試合レポート

鳴門vs洲本

2012.03.25

なぜ、鳴門打線は苦戦したのか

 思わぬ試合展開だった。

昨秋の四国大会を制し、チーム打率382を誇った鳴門の打棒が爆発するのだと思っていた。洲本のエース・島垣の昨秋防御率が3点後半だっただけに、そう思うのも無理はない。

しかし、フタを開けてみると、鳴門打線は4安打2得点。1番・河野が10回裏に左中間を破る適時二塁打を放ち辛くも勝利を挙げたが、試合展開としては完全に洲本のものだった。

なぜ、そうなってしまったのか。

「もともと、こういうチームだったんです」
そう苦笑したのは鳴門・森脇監督だ。

指揮官に言わせてみれば、大会屈指の打率は「たまたま」なのだという。昨秋、ノーシードから勢いに乗り、県・四国と制してきたが、本来は打のチームを標榜していたわけではない。「守備でリズムを作って、攻撃していく」のが鳴門の持ち味だった。

とはいえ、昨秋の成績がチームに「打」への自信をもたらしたのも事実で、指揮官自身もそのことは重々理解していた。相手のエース・島垣に対して、低めの変化球を捨てて的を絞っていくという対策を立てていたほどだった。

そこに穴があった。

6回裏に貴重な同点適時打を放った杉本は言う。
「相手をなめていたわけでもないし、油断していたわけでもないんです。昨秋、打って勝ってきたイメージがあったので、自分たちは打つチームだというのを強く思ってしまっていました。初戦の緊張というのもありましたし、打たないといけないという意識が強くなってしまった」

決して、鳴門打線が島垣を見くびっていたようには思わなかったが、鳴門打線が指揮官の指示通りに変化球を見極められなかった背景には、昨秋に得た自信がマイナス面に働いていたのは紛れもない事実だろう。昨秋に得た自信が指揮官がたてた「低めを捨てる」という対策に、順応できなかったのだ。


 さらに、島垣の変貌ぶりも鳴門打線を苦しめた。

 鳴門打線が試合前にイメージした島垣は「打たせて取るタイプ」だったが、試合が始まると一変した。
島垣の持つ球速が135キロ程度だから、それほどの本格派タイプに見えないが、力で勝負するスタイルはまさに本格派だ。ストレートで押しながら、変化球を使う。球の出し入れなど配球で打者を打ち取っていくというよりも、ボールの質で勝負する。「適当に荒れているところもあって、的を絞りにくくかった」という森脇監督の言葉は、まさに、島垣の変貌を示す言葉だ。

かくして、強力打線の鳴門は苦戦を強いられたのだった。

「こういう試合展開になっても競り勝てるというのは、今後には大きい。今日は無失策でしたし、自信になる」と森脇監督はいった。指揮官からしてみれば、もともとはこの日のスタイルが持ち味だったというのだから、特に気にするはずはないが、昨秋の姿とこの日の姿をどう重ね合わせていくか、今後の戦いでは鍵になるだろう。
「打」鳴門とみれば、今日の試合は「大苦戦」だし、鳴門が「試合巧者」という評価なら、今日は持ち味を発揮したということになる。

 
果たして、彼らはどちらなのチームだろう。

その評価は次戦まで、持ち越そうと思う。

(文=氏原英明)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.05.31

【鹿児島NHK選抜大会】鹿児島実がコールド勝ち!川内商工は終盤に力尽きる

2024.05.31

夏の愛知大会は6月28日から開幕!決勝戦は7月28日【愛知大会要項】

2024.05.31

【北信越】富山県勢4校が12年ぶりの県勢V狙う、茨木擁する帝京長岡にも注目<地区大会>

2024.05.31

【鹿児島NHK選抜大会】鹿屋農が"強気の勝負"で勝機を引き寄せ4強入り

2024.05.31

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在34地区が決定、佐賀では佐賀北、唐津商、有田工、龍谷がシードに

2024.05.26

【春季関東大会】白鷗大足利が初優勝!最後はタイブレークの末サヨナラ死球で幕切れ!

2024.05.26

【近畿大会注目チーム紹介】実力派監督就任で進化した奈良の名門・天理。超高校級の逸材3人を擁し、緻密な攻守で全国クラスのチームに!

2024.05.26

【近畿大会注目チーム紹介】エース頼み脱却を目指してきた京都国際。「素質はプロ入り左腕と同等」の2年生左腕の台頭と打線強化で京都の大本命に成長!

2024.05.28

交流戦開幕、初戦の注目は髙橋宏斗vs.今井達也の初対決!

2024.05.21

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.05.15

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.05.13

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在29地区が決定、愛媛の第1シードは松山商

2024.05.19

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在30地区が決定、青森では青森山田、八戸学院光星がシード獲得

2024.05.21

【24年夏全国地方大会シード校一覧】現在33地区が決定、岩手では花巻東、秋田では横手清陵などがシードを獲得〈5月20日〉