宮崎日本大学高等学校 甲斐 翼 投手
第123回 宮崎日大 甲斐 翼 選手2013年01月02日
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188センチの長身から角度ある直球、独特の曲がりをする縦の変化球で三振の山を築く大型左腕・甲斐翼。秋の九州大会ではベスト8進出。初戦の12奪三振、2回戦の完封ゲームなど、この秋、九州地区でも注目を集めていた投手の一人だ。
今回は、オフシーズンの課題から、先輩・武田翔太(福岡ソフトバンク)との思い出、今後の目標などを存分に語っていただきました。
秋季大会で開花!噂のフォークアップとは?
宮崎日大 甲斐翼投手
――甲斐選手は、今年の夏も2試合に登板。夏の大会で投げて、どんな印象を受けましたか?
甲斐翼(以下「甲斐」) 他の大会に比べて重みが違いました。メンタル面でも重圧を感じました。先輩たちと甲子園に行けなかったことが、悔いが残っています。
――新チームになって、今年の秋は県大会では準優勝。九州大会は2勝を挙げましたね。
甲斐 九州大会では初めて3連投を経験したんですけど、体力のなさを実感しました。
初戦の佐世保実戦の時は本当に緊張していたんですが、それでも12奪三振を取ることが出来たのは良かったです。
(103球で完封した)宜野座戦では、逆にリラックスして投げられることが出来ました。球速はそこまでなかったんですけど、力を抜いて投げた方が、力一杯投げるよりも、キレが上がっていくことが分かって、力を抜いて投げることが大事なんだと実感できました。
――甲斐投手が秋の大会で投げていたフォークアップというのは?
甲斐 フォークアップは、秋の大会の前に覚えました。新人戦の大会に足を怪我して、秋の大会の2週間前まで投げられなかった。その時に、何か変化球を覚えようと考えたんです。
「まだまだ球種を増やしていきたい」
僕自身、落ちる球がないのが課題だったので、本当はフォークを覚えようと思ったんですけど、不器用なところがあって、なかなか曲がらなくて、困っていました。それで、もう自分で考えようと研究した結果、フォークアップにたどりつきました。
フォーク、チェンジアップの握りをしながら、たどりついたんですが、握り方は非公開です(笑)
――まだまだ球種は増やす予定ですか?
甲斐 まだまだ覚えていきたいですね。スライダーも2種類覚えて、カーブも、スローカーブも覚えたい。緩急を使うことは大事ですよね。
中学時代までは速球だけ磨いていけばいいと思っていたんですけど、高校はそう簡単にはいかないので、変化球をもっと覚えようと思いました。上に行くなら、やっぱり変化球。(先輩の)武田さん(=翔太・福岡ソフトバンク)のように多彩な変化球を操れるようにしたいです。
先輩・武田翔太から受けた影響
――その武田投手が在学中、どんなアドバイスをもらっていましたか?
甲斐 武田さんからは、10割の力で投げるよりも、6~7割で投げるほういい。力むよりリラックスして投げろといわれました。トレーニング方法から、試合中の考え方など、とても参考になるアドバイスをたくさんいただきました。
また、武田さんの遠投を初めて見た時は、こんなすごい人がいるんだ!と驚かされました。武田さんの遠投は、ライナー性の軌道なんですよね。
他の選手の場合は大きな山なりですから、ラインからバックスクリーンまでの武田さんの低い軌道には驚かされました。今年1年目の活躍も、すごかったですし、僕も武田さんに追い付けるように頑張っていきたいですね。
「10割よりも6〜7割で投げる気持ち」
――武田投手と甲斐投手は、ピッチャーとしてのタイプも少し違うように感じます。今は変化球も磨いている甲斐投手ですが、やはり長身から投げ下ろす真っ直ぐは、ひとつの武器ですよね
甲斐 そうですね。自分の場合は真っ直ぐが原点なので、三振も狙えるて、変化球で打たせて取れる。そんな器用な投手になりたいと思っています。
真っ直ぐについては、伸びと重みがある球を求めていますね。そのためにはスクワットなど筋トレをして足腰をもっと鍛えていきたいです。
――体重は入学時から、どれくらい増えているのですか?
