逃げ切った。高橋 源一郎監督は、「内容はあまりよくはなかったですけれども、昨年の秋に悔しい思いをした選手たちは大会前からここで(愛知東邦と)当たるのを楽しみにしていました。その悔しいという気持ち、今度は負けないぞという思いがよく出ていたと思います」と、伝統の一戦だけに、まずは勝ったことを評価していた。そして、「松山君のボールに対しては、もっとコンパクトに振っていくようにと指示したのですけれども、なかなか対応しきれませんでした。もっと工夫が欲しかったですね」と、反省も忘れなかった。

 愛知東邦の森田 泰弘監督は、この大会は、夏を見据えて、藤嶋君に続く投手を育てていく、実質は二枚エースとしていきたいだけに、松山君の成長を期待していた。大会を通じて、1試合をきちんと投げられるということ示したのは収穫と言ってもいいであろう。

 (文=手束 仁

中京大中京vs東邦 | 高校野球ドットコム
注目記事
2016年度 春季高校野球大会特集

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.06.10

【福島】いわき光洋、平工が勝利<春季支部選手権大会>

2024.06.10

【北海道】札幌支部は11日に抽選会!27連勝中の北海に、20年ぶりに春全道大会出場の大麻にも注目<夏の甲子園予選組み合わせ>

2024.06.10

【沖縄】11日に抽選会!春の覇者・エナジック、ノーシードの沖縄尚学の対戦相手に注目<夏の甲子園県大会組み合わせ>

2024.06.10

仙台育英卒業生の進路は超豪華! 主将はプロ入り、主力は早大、明大、中大ら名門へ進学し、すでにデビュー組も多数!

2024.06.10

高校時代、クラブチームでプレーした152キロ左腕が5回7奪三振の快投!大学日本代表候補たちが選手権で躍動【大学野球選手権】

2024.06.10

【福島】いわき光洋、平工が勝利<春季支部選手権大会>

2024.06.10

【北海道】札幌支部は11日に抽選会!27連勝中の北海に、20年ぶりに春全道大会出場の大麻にも注目<夏の甲子園予選組み合わせ>

2024.06.10

【沖縄】11日に抽選会!春の覇者・エナジック、ノーシードの沖縄尚学の対戦相手に注目<夏の甲子園県大会組み合わせ>

2024.06.04

神村、鹿実の壁を破れ! 国分中央は「全力疾走・最大発声・真剣勝負」で鹿児島の頂点を狙う

2024.06.08

慶應義塾が15安打12得点で強打健在も投手陣に不安 先発小宅は5回途中で降板【香川招待試合】

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.21

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在33地区が決定、岩手では花巻東、秋田では横手清陵などがシードを獲得〈5月20日〉

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.19

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在30地区が決定、青森では青森山田、八戸学院光星がシード獲得