試合レポート

光星学院vs関東一

2012.04.02

経験が生きた光星学院 貴重な経験を持ちかえる関東一

関東一の先発はエース中村祐太(2年)ではなく、左腕の醍醐駿平(2年)だった。米澤貴光監督は、ここまで3試合で355球を投げてきた中村の疲労を考慮。前半粘って後半勝負に持ち込むためには、エースを後ろに残して、醍醐に試合を作ってもらうプランしかなかった。

その醍醐は甲子園初登板。緊張感は当然あっただろうが、緩急をつけた投球術で、光星学院打線を3回まで1安打とほぼ完璧な内容で抑えていた。
逆に関東一打線は、光星学院先発の城間竜兵(3年)を攻め、4回まで毎回のように得点圏に走者を出した。だが、そこから崩れないのが城間の投球術。
「城間はコントロールが良い。相手打線の立ち位置などで狙い球がアウトコースだとわかった。しっかりインコースを突いていこうと思った」とマスクを被る田村龍弘(3年)の読みも冴えた。

前半で苦しみながらも抑えていた城間に『何とかしたい』という雰囲気ができあがった光星学院陣営。4回裏、打順が二巡目に入り、醍醐の投球にタイミングが合いだす。先頭の2番村瀬大樹(3年)はサード正面へのライナーだったが、完全に捕えた打球だった。

そして3番の田村。2ボール1ストライクで迎えた4球目。醍醐の111キロの変化球を振り抜くと、打球はレフト方向へ高々と上がった。関東一のレフト伊藤大貴(3年)は懸命に背走するが、誰の目にもスタンドに入るのは間違いない当たりだった。
「直球が来るかなと思っていたが、その前(2球目)の変化球とまったく同じコースに来たので打つしかないと思っていきました」と待望の甲子園初本塁打を喜んだ田村。ベンチはこれで一気に勢いづいた。


 逆にここまで快投してきた醍醐は、この一発の衝撃で少し怯んでしまった。制球はやや甘くなり、4番北條史也(3年)のヒットをきっかけに、この回もう1点を失う。

関東一は5回表にも、先頭の9番醍醐がヒットで出るが、バント失敗や俊足の磯部優太(3年)が仕掛けた盗塁が田村の肩によって刺され、得点することができなかった。ここは、田村が打撃から完全に乗ったことを象徴する場面でもあった。

後半も幾度となく攻め立てる関東一。さらにここまで3試合で失策1だった光星学院内野陣の守りのミスも重なり、得点するのは時間の問題に見えたが、昨年から甲子園で何度も修羅場を味わってきた光星学院の経験が最後の最後に崩れなかった。

8回は1死2,3塁から5番伊藤の外野フライでタッチアップした俊足の岸直哉(3年)が、ライト天久翔斗(3年)の肩によって刺されている。
8回まで8安打しながら無得点の関東一と、7回まで5安打で3点の光星学院。この数字はゲームの流れそのままだ。
8回裏。6回からマウンドに上がっていた関東一・中村を攻略した光星は北條の2点タイムリーと6番大杉諒暢(3年)の三塁打で3点を追加。勝負を決定的なものにした。


城間は9回に1点を失うも、1失点完投。ダブルエースのもう一人、金沢湧紀(3年)を完全休養させることに成功した。
「11安打されたが、粘り強くピッチングしてくれた。天久の好プレーとか、みんなで盛り立てたれた」と田村主将。次へ向けては、「もっと始めから勢いづかないと」と大阪桐蔭との決戦を見据えた。

「日本一になるのは、そんなに甘いことじゃないと教えてもらった」と仲井宗基監督も気を引き締める。昨夏の決勝で日大三に大敗した経験を生かす場が、いよいよやってくる。 

一方、敗れはしたが関東一は準決勝までの4試合を無失策で通し、暴投などのバッテリーエラーも0だった。これは誇れる部分だろう。ただし米澤監督は、「投手を含めた守りという点では課題が多かった。今日の試合で言えば、8回の北條君のタイムリーで中村が本塁の前でカットしたこと。あれはカバーのために、キャッチャーの後ろにいるべきで、やってはいけないプレー」と厳しい表情を崩さなかった。指揮官の目には、カバーリングなど、記録には表れないエラーがいくつも出たという認識なのだろう。

さらに光星学院打線のバットスイングと打球を見て、主将の木内準祥(3年)は、「もっと打撃を強化しないといけない」と痛感させられたようだった。
エース中村の躍動など大きな財産を得た。この後は、甲子園での疲れを取る部分と、気持ちの切り替えが大事になる。東京ではすでに春季都大会がスタートした。関東一も甲子園から中4日で7日(土)に初戦を迎える。休む間はほとんどない。

「明日から切り替えるではなく、今から切り替えたい」と気持ちを新たにした主将・木内。指揮官も「何とか夏のシードを」と前を向いた。
大きな経験を持ちかえって夏へのスタートを切る。

(文=松倉雄太)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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