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高松商、センバツ準優勝の秘訣 主砲の「覚醒」と8・9番の「好調」が2大会連続躍進へ

2016.04.22

 センバツ55年ぶりの決勝進出を果たした高松商(香川)。最後は智辯学園(奈良)の前に惜しくも敗れ56年ぶり3度目の優勝は逃したが、明治神宮大会優勝に続く躍進で改めて強さを印象付けた。では、彼らはなぜ、全国大会2連続決勝進出を成し遂げられたのか?今回は、ちょっと違った視点からその秘訣を捉えてみたい。

崖っぷちだった主砲の「覚醒」

高松商センバツ準優勝バッテリー・植田 響介(左)と浦 大輝(右)

 

「このセンバツまでは我慢しますが、これでダメだったらメンバーから黙って外します。こんな大舞台で目覚めないようでは……」

 苦笑いを浮かべながら目は全く笑っていない。今でこそエピソードとして記せるが、これが長尾 健司監督の4番・捕手の植田 響介(3年・右投右打・181センチ80キロ・東かがわ市立白鳥中出身)に対する大会前評価であった。

 実際、練習試合でも課題のリード・ワンバウンドストップは改善の余地が見られず。東かがわリトルシニア時代は捕手の実弟・植田 理久都(2年・右投右打・178センチ80キロ)にリード実績では先んじされる状況。いわば彼にとってセンバツは「崖っぷち」だったのである。

 ただ、大会で彼は変われた。昨秋は四国大会準決勝以降、不振に陥っていた打撃では準決勝秀岳館(熊本)戦・延長11回表の決勝打含む8安打。全5試合で安打を放つ粘り強さを見せた。そればかりでなく課題の守備でも暴投・捕逸を計2に留め、リード面でも強打線に対し、内角球もいとわない強気のリードが光った。

 エース・浦 大輝(3年・右投右打・179センチ83キロ・香川県立高松北中出身)のスライダー・カーブ・スプリット。22打数9安打(うち長打5本)6打点2盗塁の猛打を発揮した二塁手との二刀流リリーバー・美濃 晃成(3年・170センチ66キロ・右投左打・高松市立古高松中出身・侍ジャパンU-18一次代表候補)のカーブ・スライダーといった縦変化を受け止めた植田響の成長は、結果としてチーム防御率「2.72」につなげる大きな原動力に。

 大会中、チーム打率.309の打撃力や5試合10盗塁の走力が大きくクローズアップされた高松商だが、その裏にある主砲の「覚醒」なくして準優勝はありえなかった。

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[page_break:大きかった「打者・浦 大輝」と9番・山下 樹の好調]

大きかった「打者・浦 大輝」と9番・山下 樹の好調

高松商影のセンバツ準優勝立役者・荒内 俊輔(左)と山下 樹(右)

 

 2回戦以降「2番・右翼手」で13打数5安打2盗塁と堅守俊足をいかんなく発揮した荒内 俊輔(3年・右投左打・178センチ67キロ・高松市立桜町中出身)や、打順では荒内の前で4盗塁、守っては荒内と鉄壁の右中間を組んで敵に脅威を与え続けた安西 翼(3年・右投左打・173センチ66キロ・高松ボーイズ出身・侍ジャパンU-18一次代表候補)。

 ここに厚みを加えるのは主将・米麦 圭造(3年・遊撃手・右投右打・178センチ75キロ・東かがわ市立白鳥中出身・侍ジャパンU-18一次代表候補)、植田響・美濃の主軸。そして第2の4番として23打数でチームトップの9安打5打点1本塁打の6番・植田理。中軸は3番から6番までの「4人」といっても過言ではない。

 それ以上に大きかったことが実はある。高校野球では期待値の低いのが通例である8・9番の成績だ。
8番・浦は16打数5安打2打点。1回戦・いなべ総合学園(三重)戦では三打席連続安打で終盤逆転勝ちへの基盤を作れば、準々決勝・長崎海星(長崎)戦でも6回表の適時二塁打で打線に流れを作った。

 さらに9番の山下 樹(3年・三塁手・右投右打・172センチ72キロ・高松市立紫雲中出身)は長崎海星戦の4打数3安打3打点をはじめ、17打数5安打。日替わりだった7番打者を除き、ほぼ緊張を強いられる状況を作り出した浦・山下2名の好調も、高松商決勝戦進出には欠かせない要素となった。

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課題を受け止め、再び夏の舞台へ向かう

高松商センバツメンバー18名での記念撮影

 

 その部分をクローズアップすると決勝戦智辯学園(奈良)は実に賢い戦いをした。5番の美濃を4打数無安打に抑えつつ、7番以下を11打数無安打に封じて完全に打線を分断。「打ち合い」でなく「我慢比べ」という自らの土俵に引き込んだ。

 4月9日(土)に四国大会代表決定戦高松商を破った小豆島も同様である。バッテリーは4番・5番を無安打に抑え、9番の山下も2犠打のみの無安打として得点力を大きく減じさせた。

 一方で高松商3得点のホームを踏んだのは途中出場の8番・真鍋 翔(2年・二塁手・右投左打・171センチ67キロ・琴平町立琴平中出身)と、7番の代打・吉田 啓瑚(3年・右投左打・175センチ74キロ・高松市立協和中出身)。図らずも8・9番打者が得点の大きなウェイトを占めていることが実証される形となっている。

 試合後、主将の米麦は「今日の試合は打てない僕らが悪い。そこを受け止めて死に物狂いにならないと」と自らを含めた打線を責めたが、主力と呼ばれる面々はもちろんのこと、自らの強みと弱みを分析・改善できなければ、昨秋県大会決勝戦に続き公式戦連敗となった小豆島をはじめ、「打倒・高松商」に狙いを絞ってくる県内ライバルたちを倒すことは困難な作業となってくるはず。

「4月8日にはじめてノックを打ったが、うまい選手が多い。特に2年生は慌てていると思う」と指揮官が語る20名あまりの新入生を加え、チーム内競争も再スタートを切る高松商。課題を受け止め、夏に向かう彼らがまずは6月18日(土)・19日(日)に大阪桐蔭(大阪)を迎えて[stadium]レクザムスタジアム[/stadium]で開催される「香川県高野連招待試合」でどんな途中経過を見せてくれるかを、楽しみに待ちたい。

(文・寺下友徳


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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