Column

東邦高等学校(愛知)

2016.03.10

 2005年以来、11年ぶりの選抜甲子園出場を決めた東邦。春将軍と呼ばれているように、東邦は選抜の実績が素晴らしい。これまでに27回出場しており、優勝4回、準優勝2回、4強3回、8強6回と圧巻の実績だ。また通算勝利数50勝は中京大中京に次ぐ歴代2位の数字である。
前回出場の2005年は、元プロ野球選手で現在は同校のコーチを務める木下 達生投手の活躍でベスト8だった。全国制覇を目指し、どんなチーム作りをしているのか、そしてこの春へ向けての課題点、現状の取り組みなどに迫った。

藤嶋 健人を主将に据えた理由

藤嶋 健人(東邦高等学校)

 組織作りにおいて主将の人選はとても重要だ。今年の東邦はそれが機能しているといっていい。2014年、1年生ながら甲子園のマウンドを踏んでいる藤嶋 健人2016年インタビューが主将に就任したことがスタートであった。森田 泰弘監督に主将を任せた理由について伺うと、「実力、メンタル、練習に取り組む姿勢。誰が見ても藤嶋しかいないと思っていました」と全面的に藤嶋を信頼している様子だった。

 当時のことを藤嶋に聞くと、「新チームがスタートした時、僕がチームを引っ張っていくつもりでした」と語るように、藤嶋を主将に任せたい監督、そしてチームを引っ張りたい藤嶋の思いが合致したのであった。

 新主将・藤嶋の就任に、チームは納得の雰囲気だったが、その理由を藤嶋のクラスの担任である小嶋 裕人部長が明かしてくれた。
「藤嶋が素晴らしいのは、1年生から甲子園に出場していても、全く天狗になっていないところですね。クラスの席替えでも、藤嶋は授業に集中したいために一番前に座ることを希望する。一人間として、一生徒として申し分ない姿を見せてくれます。そして練習に対する姿勢も、しっかりと課題に向き合って取り組む。ナインはそういう姿を間近に見ているので、当然だろうという雰囲気でした」
と藤嶋の人間性を高く評価していた。

 また東邦ナインはキャプテンを中心に朝、学校の最寄り駅である一社駅や学校周りを掃除する習慣がある。これは選手の自主性に任せているが、藤嶋は学校に行ける時はほぼ毎日やるという。その藤嶋を見て、小嶋部長は「やらされている感が全くないのがいいですよね。藤嶋の姿を見て、ついていく奴が多くいて、去年だったら3人ほどだったのが、今は10人います。そういう姿を見ている先生方もいますから、自然と応援されるチームになってきますよね」

 高校野球にとって応援されるチームになることはとても大事だ。何事にもひたむきに取り組む東邦ナインの評価は学校内で高まっていたのだ。主将の藤嶋に、何か意識していることはあるのかと伺うと、「自分は主将らしいことは特にやっているつもりはないですし、そんなに厳しいことも言っていないです。みんな意識が高いですし」と語るが、1年生の頃から主力選手だった藤嶋が行動を示せば、選手はついていく。キャプテン・藤嶋はいわゆる背中で引っ張っていくタイプ。実績の高さを鼻にかけるなく、掃除など細かいことも自ら率先して動ける選手なので、他の選手はしっかりとついていく。今年のチームは自然とまとまりができていたのだ。

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[page_break:全国で勝つには打撃力と藤嶋以外の投手陣の底上げが必要]

全国で勝つには打撃力と藤嶋以外の投手陣の底上げが必要

 チーム作りとしては藤嶋を中心とした守りの野球が基本となった。去年夏から経験している捕手の高木 舜、遊撃手の濵嶋 良明、二塁手の鈴木 理央の3人が中心となって守りを固めていった。
そして県大会では藤嶋が好投を見せ順調に勝ち進み、準決勝では栄徳、決勝では享栄を破り、優勝。そして東海大会ではまず中京戦で7回参考記録ながらノーヒットノーランを達成、そして準決勝の三重三重戦も3対1で勝利するなど、まさに守り勝ちという試合が多かった。

 しかし決勝のいなべ総合戦では、先発の藤嶋がいきなり6点を取られる立ち上がり。劣勢に立たされた東邦ナインだったが、怯む様子はなかった。小嶋部長がこの試合のベンチをこう振り返る。
「全く動じることなく、すぐ取り返すぞ、とベンチ内には活気がありました」
そして選手たちは点を取り返していきながら、ついにサヨナラで東海大会優勝を決めたのである。藤嶋を中心にまとまったチームはここぞという舞台で結束力を発揮したのであった。

