早大学院vs都立南多摩中等教育
先発した勝本君(早大学院)
9月の最初の週末、関東各地でもほぼ一斉に秋季大会が始まった。東京都では、10月からの都大会進出を目指す、第一次ブロック予選が始まった。各校グラウンドで開催されるというケースが多いのだが、第20ブロックは、都立校としては有数のグラウンドを有する片倉高校が会場となっている。
2010(平成22)年に南多摩高校から、中高一貫の中等教育学校となった都立南多摩中等教育は、新チームは総勢10人という小世帯。中高一貫校として進学重点校とすると、どうしても部活動は厳しくなるのが現実だが、南多摩もそれを逃れられないようだ。それでも、今の状況で一生懸命にやっていこうという姿勢を示す部員たちが頑張った。
しかし、早稲田大の直系附属校として人気もあり、層も厚い早大学院に小刻みに得点を重ねられて、ほぼワンサイドの展開となってしまった。
旧チームからセンターラインを中心にチームの核として何人かが残った早大学院は充実している。この日は、エース嵯峨君を温存して背番号3の勝本君が先発したが、野手投げ的な部分は否めないものの、地肩の強さもあって力でぐいぐいと投げ切った。終わってみたら、7回を投げて6安打1失点という内容は、上々だろう。
そして、攻撃陣は初回に2死から失策で出た走者を小菅君が三塁打で帰したのにはじまり、2回にも失策絡みで得た好機に9番高橋君がタイムリー打して2点を追加。3、4、5回にも小刻みに1点を加えていったが、5回は2死一三塁から重盗で得点するなど、機動力でかき回せるというところも示した。
三塁打を放った金子君(早大学院)
結局、金子君、勝本君3本の三塁打を含む毎回の11安打で毎回得点の9点。危なげのないところを示した。木田茂監督も、「このチームの選手たちは、試合を多くこなしてきていますから、試合慣れはしていますね。何人か故障者もいて必ずしもベストではないのですけれども、こうして崩れないで戦えましたからね」と、新チームの公式戦初戦としては満足していた。
代表決定戦を見据えて、エースの嵯峨君や1年生でスピードボールがあり期待の高い柴田君を使わないで戦えたことも大きかったようだ。近年は、早稲田実に負けるなとばかり、選手獲得枠もある程度は広げてきているという。ただ、この夏は軟式野球部が全国大会に出場したということもあって、有望中学生がむしろ軟式へ流れるという現実もあるようだ。「この前も、中学生が練習を見に来たのですけれども、よく聞いたら軟式を見に来ていたんですよ。軟式だったら、全国へ行ける可能性があるぞ…、ということなんですよね」と、木田監督は苦笑する。
早稲田大直系の早大学院としては、卒業後は大学でもプレーできる選手を輩出していくことも大事な使命の一つだというが、徐々にそういう選手も育ちつつあるという。それだけに、大会でも、もう一つ大きくブレイクしたいというのが本音であろう。
この秋は、木田監督としても、そんな手ごたえも感じているのではないだろうか。もっとも、現実には軟式太の練習場の配分の問題なども抱えているようである。
それぞれが、それぞれの悩みを抱えつつ取り組んでいく。それもまた、高校野球なのである。
(文=手束仁)