Interview

第96回全国高校野球選手権大会 この球児たちのプレーを見逃すな! 投手編

2014.08.04

 全国大会の魅力というのは、前評判がさほど高くはなかった選手が突如として観客を虜にし、主役の座を掴むところである。今年は安樂 智大済美)、高橋 光成前橋育英)が注目されたが、予選で敗れた。だが今年も、彼らに負けない魅力を持った逸材が多い。この夏の主役になるであろう選手を今回は紹介していきたい。

最注目は最速150キロ右腕・松本裕樹(盛岡大附)


左から吉田 凌(東海大相模)・松本 裕樹(盛岡大附)

 ファンが真っ先に注目するのは完成度の高い本格派投手である。そういう意味で今年注目を浴びそうなのが、右投手では松本 裕樹(3年・盛岡大附)、佐野 皓大(3年・大分)、吉田 凌(2年・東海大相模)、石川 直也(3年・山形中央)、飯塚 悟史(3年・日本文理)、岩下 大輝(3年・星稜)、岸 潤一郎(3年・明徳義塾)の7人。左投手では森田 駿哉(3年・富山商)、小笠原 慎之介(2年・東海大相模)の2人になるだろう。

 松本はこの夏でも149キロを計測したが、注目はスピードよりも器用さにある。カーブ、スライダー、フォーク、チェンジアップなど様々な変化球を操る。いずれもしっかりと変化出来る精度の高い変化球で、高低、緩急、コーナーワークをうまく使い分けることが出来る。ただ、時折淡白な投球になりやすく、高めに集まり、安打を打たれることが多い。ムラを小さくすれば、勝てる投手になることは間違いない。

 岸は夏の連投に備え、高知大会4試合を全て投げ抜いた。29イニングを投げ、32奪三振と三振が取れる右腕へ成長。140キロ前半だが、球速表示以上の勢いを感じるストレートと、キレのあるスライダー、落差のあるフォーク、シンカー、カットボールなど多彩な変化球を投げ分け、完成度の高い投球を披露。この夏はエースとして頂点を狙う。

 
飯塚は昨夏と比べて、制球力が格段に成長。今年の選抜では豊川に延長戦の末、敗れたとはいえ、140キロ前半の速球、キレのある変化球を内外角へ投げ分けた完成度の高い投球はそれまでのイメージを一変させる快投であった。日本文理はサヨナラ本塁打を決めたが、9回までサヨナラのチャンスを作れたのは飯塚が中盤から終盤へかけて気持ちを切らさず、粘り強い投球が出来ていたからだろう。技術的だけではなく、精神的にも成長を大きく見せた飯塚。なんと初戦では次に紹介する佐野擁する大分と対戦することなった。

 佐野は春季九州大会で最速150キロを計測した右腕で、速球とスライダーのコンビネーションで圧倒する選手だ。ただここぞというときのストレートは目に留まるものがあるが、コンビネーションが単調になることが多く、球速の割に被安打が多いのが懸念材料。特に日本文理打線はそういった球を見逃さないだけに、球の速さよりも、投手としての幅が広がっているかに注目していきたい。ドラフト候補同士の対決は2日目の第3試合。とても見応えのあるゲームになることは間違いない。

[page_break:松井裕樹が出場した時とダブる吉田凌(東海大相模)]

松井裕樹が出場した時とダブる吉田凌(東海大相模)

 石川大会で、9回裏に8点差を覆す大逆転勝利を収めた星稜のエース・岩下 大輝は、最速145キロの直球を武器に、キレのあるスライダー、カーブを投げ分ける完成度の高い本格派右腕だ。一発のある長打力も魅力で、投打で注目したい。

 山形中央石川 直也は190センチから振り下ろす角度ある140キロ台の直球、縦の変化を得意にする投手。スペックだけ見ていけば、ドラフト上位候補だ。恵まれた才能を甲子園の舞台で発揮することができるのか、注目していきたい。

 そして東海大相模吉田 凌の最大の武器は縦に鋭く落ちるスライダー。昨夏の準決勝では1年生ながら最速149キロを計測したが、横浜打線に打ち込まれた。今回リベンジを果たすために縦に鋭く落ちるスライダーを習得。もともと、縦振りで振り下ろすメカニズムをしていた吉田にとって縦スライダーは最適の変化球だろう。
 神奈川大会準決勝の横浜戦(試合レポート)ではリリーフ登板し、そして決勝の向上戦(試合レポート)で大会記録となる20奪三振を奪った。神奈川の2年生投手が奪三振記録を引っ提げて甲子園出場を決めたのは、松井 裕樹桐光学園-東北楽天ゴールデンイーグルス)が2年夏に甲子園出場した時と重なるものがあり、もし向上戦のような快投を見せれば、その熱が一気にヒートアップするかもしれない。

 吉田だけではなく、今年の東海大相模の投手陣は全国トップクラスの質を誇る。エース・青島 凌也(3年)は準決勝で、横浜打線を6回2失点に抑える好投で、勝利に貢献(試合レポート)。強打者に動じない度胸の強さと打者に狙いどころを絞らせない配球が光る。

