試合レポート

常総学院vs石岡一

2015.09.30

少ないチャンス生かした常総学院、試合運びの上手さが光る

歯切れのいい左腕・鈴木昭汰君(常総学院)

 秋晴れの好天に恵まれて、霞ヶ浦を通る爽やかな風にも包まれながらの試合。秋季県大会も、そろそろ来春のセンバツの舞台も見えかかってくる、準々決勝である。

 秋季大会のチームは、どうしても投手が優位で、ある程度まとまった投球をする投手がいれば、試合を作ることができるのだが、常総学院は歯切れのいい左腕鈴木昭汰君、石岡一は縦の変化が大きく効果的な高崎 大幹君が先発して、立ち上がりからお互いが持ち味を出した投手戦という様相で始まった。

 お互いに、チャンスらしいチャンスを迎えることもないまま、前半を終えようとしていた5回、試合が動いた。
常総学院は二死走者なしから1番陶山 勇軌君が右前打で出ると、続く荒 祐広君の一打が、ポトリと左翼手の前に落ちて一三塁。常総学院としては、願ってもない走者が二人塁を埋めたことになった。打ちきれなかったら、機動力を使ってでも何とかしていこうというのが、常総学院の野球でもあるが、その真価を発揮したのが、ここからだった。

 一塁走者荒君がするするとリードしてスタートを切ると、石岡一バッテリーもそれを読んでいたとばかり、原田君は刺すべく二塁へ送球。それを見て三塁走者の陶山君はスタートを切るが、それも承知で石岡一野手もすぐに本塁へ投げ返したのだが、陶山君はスタートもよく、スライディングも巧みにタッチを交わして間一髪セーフで、1点をもぎ取った。

 この場面、常総学院の佐々木 力監督としてはエンドランを仕掛けていったということだが、空振りしたところで、結果としてディレードスチールのようになったのだった。常総学院としては、「足のある選手を生かしていきたい」という考え方もあり、いい形での得点ということになった。


関連記事
・2015年秋季大会特設ページ
・あの学校の取り組みは?!茨城県の野球部訪問を一挙紹介!

2015年秋季大会

縦の変化が大きく効果的な高崎 大幹君(石岡一)

 この最少得点を何とか守り切っていきたい常総学院だったが、久しぶりの登板だという鈴木昭汰君は尻上がりにペースを上げていく好投で、先頭打者を出したのも3回に高崎 大幹君に安打された時だけで、結果的には毎回の14奪三振で完封。
佐々木監督も「この日の投球内容は80点をあげてもいい」と評価していたが、相手と対峙しながら、配球を変えていかれるうまさを持っている。この日もカット系のボールは巧みに拾われるということを感じたら、むしろ高低差を利用してストレート中心にしていったことが功を奏していた。まさに、大人の投球術と言ってもいいであろうか。

 そして8回には一死から鈴木君、花輪君と3、4番の連打で好機を広げて、二死満塁から有村君の右前打で追加点を挙げた。こうした勝負強さもさすがに常総学院である。有村君も、打席の立ち位置を工夫するなどの対応できっちりと結果を出すあたりは見事と言っていいだろう。

 近年、毎年のように好投手を育てている石岡一の川井 政平監督だが、この秋も高崎君という好投手できっちりと8強入りを果たしているのは見事だ。ただ、あと一つの壁に泣かされ続けてきているのもまた事実である。ここからあと一つ二つの壁をどうやって破っていくのか、これがこれからのチームとしての課題ともいえるのではないだろうか。
川井監督も、「最終的にはポテンシャルの差ということになってしまうのでしょうけれども、ここからを勝てていかれないと、本当のチーム力になっていきませんからね」と、いくらか無念さを示しつつも力負けは認めざるを得なかった様子だった。

(文=手束 仁


関連記事
・2015年秋季大会特設ページ
・あの学校の取り組みは?!茨城県の野球部訪問を一挙紹介!

2015年秋季大会

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.16

【宮城】仙台一、東北、柴田、東陵がコールド発進<春季県大会>

2024.05.16

涙の甲子園デビューから大きくレベルアップ!前橋商の192センチの剛腕・清水大暉は、高速スプリットで群馬県大会19回1失点、22奪三振の快投!<高校野球ドットコム注目選手ファイル・ コム注>

2024.05.16

【2024年春季地区大会最新状況】全道大会は出場校決定、関東と東海は18日に開幕

2024.05.16

U-18代表候補・西尾海純(長崎日大)、甲子園で活躍する幼馴染にむき出しのライバル心「髙尾響には負けたくない」

2024.05.16

【秋田】夏のシードをかけた3回戦がスタート、16日は大館鳳鳴などが挑む<春季大会>

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.14

大阪体育大の新入生に兵庫大会8強の145キロ右腕、金光大阪の1番センター、近大附の4番打者など関西地区の主力が入部!

2024.05.16

【宮城】仙台一、東北、柴田、東陵がコールド発進<春季県大会>

2024.05.13

大阪桐蔭、山梨学院、慶應義塾…強豪校・名門校の昨年度卒業生はどの進路を歩んだのか?【卒業生進路一覧】

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?