東海大菅生vs静岡
東海大菅生、明治神宮大会でも生きる“ラッキー8”イニング
本塁打を放ちガッツポーズを見せる馬場大輔君(東海大菅生)
この大会だけのことを言えば、静岡は34年ぶり、東海大菅生も18年ぶりの出場で、いずれも久々の出場ということになる。
この秋、新チームの前評判の高かった静岡は、県大会から圧倒的な打力で勝ち上がってきていた。
1位校のシードとして臨んだ東海地区大会も、2回戦と準決勝(試合レポート)をコールド勝ちし、決勝では県岐阜商の評判の好投手を延長の末攻略しての進出である。
東海大菅生は、つい先週東京都大会の準決勝(試合レポート)と決勝(試合レポート)を戦い、今秋のこの大会に臨むというハードスケジュールでもある。いずれも、8回に得点して勝利をものにしてきた。
そんな両校の対戦は、序盤からお互いが点を取り合う展開となった。
初回に静岡は、一死二三塁から暴投で先制するが、東海大菅生は2回に一死三塁から小磯和貴君の二塁後方への飛球。これを、静岡の大石智貴君は好捕するのだが、後ろ向きになっていた体勢を見て三塁走者の江藤勇治君がタッチアップで本塁を陥れた。常に、試合の状況を見ている中での好走塁だったといっていいだろう。
3回、再び静岡がまたも暴投でリードするものの東海大菅生も、8番馬場大輔君が左翼スタンドに放り込むソロアーチで同点とした。そして、4回には6番伊藤壮汰君の右中間二塁打で、初めて東海大菅生がリードした。
しかし、地力のある静岡はすぐに跳ね返していく。5回の静岡は四球と失策に乗じてチャンスを広げていくと、二死一二塁から8番村木文哉君の左中間へ落とす二塁打で二者を帰して逆転した。
来春、さらに成長した姿が期待される1年生の村木文哉君(静岡)
それでも、粘る東海大菅生は6回に打っても3番の勝俣翔貴君が右中間へ低い弾道の本塁打を放って3度目の同点とした。打った瞬間は、まさかスタンドに入るとは思えないような打球だったが、リストが強いのだろう。打球はグーンと伸びていってそのままスタンドに入っていったのだ。これで、3度目の同点となった。
こういう展開だけに、もしかしたらタイブレークもありかなと、そんな考えも頭をかすめ出した8回、試合は一気に決着へ向かった。
この回、東海大菅生は2番からの好打順だったが、死四球とバント、さらに敬遠気味の四球で一死満塁とする。ここで、都大会決勝の8番から6番に上がっていた小磯君が、期待に応えて左翼線へ二塁打して二者を帰した。さらに、暴投もあってもう1点を加えた。東海大菅生は先週の東京都大会に続いて、またしても8回に貴重な得点を挙げた。
まさに、“ラッキー8”といってもいいであろうか…。
東海大菅生の若林弘泰監督は、「(8回に得点していることは)特に意識しているわけではありませんが、この回は打順がよかったので、得点するとしたらここだなという気はしていました」と言うが、その思いにズバリとハマったといっていいであろう。
「ミスが出るのもいつも通りでしたし、勝俣に四球が多い(6四死球)のもいつも通りです。ただ、ミスの後にすぐ2点を取り返したのと、ここという場面で一本が出たことですね。それがよかったです」と、試合を振り返っていた。
また、静岡の栗林俊輔監督は、「勝俣君の低めの変化球を見極め切れませんでしたね。それに、クリーンアップがノーヒットでは…、やはり勝てませんよね」と、地区大会では猛威をふるった打線の中軸が沈黙したことを悔いた。
村木投手に関しては、1年生でもあり、この冬を通してさらに精度を上げていくことをテーマに掲げていた。
(文=手束 仁)