試合レポート

樹徳vs前橋育英

2014.04.13

樹徳が昨夏の全国王者・前橋育英に7回コールド勝ち

樹徳vs前橋育英 | 高校野球ドットコム

前橋育英・喜多川省吾投手

 県大会の組み合わせが決まったときから、群馬県だけではなく、広く高校野球ファンや関係者の間で話題になったくらいの注目カードである。
 昨夏に初出場で全国制覇を果たして一躍強豪の仲間入りを果たした前橋育英。その主戦でもあった、高橋光成君(3年)が残ったということで、今年も注目される存在となっている。ただ、昨秋は甲子園から帰って間もないということもあり、いくらか準備不足は否めず、秋季県大会は初戦敗退だった。

 対するは、その秋季大会でベスト4に進出して、打線は県内一の破壊力と評判がいいのが樹徳だ。

 前橋育英の先発マウンドは背番号7の喜多川省吾君(3年)。春先の故障が完全に癒えていない高橋君は登板回避となった。荒井直樹監督も、「春は間に合わないかなと思っていました」と、無理はさせない方針である。

 また、樹徳の井達誠監督も、「高橋君の先発はないだろうなと思っていました」と読んでいた。そうした中での試合である。喜多川君対樹徳打線という構図になるのではないかと思われた。

 序盤は、お互いが様子を見あうような形で流れて行った。3回を終わって、樹徳は四球こそ選んでいたものの無安打。2安打を放っていた前橋育英がいくらか押し気味かなという展開だった。

 ところが4回、樹徳は一死から注目の3番野平大樹君が四球で出塁。
好打者の野平君に対して、喜多川君はやや意識しすぎというところもあったのかもしれない。続く金井駿介君が巧みに左中間を破って樹徳に先制点が入った。金井君は一見プルヒッターのようだが、巧みなバットコントロールで左右へ打球を持っていかれる好打者だ。さらに、5番鈴木利至規君もレフト頭上を破る二塁打で2点目。四球後、7番佐伯駿介君もレフトオーバーの二塁打を放ち、この回は3本の二塁打でたちまち3点が入った。


樹徳vs前橋育英 | 高校野球ドットコム

満塁本塁打の樹徳・鈴木利至規

 これで、試合の主導権は樹徳となったが、その勢いは4回も続いた。
内野安打とバントヒット、バント失策などで無死満塁となった後、鈴木利君がフルカウントからファウルで粘った末の8球目。風にも乗った感じはあったが、スライダーにタイミングのあった打球は、レフトスタンドにそのまま入って満塁本塁打となった。

 このリードで、樹徳ホジャティ博和君も楽に投げられていた。左腕から、独得の腕の動きで投げられてくるのだが、肩の筋肉が柔らかく、可動域が広く、打者にとっては非常に打ちづらいという印象だ。大きなカーブが特徴だが、一旦浮き上がるようになりながら曲がり落ちてくる。こういう投げ方で力まずスイスイと来られると、術中にハマってしまうという感じになりそうだ。結局、7イニングを5安打で完封した。

 樹徳にとっては、あまりにも思惑通り、そして会心の勝利だった。
井達監督は、「ちょっと、出来過ぎかもしれませんね」と言いつつも、「打線はある程度は打てるのではないかと思っていました。左の二人(3番野平君、4番金井駿君)の後に、ちょっとホッとしたところで鈴木を置いてありますが、それが今日は上手く機能してくれました。実は、一番パンチ力があるんですよ」と、イメージ通りの展開だったようだ。


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樹徳・ホジャティ博和投手

 また、ホジャティ君に関しても、「落ちついてよく投げてくれましたね。走者を出しながらも、抑えて行くというのが持ち味でもありますから」と、投打にこの日は思い通りになっていったようだ。

 試合後、負けても多くの取材陣に囲まれていた荒井監督は、「前のチームとは違うチームですから…、周囲の見方はどうかはわかりませんけれども、プレッシャーはなかったと思います。また、一番下から這い上がっていくようにしますから、叩くだけ叩いてください。それもまた、バネになって励みになりますから」と、秋に続いての県大会初戦敗退ながらも、最後の夏へ向けてのシナリオを、修正しながらもいい方向へ作り直していこうという意識である。

 前橋育英の昨夏の快挙で、間違いなく群馬県勢の意識も上がっているし、質そのものも高くなってきているようだ。全体から、そんな印象は感じられた。

(文=手束仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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