甲斐 入学時は68キロ。でも今はまだ74キロなので、85キロまで上げることが目標です。この冬で10キロ以上は上げていきたいですね。
食事に関しては、入学した時はそれほど食べる意識はなかったんですけど、武田さんに『たくさん食べないと馬力がつかないぞ』と言われて、意識して食べるようになりました。それからはご飯茶碗五杯~六杯分の量を食べていますね。
――筋力アップのためのトレーニングはどんなことされているのですか?
甲斐 主に腹筋、背筋を鍛えています。メディシンボールを使う時もあるんですけど、ほとんど器具を使わないメニューですね。あと秋前まで足の怪我をして、走り込みが出来なかったので、この冬、走り込むという課題を持って、どんどん走っていきたいと思います。
――“走る”といえば、甲斐投手は小学校の時、陸上クラブで全国大会出場も経験しているそうですね。
甲斐 そうなんです。当時やっていた種目は400メートルと100メートル。兄は陸上短距離で県総体2冠を達成したり、家族全員が陸上をやっていたので、僕もやっていました。陸上の経験によって、身体のバランスを整えることができて、野球につながっている部分もありますね。
[page_break:ダイナミックなフォームで、高い制球力を生み出した理由]ダイナミックなフォームで、高い制球力を生み出した理由
様々なアドバイスを送る宮崎日大・河辺寿樹監督
――甲斐投手といえば、真上まで右手を振り上げるダイナミックなフォームも特徴ですが、グラブの使い方ではどんなことを意識しているのでしょうか?
甲斐 自分は普通の投手と違って、右手を思い切って上げるフォームですよね。普通は、捕手方向へ平行に向けていくんですけど、自分の場合は上に上げる。これは、高校に入ってから意識しました。反動をつけることになって球威が上がったので、躍動感のあるフォームは意識しています。
――プレートの使い方も工夫していることはありますか?
甲斐 そうですね、僕の場合は、監督さんから『お前のストレートはナチュラルストレートになるから三塁側に立て』と教わり、三塁側に立っています。左投手だったらプレート側の左側(一塁側)に立つんですけど、自分は右投手と同じように三塁側に立って、自分のストレートの軌道を生かしていますね。
――なるほど、そういった工夫もされているのですね。甲斐投手は内外角をしっかり投げ分けられる投手という印象がありますが。
甲斐 元々は得意ではなかったんです。秋季県大会では、内を突けなくて、打たれることがあったので、キャッチャーと相談して、内を突くための練習を重ねて、九州大会ではそれが出来るようになりました。
単純なことですけど、『内を絶対に投げたい』という気持ちを持つが大事でした。自分はこのコースに投げるんだ!という意識を持ったら、僕も投げられるようになりましたから。
実際の試合でも怖がって甘いコースへ投げるよりも、攻めて行った気持ちがピッチングに出たほうがいいと切り替えられるようになりました。
――他にも、コントロールを磨くために、どんな練習をしていたのでしょうか?
甲斐 普通、キャッチャーは投球練習で、ボールを捕ったら投げ返してくれるじゃないですか。でも、僕たちはコントロールをつけるために、キャッチャーが構えたところへ投げることができなかったら、キャッチャーはそのボールを転がす。それを自分がマウンドから降りて捕りに行くという練習をしました。
他のチームがやっていたのを見て、それを真似して練習を始めたら、良くなったかなと思います。100球投げて、50球コントロールミスしたら、50回捕りに行かないといけないので、本当に疲れます(笑)でもそれぐらいの覚悟がないと上手くなっていかないので、やり抜きました。
今後の目標とは…
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―では最後に、今オフシーズン、そして今後の目標を教えてください。
甲斐 自分がこの冬に、求めていることは、体重・スピード・コントロールの3つです。まだ線が細いので、太くするためにもっとご飯を食べて、トレーニングをして、身体を大きくしたいですね。夏に全国制覇するためには、まだまだ足りないことがたくさんあるので、しっかりとやっていきたいと思います。
今後は、日本一と呼ばれる投手になりたいですね!
甲斐投手、ありがとうございました。高校生活最後の一年、さらなる飛躍の年になりますように!