試合レポート

柏南vs習志野

2015.04.30

最後まで落ち着いた試合運びを見せた柏南が習志野を破る大金星!

松野(柏南)

 柏南vs習志野の一戦も緊迫した試合となった。習志野の先発・土井大輝(3年)は右上手の本格派右腕。左腕を高々と上げ、テイクバックを大きく取って、振りおろすフォームから繰り出す直球は常時130キロ~133キロを計測。スライダー、チェンジアップ、カーブを投げ分け、テンポよくストライクを先行させていく投球は、見ていて心地が良い。しっかりとゲームメイクができる投手で、夏も活躍が期待できそうだ。

 習志野は初回から走者を出すが、挟殺プレーでアウトになったり、二塁のタッチアップからアウトになったりとチグハグな攻撃が目立ったが、アウトにしたのも柏南の好守備が目立った。

 そして柏南の先発・松野将大(2年)も変則的な左腕だった。右肩を高々と上げるフォームはとても躍動感がある。だがボールは120キロ台と思ったより来ていない。そのギャップこそこの投手の最大の強みなのだ。さらに100キロ台のカーブを織り交ぜ、習志野打線は捉えきることがができない。またバックも松野を盛り立てていた。これでさらにスピードがついて、スピードに強弱をつけるようになったとき、さらに打ち難い投手になっていきそうだ。

 両投手の好投で、5回まで0対0で折り返す。

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2本目の本塁打を放った内山(習志野)

 試合の均衡が破れたのは6回裏。習志野は3番内山京祐(2年)が高めに入る直球を逃さず捉え、ライトスタンドへ飛び込むホームランで1点を先制に成功。綺麗な放物線を描いた本塁打となった。そして7回裏、一死三塁から9番松井和輝(3年)が左前適時打を放ち、2対0とする。

 松井は、松井裕樹(現・東北楽天ゴールデンイーグルス)投手の弟。兄と違うのは、手足が長く、すらっとしたスタイルであるということ。シートノックから鋭い返球を返し、また守備の動きも良く、バランスが良い。打撃も9番であるが、第1打席に鋭いライナーを放つなど、スイング自体は鋭い。構え方に力みがなく、インパクトまで無駄がないスイングができており、攻守ともに力量が高く、今後も注目をしていきたい選手であった。

 そして8回裏、3番内山が再びライトへホームラン。これで2打席連続本塁打。内山はそれほど上背がある選手ではないが、腰回りのがっしりさを見ると、下半身の力強さがパワーの源になっているようで、孤を大きく描いたパワフルなスイングができている。三塁守備もスピードがあり、グラブさばきも安定していて、なおかつ強肩。攻守で鍛えられた好選手で、夏の注目選手になっていきそうだ。

 またほかにも好選手が多く、遊撃の内澤優介(3年)も、ミートセンスが高い打撃に加え、フットワークが軽快な守備も魅力で、中堅の加藤駿(3年)は4.00秒前後で駆け抜け、バットコントロールが良い左打者であった。

 習志野が勝利かと思われたが、2試合続けてタイブレークが続いた[stadium]千葉県野球場[/stadium]。このままでは終わらなかった。

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勝利を決めた柏南の北澤はガッツポーズ!

9回表、4番水間泰良(3年)の安打、5番森川雅希(3年)が四球で無死一、二塁のチャンスを作ると、6番本間が凡退したが、7番坂本渉(3年)の左前安打で一死満塁のチャンスを作ると、8番鳥海晃斗(2年)は遊ゴロとなったが、失策となり、アウトカウントは増えず、一死満塁のまま1点を返し、9番松野が左前適時打を放ち、3対3の同点に追いつく。

 またもタイブレークが起こるのか?と思わせる試合展開に。9回裏、柏南の松野が習志野打線を三者凡退に抑え、延長戦に持ち込む。
 ここまでの2試合、先攻となったチームが勝利していたが、それは柏南にとってもチャンスである。そして無死一、二塁から1番北澤が犠打で送った後、一死二、三塁から間下が中前適時打を放ち、勝ち越しに成功する。1点どまりとなったが、10回裏、ここまで好投の松野に代えて、二塁手の北澤をマウンドに送った。

 これはタイムリーな判断だった。左投手の角度になれていた打線にとって、右サイドの北澤は厄介な球筋であった。そして照明がなく、薄暮の[stadium]千葉県野球場[/stadium]。昼間に比べてボールが見難くなり、キレを感じた。二死満塁まで追い込まれたが、4番深田を空振り三振に打ち取り試合終了。柏南習志野を破り、ベスト8進出を決めたのだ。

 勝因としては、柏南の粘りはもちろんだが、習志野が勝ちを急ぎ過ぎたように見える。あれほど落ち着いた試合運びを見せていた習志野にミスが目立ったのだ。習志野は精神的なところまで隙を見せないところが強みだが、ここに隙を見せたのは夏へ向けての課題となった。

 柏南は実に粘り強いが、そこにはハイレベルな習志野打線にもしっかりと対応できる守備力が大きかった。我慢ができたからこそ逆転勝ちを呼び込んだといっても過言ではない。

 これで昨秋の県大会ベスト8は千葉敬愛以外、敗れ去った。このようなチームが出てくるからこそ、今年の千葉県は怖い。し烈さという点では過去数年では一番かもしれない。

(文=河嶋宗一)

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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