 さらに青島と同学年の佐藤 雄偉知(3年)は、ポテンシャル自体は今年の高校生の中でもトップクラスで、190センチの長身から振り下ろす最速149キロの速球がハマったときは手が出ない。甲子園で恵まれたポテンシャルを発揮することが出来れば、一気に甲子園の主役になれそうな投手である。そして小笠原 慎之介は1年春から140キロ台の速球を計測していて評判だった大型左腕。この夏、最速146キロを計測。制球力も安定していて、順調に成長を遂げている。

  富山商のエース・森田 駿哉(3年)は180センチを超える長身左腕で、球速は140キロ前後、キレのあるスライダー、チェンジアップを投げ分け、いずれもストライクを取れる制球力の高さがある。フィールディング、クイックの速さも高レベルで、全てにおいて優れた左腕だ。さらにボールに凄みが出てくると面白い選手だ。

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神戸国際大附・黒田、岩国・柳川なども注目

黒田 達也(神戸国際大附)

 彼らに続いて、注目されそうなのが神戸国際大附黒田 達也(3年)。兵庫大会では48.2回を投げて67奪三振。奪三振率で換算すると12.51と驚異的な確率である。185センチの長身から振り下ろす140キロ前後の直球と、キレのあるスライダーをコンビネーションに奪三振を量産してきた。選抜出場に続き2季連続出場となった岩国のエース・柳川 健大(3年)は、選抜に比べて直球の割合が多くなったので、直球中心に磨いてきたことが伺える。

3年ぶり出場を決めた開星のエース・恩田 和季(3年)は最速140キロのストレートとキレのあるスライダーが武器だ。昨年から緩急に磨きをかけて投球の幅を広げたが、さらに成長した姿を見せることができるか。

 また甲子園初出場を決めた角館のエース・相馬 和輝は制球力が高く、コーナーワークが優れた本格派右腕。選抜優勝(試合レポート)の龍谷大平安の右のエース・中田 竜次(3年)は140キロ近い速球を強気で押す投手だ。

 選抜ベスト8(試合レポート)の沖縄尚学のエース・山城 大智(3年)は小川 泰弘(東京ヤクルト)のような独特の足上げから140キロ前後の速球、落差のあるカーブを武器に実に粘っこい投球を見せる投手だ。さらに常時140キロ台のストレートを投げる久保 柊人(3年)にも注目してみたい。

 東海大四のエース・西嶋 亮太(3年)は南北海道大会で7試合に登板し、防御率0.93と安定感抜群の投球を披露。球速は130キロ前半だが、縦に割れるようなカーブは絶品。玄人好みの右腕といっていいだろう。

 左腕では、テンポの良い投球・緩急自在な投球をウリにする金子 大地春日部共栄)がいる。また、3年ぶり出場の関西のエース左腕・田中 雅之(3年)は130キロ後半の速球を強気で押す左腕だ。

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藤嶋(東邦)、原田(東海大望洋)など有望な1、2年生右腕たち

 甲子園で注目を浴びるのは、3年生だけではない。1、2年生もこの夏で来年度、再来年度のドラフト候補として注目を浴びるチャンスである。先に吉田 凌小笠原 慎之介東海大相模のコンビを取り上げたがそれ以外でも面白い投手がいる。

 まず脚光を浴びそうなのが6年ぶり甲子園出場を決めた東邦の1年生右腕・藤嶋 健人だろう。東三河ボーイズ出身で、すぐにベンチ入り。豊川戦(試合レポート)では常時140キロ台のストレートを武器に押していき、11奪三振完投勝利。さらに決勝の栄徳戦でも、最速144キロを計測したストレートを武器に2失点完投勝利で、甲子園出場に導いた。

 藤嶋が優れているのは速球だけではなく、内外角へ投げ分けるコントロールの良さ、内角へ徹底的に突く度胸の良さ、始動からフィニッシュまで流れるような完成度の高いフォーム、炎天下の中、投げ切ってしまう強靭なスタミナ等、バランスが揃った投手であるということだ。バンビ二世と呼ばれる1年生右腕は甲子園でも前評判通りの投球を見せることが出来るのか。

原田 泰成(東海大望洋)

 その他最速143キロの速球を武器にする原田 泰成(2年・東海大望洋)、選抜優勝の龍谷大平安からは、独特の足上げから角度ある速球を投げ込む高橋 奎二(2年)、ハマったときは140キロ近い速球を見せる元氏 玲仁(2年)の左腕コンビの活躍にも注目だ。

 強力打線・近江のエース・小川 良憲(2年)は最速143キロを誇る右の本格派。また毎年好投手を輩出する敦賀気比のエース・平沼 翔太(2年)は最速142キロを誇る右の本格派だ。

 また、1年生ながらベンチ入りし、徳島大会決勝戦(試合レポート)で最速138キロを計測した大型右腕・中山 晶量鳴門)も見逃せない。

 今年は打力が高いチームが多く、夏にかけてさらに調子を上げており、ベストピッチングするのは非常に難しくなると思われる。そういう環境下だからこそなおさら、投手の実力が問われる。真夏の甲子園で、どんな投手が主役になるか注目をしていきたい。

(文=河嶋宗一

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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