試合レポート

修徳vs二松学舎大附

2013.07.27

お互いの思いと因縁を背負っての決勝対決、修徳が9年ぶりに夏を制す

 10度目の東東京大会の決勝進出となった二松学舎、過去9度はいずれも涙をのんできて、まだ夏の甲子園には届いていない。
 9年前の決勝進出時は、相手も同じ修徳に破れている。二松学舎グラウンドの監督室には、準優勝のペナントがいくつも掲げられている。
 96年に就任した市原勝人監督は、98年夏以来4度決勝敗退の苦汁を舐めている。監督室のペナントを見ながら、
「あの時は、もう何年かすれば(甲子園に)届くと思っていたんですけれども、そこから思った以上に苦しまされました」と語ってくれたこともあった。とは言うものの、市原監督としては02年春、04年春は甲子園出場を果たしている。

 一方、修徳はその9年前以降、夏の甲子園からは遠ざかっている。3年前の10年には決勝で、あと一歩まで迫りながらも涙を呑んでいる。阿保暢彦監督はその夏以降に就任して、これまでベスト8が一つの壁になっていたのだが、この夏は一気にその壁を破ってここまで来た。
 そうした、それぞれの因縁と思いを背負っての両校の対決となった。

 試合は最初から激しく動いた。初回の二松学舎は先頭の上田君が安打で出ると、バントで進め、竹原君も右前打でつなぎ一、三塁。4番行方君四球で一死満塁。
 
ここで、小峯君はいい当たりだったが、遊撃手小澤君の好守もあって併殺で修徳がピンチを切り抜ける。そしてその裏、修徳は二死三塁から4番山下君が左中間二塁打して先制すると、小林君も左越二塁打。さらに、根本君、保科君と続いてこの回4連打で3点。

 2回の攻防も激しく、二松学舎は四死球などで満塁とするが、結局押し出しの1点を返すのみに留まると、その裏の修徳は山下君の中越三塁打など4長打でさらに3点。そして、3回からは監督は思い切って、先発西林君を下げて、この大会ではリリーフとして帝京戦でも活躍した遊佐君を投入。
 「場面を見て、早い段階でも遊佐しかないというつもりでした」と言うように、迷いのない起用だった。
 二松学舎はその遊佐君に対しても、行方君と小峯君の連打に失策も絡み、ここで押し出しがあり追加したが、なおも満塁。しかし、ここで代打関君の一打が一塁ライナーで併殺となった。ここが抜けていたら試合展開としてはまったく別のものになっていただろうが、これで二松学舎の流れが止まってしまった。


 

 逆に修徳は、4回にも下位打線の3連打などで2点を追加した。こうして、激しい点の取り合いで進んでいった試合は、4回を終わってスコアボードに入った「0」は、1回表のみということになってしまった。ある程度の点の取り合いは予想はされていたのであろうが、二松学舎としては頼りの先発左腕大貫君が修徳打線に掴まってしまい、長打攻勢を浴びて2回途中までしか持たなかったことが、市原監督としても誤算だった。

 それでも、二松学舎は6回に、大木君、竹原君、行方君と三連打し、さらに小峯君も右線へ二塁打してこの回3点で3点差とした。
 これで、試合そのものも分からなくなってきた。3回途中に一塁からリリーフした行方君だったが、ここまでの乱戦の流れながら、5回から7回までを無安打に抑えていたのは立派だった。
 次の動きがどうなるかということが注目されたが、8回ついに力尽きるように2四球と失策絡みで、4点が入った。これで、さすがに二松学舎も及ばなかった。

 9年ぶり5回目の甲子園出場を決めた修徳。阿保監督は試合後、
「選手が1試合、1試合成長していってくれて、感謝しています。相手がかなり打つチームなので、何点取っていても安心できませんでした」と、試合を振り返りつつ、選手たちを称えていた。

 主将の飯野君は、
「自分たちはノーシードだったですけれど1戦1戦、戦いながら強くなっていかれたと思います。スーパースターはいませんけれど、甲子園でも自分たちの野球をしていきたいと思います」と、甲子園へ向けての思いも語っていた。

(文:手束仁)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.13

大阪桐蔭、山梨学院、慶應義塾…強豪校・名門校の昨年度卒業生はどの進路を歩んだのか?【卒業生進路一覧】

2024.05.13

【仙台六大学】“投手王国”にまたひとり…リーグ戦初登板初先発の東北福祉大・柴田由庵が史上15人目ノーヒットノーラン達成!

2024.05.14

【2024年春季地区大会最新状況】近畿大会、北信越大会、全道大会で出場校が決まる

2024.05.13

【首都大学】14季ぶりリーグ戦優勝の帝京大のエース左腕・榮 龍騰は「絶対にマウンドを譲りたくなかった」ストレートを軸にした投球で前回対戦の悔しさ晴らす11奪三振快投!

2024.05.08

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.09

プロスカウトは190センチ超の大型投手、遊撃手、150キロ超右腕に熱視線!この春、浮上した逸材は?【ドラフト候補リスト・春季大会最新版】

2024.05.09

【熊本】九州学院は城北と文徳の勝者と対戦<NHK旗組み合わせ>

2024.05.09

「指導者はどこにいる?」九里学園(山形)が 選手主体の”考える野球”で成果着々

2024.04.21

【愛知】愛工大名電が東邦に敗れ、夏ノーシードに!シード校が決定<春季大会>

2024.04.22

【春季愛知県大会】中部大春日丘がビッグイニングで流れを引き寄せ、豊橋中央を退ける

2024.04.29

【福島】東日本国際大昌平、磐城、会津北嶺、会津学鳳が県大会切符<春季県大会支部予選>

2024.04.22

【鳥取】昨年秋と同じく、米子松蔭と鳥取城北が決勝へ<春季県大会>

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?