試合レポート

大阪桐蔭vs桐光学園

2012.10.03

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大阪桐蔭vs桐光学園 | 高校野球ドットコム

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4回3安打、自己最速147キロ計時も102球7四球2暴投6失点(自責4)と大乱調だった松井(桐光学園)

大阪桐蔭、3冠支えた「徹底」と、「0番手」思考

現世代の高校野球を牽引した大阪桐蔭右腕・藤浪晋太郎(3年)。次世代の高校野球を背負う存在として期待される桐光学園左腕・松井裕樹(2年)。戦前はこの両エースの初対決が注目を集めた国体優勝戦。だが、試合が進むにつれて[stadium]岐阜メモリアルセンター長良川球場[/stadium]は、「大阪桐蔭史上最強年代・高校野球卒業式」のリサイタル会場へと化していった。

「相手はスライダーに手を出してくれなったので、松井はコーナーを初回から突いていったと思うが、その精度がよくなかったですね。大阪桐蔭は狙い球が徹底されていますし、そこがウチとの違いです」。敵将の桐光学園・野呂雅之監督も舌を巻くほど、初回から大阪桐蔭打線は甲子園となんら変わらないパフォーマンスを示した。

松井はこの回、3四球と自らの悪送球で2点を失うと、3回裏一死二・三塁から二塁走者の生還をも許す大暴投で2失点。さらに4回には3連続四球後、2番・水本弦(主将・3年)に犠飛(二塁走者は三進に失敗)、3番・森友哉(2年)に中越三塁打を浴び計6点を奪われ、5回からはマウンドを遠藤智騎(3年)に譲ることに。

4イニングで5三振を奪い、3回裏には4番・田端良基(3年)を自己最速となる147キロで三邪飛に斬って取る見せ場を作った一方での、「102球・7与四球」は、彼が大阪桐蔭の前に屈服させられたことを如実に表す数字といえるだろう。

そしてもう1つ忘れてはならないのは、国体全2試合で先発した澤田圭佑(3年)の「対応力」である。東京六大学・立教大への進学志望を持ち「次のレベルにつなげるために自分に色々な課題を持って臨んだ」国体。そこで彼がテーマとしたのは「輝くところはなくても試合で勝つ投手になること」であった。

事実、この試合では、走者を背負ってからは110キロ台のツーシームと130キロ前後のカットボールを有効に使い、2併殺を奪って無失点に抑えるクレバーさを発揮。よって最終回、藤浪は13点差と余裕を持った状態でマウンドに上がることができたのであった。


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最終回・高校最後の登板を最速149キロ12球1安打1奪三振で終えた大阪桐蔭・藤浪晋太郎(3年)

これで大阪桐蔭は今季、秋季大阪府大会、第84回センバツ、春季大阪府大会、春季近畿大会、選手権大阪大会、第94回選手権、そして国民体育大会と計7冠を獲得。

松坂大輔(ボストン・レッドソックス)を筆頭に、小山良男(現:中日ブルペン捕手)、後藤武敏、小池正晃(現:横浜DeNA)などキラ星のごときスターをそろえ、秋季神奈川県大会、秋季関東大会、明治神宮大会、第70回センバツ、春季神奈川大会、春季関東大会、選手権神奈川大会、第80回選手権、国民体育大会と公式戦44勝無敗、計9冠を獲得した1997~1998年の横浜にこそ及ばないものの、それ以来史上3度目(注:この日、日本高野連が1979年・春夏甲子園連覇を達成後、台風接近のため打ち切りになった箕島(和歌山)の国体ベスト4を「優勝認定」したため)の春夏甲子園連覇・国体の3冠も同時に達成した。

ただ、それは「最後に勝って高校野球を終えることができてよかった」とホッとした表情で語った藤浪1人では決して成し得なかったこともまた確か。その元を正せばここまでいくつか例を記したように、やはり全ての高校球児の模範とすべき「徹底力」と「対応力」に行き着くのである。

大阪桐蔭の偉業は「エースナンバーを付けられなかったことは何とも思っていない。だって、僕はチームの中で『0』が付いている背番号(10)を付けていますから」と話せる澤田の言葉を借りれば、「全員で力を合わせて色々なことに粘り強く取り組む」集団によるもの。そこを私たちは決して忘れてはならない。

(文・写真=寺下友徳/中谷明

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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