試合レポート

川越東vs春日部東

2014.10.05

春日部東に傾いた流れを食い止めたエース

川越東vs春日部東 | 高校野球ドットコム

1失点完投も涙を呑んだ木下(春日部東)

 試合は終始春日部東がペースを握っていた。それを一人の男が勝ちゲームに変えてみせる。そんな試合であった。

 先発は、川越東・高橋、春日部東・木下で始まった。木下はスリークウォーター気味のフォームからクロスステップで踏み出す。ストレートのスピードこそないが、常にボールを動かしており嵌ると厄介な投手だ。ちなみに、新人戦で花咲徳栄を苦しめたのもこの投手である。

 川越東は初回木下の立ち上がりを攻め一死から2番・大南、3番・駒崎が連続四球で出塁し一死一、二塁とチャンスをもらう。続く吉澤はエンドランがセカンドゴロとなり二死二、三塁とチャンスを広げる。だが、続く高橋の打球は三塁後方ファールグラウンドへの小飛球となる。これをサード阿葉家のダイビングキャッチに阻まれチャンスを逸する。

 一方の春日部東はこのプレーで勢いに乗る。

 川越東は3回表にも一死から1番・福岡がショートへの内野安打を放ち出塁するが、続く大南のバントはフライとなる。

今度はこれをキャッチャー森合にダイビングキャッチで捕られ走者を進められずこの回も無得点に終わる。この試合元々硬かった川越東の選手達はこの攻防で負の連鎖反応が起きる。

 4回表もこの回先頭の吉澤がレフト前ヒットで出塁するが、続く高橋の犠打はピッチャー木下の好フィールディングで送れず後続も倒れ無得点に終わる。何か春日部東が守備で川越東に圧力をかけるような形になっていく。


川越東vs春日部東 | 高校野球ドットコム

チームを勝利に導く好投を見せた高橋佑(川越東)

 6回表にもこの回先頭の大南が四球で出塁するが、続く駒崎の犠打はまたしても失敗に終わる。だが、それでも川越東は続く吉澤がレフト前ヒットで再びチャンスを広げると、二死後6番・鈴木が四球を選び満塁とすると、続く札場が押し出しの四球を選び貴重な1点を先制する。さらに満塁と川越東にとって畳みかける絶好のチャンスであったが、期待の星野はフルカウントからボール球を振り三振に倒れこの回は1点で攻撃を終える。

 その後もゲームの流れは変わらず、川越東は毎回のように塁を賑わすが、春日部東の好守備に合い得点を奪えず、9回表も一死一塁から大南のバントが小フライとなると、今度はピッチャー木下がダイビングキャッチで捕り併殺で攻撃が終了する。結局川越東は攻撃面で最後までリズムを掴めずに試合を終えた。

 そして迎えた9回裏、春日部東はこの回先頭の仲井間が四球で出塁すると、続く阿葉家がきっちりと送り一死二塁で4番・森合と絶好の同点のチャンスを迎える。だが、後続が打ち取られ万事休す。最後まで高橋を捉えられず、1対0で川越東が初の関東大会へ駒を進めた。

 通常こういうゲームになると春日部東同点、逆転をという展開になる。しかもこの試合春日部東は裏攻めだった。非常に有利な展開に事は運ぶのだが、ここに気迫十分の川越東のエースが立ちはだかった。この日の高橋はストレートがシュート回転しており、決して絶好調という状態ではなかったが、それでも、ほとんどコースへの投げ分けるという部分でのコントロールミスはなく、前の試合で春日部共栄を打ち崩した春日部東打線に対し被安打3、11奪三振と満点の投球内容であった。


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力投する高橋佑(川越東)

 春日部東は、再三にわたり見事なプレーをみせ相手にプレッシャーを掛け続けた。木下も粘りのピッチングで川越東打線に最後まで的を絞らせなかった。だが、攻撃陣が最後まで高橋を攻略できなかった。試合内容が素晴らしかっただけに痛恨の敗戦であろう。

 とはいえ、一戦一戦力をつけていき、春日部共栄を倒すなど、まだ秋の時点でここまでの仕上がりを見せた公立高校は今後も他チームにとって脅威となるであろう。木下が計算できるだけに鍵は打線か。4番・森合を中心とし打倒私学へ攻守に一冬越えて逞しさを増した姿を見せて欲しい。

 一方の川越東だが、この試合完全に負けを覚悟したであろう。それぐらい、攻撃面での内容が悪すぎた。だが、救いだったのは、攻撃面で負の連鎖が起きても守備での綻びは一切なかった。そして、何より絶対的なエースがいたことが最後まで精神安定剤のように作用した。

 前の試合5回コールドで試合を終わらせることができたことも今大会ほぼ一人で投げぬいた高橋にとってプラスに働いた。彼には賛辞を送りたい。どんな形でも勝って初の関東大会へ行けたことがこのチームにとって経験値として何よりの財産になるからだ。

 これから戦う関東大会はまたレベルが一段上がる。高橋がある程度打たれることも計算に入れないといけない。それだけに攻撃陣には奮起を促したい。ここはもう一度基本に立ち返り、持ち味である小技を絡めた細かい野球を大舞台で思う存分に発揮してもらいたい。いつまでも高橋におんぶに抱っこではいけない。彼らにはそれができるはずだ。

(文=南英博

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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