大宮西vs県立浦和
好テンポの投手戦、手堅く得点した大宮西が浦和を振り切る
大宮西先発・小原君
新チームが出来て1カ月半から2カ月。新チームでメンバー入りした選手たちにとっては、これからが一番野球を面白いと感じられる時期でもあるし、学んでいくことに対しての吸収力ももっとも高い時期であろう。また、指導者としても、「このチームで何が出来るのか」ということをいろいろ試したりして見たい時期でもあり、それぞれの試行錯誤や思いがチームを育てていく時期でもある。
そんなタイミングで行われる秋季大会は、試合を重ねながらチームが成長していくものだ。
この試合は、今の段階でお互いが夏の間にやってきたことを精いっぱいこの場で示していこうという姿勢が溢れ出ていて、見ていても非常に好感度の高い試合だった。試合そのものも、きびきびとした展開で好ゲームとなった。
大宮西は少し足が悪いという小原君がエースナンバーを得て先発。自分で工夫してあみ出したトルネード気味のフォームで8回途中まで踏ん張った。大きく足を上げて、腰を回転させる割には、制球にブレがないのは、しっかりと投げ込みをやってきたという証拠であろう。鈴木久幹監督も、「本当に真面目で、よく努力する子なので、頑張っているのが嬉しいですよ」と、評価は高い。決してスピードや球威があるというのではないが、丁寧な投球だった。
また、県立浦和の山田君も丁寧に投げる左腕だった。1球1球を考えながら、どう投げて行くのがいいのかということを試しているかのようでもあった。試合は練習の成果の発表の場と言うが、そういう意味では、山田君の投球は、まさに夏の間にやってきたことをここで発表しているというような感じだった。
そんな二人の投手戦という展開の試合。どちらがどういう形で先制するのかなと思っていたが、大宮西が4回、1番からの好打順で高田君、中島君が連続安打しバントで二三塁とすると、4番長岡君の右犠飛で三走を帰した。
県立浦和4番・吉川君
しかし、その後はまた淡々とした投手戦が続いた。大宮西としても、いくら小原君が好投しているとはいえ、1点だけではあまりにも心細い。それだけに、追加点が欲しいところだったのだが8回、ようやく追加点が入った。
この回は9番小原君からだったが、三遊間を破る安打で出塁すると、暴投で二進。内野ゴロの間に三塁へ進んで1死三塁。ここで、中島君が左翼へ犠牲飛球。小原君が必死で走って生還して2点目。
ところが、不思議なもので、その裏に県立浦和も粘りを見せて、横田君の安打とボークなどで2死二塁としたところで、4番吉川君が気持ちで運んだ右前打で二塁から横田君が生還。再び1点差となった。このあたりの、県立浦和の粘りは見事なものだった。県内一の進学校でもあり、宇宙飛行士の若田光一氏も県立浦和高校野球部OBである。そんな、日本の将来を担うであろう可能性を秘めた生徒たちの多い学校である。簡単には引き下がらないという気迫は、野球にも表れていたということであろうか。
こうして、動きだした試合は、9回に大宮西がさらに突き放して何とか留めを刺した。
この回は、1死から高野君が四球で出ると、代打吉藤君が叩きつける打球で三塁手の頭上を破り一二塁。ここで、県立浦和ベンチは山田君から小野寺君につないだが、エンドランで内野ゴロの併殺を逃れて2死ながら二三塁としたところで、8番羽田君が右前打して2者が帰った。
苦しい展開を何とかものにした鈴木監督は、
「今度のチームは、決め手になる選手がいないので、こんな感じなんですけれども、その分、鍛え甲斐はあるのかなとも思っています。試合中に、こんなに声を張り上げて叫んでいたのも久しぶりでしたよ」
と、苦笑しながらも、まずは一つ勝ったことで、これを選手たちの自信として、さらなる成長につなげていこうという思いでもあった。
(文=手束 仁)