 底力を感じさせる戦いぶりだが、森田監督は「これで底力があるとか、打力があるチームとはまだいえないもので、秋の大会を通して、全国で戦うには打撃を底上げしていかないと厳しいと感じました」と厳しくチームを見ている。

左から松山 仁彦、藤嶋 健人、松本 凌弥のクリーンナップ(東邦高等学校)

 だが森田監督はチームとしては打力が課題と挙げながらも、個人の活躍をしっかりと評価している。収穫に挙げたのが1番を打つ鈴木 光稀の成長、3番松本 凌弥、5番松山 仁彦だった。
県大会まで打率7割ぐらい打っていましたし、鈴木光のような選手が成長を見せたことで、東海大会で優勝できたというのもありますし、藤嶋が目立つ中でも、彼が成長を見せたことは良かったです。3番松本は藤嶋のつなぎ役としてがんばっていましたし、5番松山も東海大会決勝で2本塁打と良く打っていたよね」と振り返った。

これほど選手の活躍を評価しても、まだ打撃面は森田監督が望むレベルには達していないということだ。

 打線以外で課題に残ったのは、藤嶋以外の投手陣の底上げだ。

愛知県大会
東海大会はほとんど藤嶋が投げてきた。明治神宮大会青森山田戦(試合レポート)では近久 輝が先発し、2番手として松山が投げたが3対4で惜しくも敗れた。だが近久は最速143キロを計測し、松山も、左スリークォーターから最速143キロ、そして独特の曲がりをするスライダーを披露し、潜在能力の高さを示した。

 森田監督は「まだ2人とも場数を踏んでいない感じがありました。しかし潜在能力は高い2人ですし、この2人と、あと投げていないですが、ベンチ入りしていた千手翔太などの投手が底上げをして、藤嶋が投げなくても勝てる形になれば理想ですね。選抜だけではなく、夏も藤嶋1人だけでは戦えないですから、投手陣には自覚を持って取り組んでほしいです」と、投手陣に自覚を求めていた。

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[page_break:二度のキャンプで狙うは全国最多の5度目の優勝]

二度のキャンプで狙うは全国最多の5度目の優勝

体幹トレーニングに取り組む選手たち(東邦高等学校)

 そして神宮大会後の冬季練習。土日に限り、強化練習を行っている。
この強化練習を行うのは15人。1組3人に分かれて、体幹トレ、フリー打撃、ノック、ゴロ捕り、ティー打撃を1時間のローテーションで行っていく。1組がすべてのメニューを消化するのに5時間もかかる練習だが、まさに打つこと、捕ること、体を鍛えることを目的としたハードなトレーニングで、この練習を終えるとグラウンドに出て、別のトレーニングメニューに入る。練習量がけた違いに違う。何といっても選手たちは歯を食いしばって、そして目の前のメニューを1つずつ大事にこなしている。

 課題となった打撃強化では、平日は打撃練習が中心。水、木、金のフリー打撃だけ投手が登板する。振る数はもちろんだが、東邦は「動く球」を多く打つことを重視する。投手が投げることになれば、実戦感覚を失わずに打撃強化することができる。それは選抜をしっかりと見据えての調整だった。

 そして年末には舞子で強化合宿。2月には静岡県伊豆でキャンプを実施。3月には和歌山県の串本でキャンプを行い、大会へ向けて準備する予定だ。大会前にキャンプを行うのは初めての試みだという。
「前回選抜に出場したのが2005年。この時は事前にキャンプする動きはなかったですが、ここ最近はキャンプする学校が増えてきました。僕は準備というものを大切にするので、ぜひ取り入れていこうと」

 迎える選抜へ向けて着々と準備は整っている。藤嶋を中心とした2年生は、控えなど関係なくとても仲が良いチームだという。この合宿を機にさらに結束を固めていきたい考えだ。
選抜優勝4回を誇り、春将軍と呼ばれる東邦。自慢の守備力に加え、この冬に鍛え上げた打撃力、チーム力を思う存分発揮し、全国最多の5度目の選抜優勝を目指す。


注目記事
第88回選抜高等学校野球大会 特設ページ

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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