八戸学院光星vs東陵
4安打5打点の北條裕之(八戸学院光星)
東北王者を懸けた勝負の一戦!
1番打者のバットが流れを決めた!
東北チャンピオンを懸けた決勝。勝利への流れを手繰り寄せたのは、この男のバットだった。
八戸学院光星の1番打者・北條裕之(2年)。
今大会4試合全てで先攻。プレーボールを打席で迎える。1回、東陵のエース・佐藤洸雅(1年)の4球目を叩くと、打球はレフト線へ。北條は一気に加速して二塁へ進んだ。「自分が先頭打者で塁に出れば、ホームに還ってこられる」という信念通り、4試合全てで初回の第1打席をヒット。1番の役割をこの決勝でも発揮すると、犠打で三塁に進んで、3番深江大晟(2年)のセンターフライで本塁へ還ってきた。
北條の一打からの速攻。前日の準決勝では北條がヒットを放ちながら得点できず、その裏に先取点を許す苦しい流れになっただけに、この決勝では1回に得点することにこだわった。結果的に勝負を決する流れは、この1回でできていたようにも感じる。
これで「楽な気持ちになった」と話したのが、今大会初登板となった先発の呉屋開斗(1年)。1回裏のマウンドに、気持ち良さそうな表情で向かった。
八戸学院光星は2回にも先頭の5番森山大樹(2年)が四球で出塁すると、犠打で二塁に進んだ後に、7番中崎寿希也(1年)がセンターへタイムリー。さらにチャンスを繋げて、1番北條が、今度はタイムリーを放って先発の呉屋に援護点を増やした。
北條のバットはその後も手がつけられず、4回には2本目のタイムリー、そして6回の第4打席では3ランと4安打5打点と大活躍でチームの勝利に貢献した。
「兄の北條史也(現・阪神)と比較されることもありますが、彼はホームランバッターではなくアベレージヒッター」と弟・裕之の長所を話す仲井宗基監督。その指揮官が1番に起用する意味を、今大会は全試合で実践して見せた。
この後は11月の明治神宮大会。その先には夢の甲子園出場の可能性がある。
甲子園で4本塁打を放ち、明治神宮大会でも満塁弾を放った兄のインパクトは強烈だ。だが弟は「まだまだ全然かなわない」と話しながらも、「いつかは兄を越えられるようになりたい」とこれから先の舞台での飛躍を誓った。
優勝旗を受け取る千葉諒主将
大量リードに楽な気持ちだったという左腕・呉屋のピッチングは、「出来過ぎ」と仲井監督も驚くほど。6回を投げて3安打無失点と、準決勝まで勢いがあった東陵打線を抑えた。
「相手打線の上位1番から3番が左打者。足もあるので」とサウスポーの先発理由を明かした指揮官。その期待に十分応えた。
「後ろに良いピッチャーがたくさんいるので、思い切って投げられました」と笑顔を見せた呉屋。ベンチ入り唯一のサウスポーということもあり、この後の明治神宮大会でも起用の可能性は十分にあるだろう。
7回以降は八木彬(1年)、小川佳斗(2年)、エースナンバーの佐藤駿(2年)と1イニングずつ繋いだ仲井監督。準決勝で中川優(1年)が完投しただけに、他の投手陣は期するものが強かったようだ。
打線も3試合で相手投手を攻略した。
「県大会決勝で青森山田さんに敗れてから、もう1回強いチームを作ろう」(仲井監督)とチームを奮い立たせてきたことが、2年ぶりの東北チャンピオンという最高の結果に繋がった。
残念ながら初優勝がならなかった東陵。準決勝で力投したエースの佐藤が連投で先発したが、初回の北條の一打で完全に流れを失った。
しかし結果は完敗だが、光も見えた。それが7回の攻撃。相手が右投手に代わって、東陵のスタンドからは、「右は得意だろ」という声が飛んだ。
その言葉通り、打ちあぐんでいた打線が繋がる。先頭の6番白石雅嗣(1年)が二塁打、続く7番柴田優祐(2年)が三塁打を放って1点を返した。その後、内野ゴロの間にもう1点。
11対0からもあきらめず、粘った姿勢は、これまで苦しい試合を競り勝って成長してきた賜物だろう。準々決勝(角館戦)のように、『野球は最後まで何が起こるかわからない』ということも体感した。
13対2というスコアではない、中身の濃さは、来年への貴重な財産となるゲームだったと言えるだろう。
(文=編集部)