試合レポート

光星学院vs愛工大名電

2011.11.28

光星学院vs愛工大名電 | 高校野球ドットコム

優勝を喜ぶ光星学院ナイン

新たな歴史を刻み込む

 全国トップレベルの対決だ。愛工大名電光星学院。エース浜田を擁し、堅実な守備力で勝ち上がってきた愛工大名電と4番北條史也を中心に打撃力と試合運びの巧さで勝ち上がってきた光星学院の対決だ。拮抗した力同士の対決に試合は接戦になっていきそうな予感をさせた。

2回の表、愛工大名電は二死から9番中村が外角高めの直球を叩く。平凡なレフトフライに見えたが、レフトが逆光により目測を誤り、二塁打に。1番木村は一、二塁間に転がす。セカンド・松浦が回り込んでスローしていくが、無理な体勢。送球は逸れて、その間に1点を先制する。さらに3回の表にも二死から鳥居の適時打で1点を追加する。その裏、光星学院は田村の右前適時打で1点を返した。

5回の表、3番荒木が中前安打。そして4番松岡が強打。打球はセンターへ伸びていき、頭を超える三塁打で1点を追加。

5回の裏、光星学院は無死満塁のチャンスを作るが、北條の押し出し四球による1点のみに終わったが痛かった。
浜田。絶対的な安定感もないし、ランナーを出すことが多い。それでも自分の間で投げて抑えてしまう図太さを感じた。浜田は6回の裏まで浜田は9奪三振を奪う快投。140キロ前後のストレート、スライダー、カーブのコンビネーションが冴えていた。捕手・中村 雄太郎は今日の配球の意図を話してくれた。

「相手はストレートで張ってくると思ったので、スライダー中心にして、ストレートを見せ球にして、内外角に出し入れする配球を組み立てました」

ストレートは両サイドに投げ分け、決め球のスライダーを外角に決める配球だった。ちなみに初戦で投げたスプリットは完成度が低いということで投げさせなかった。ストレートとスライダーのみで打撃力の高い光星学院相手にも三振の山を築く。しかし連投の疲れを隠すことが出来ず、細かなコントロールに欠けていた。それでもピンチの場面では正捕手の中村が「ピンチの場面では全くボールの力が違う」と言う通り、追い込んでからのストレートの切れ、スライダーの切れは確かなものがあった。


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タイムリーを放った田村(光星学院)

疲労が見える浜田を援護するべく愛工大名電は7回の表、3番荒木が中前安打。松岡が犠打で送り、5番中野が右中間を破る三塁打で1点を追加する。さらに6番鳥居の右犠飛で1点を追加する。5対2と突き放し、愛工大名電が優勝へ向けて前進したかと思われた。しかし光星学院がここから粘りを発揮する。

3番田村がストレートを捉え右中間を破る二塁打。4番北條は外角ストレートを叩いて右前安打で無死1,3塁のチャンスを作る。5番武田の中犠飛で1点を返し、5対3。6番城間は見逃し三振で二死。光星学院の追撃もここまでと思ったが、ここからの粘りが凄かった。7番大杉が外角直球を叩き左翼線を抜ける二塁打で5対4と1点差に迫る。そして8番木村が右前安打。バックホームで、クロスプレーとなるが、送球が逸れてセーフ。3点差から同点に追い付いた。愛工大名電の勝利ペースから一転として同点に追いついた光星学院。流れは一気に光星学院に傾いた感じはあった。

8回の裏、1番天久はショートの失策で出塁。犠打で送り、一死二塁となって3番田村を迎えた。

先ほど二塁打を打たれた田村に対しては名電の中村はストレートを見せ球にして、スライダーで打ち取る配球に切り替えた。初球はストレートでストライクを取りに行った後、そのあとはすべてスライダーを投げて空振り三振を奪った。
そして4番北條を迎えた。バッテリーはスライダー中心の配球。北條はスライダーを狙い球に絞った。そのスライダーが高めに浮いた。北條が振り抜いた打球はセンターへ飛ぶ。センターの頭を超える勝ち越し三塁打。
北條は腕を突き上げてガッツポーズを見せた。

 
中村にとって悔むべき配球だったと思うが、既に浜田はギリギリにコントロールできるほどのスタミナはなかった。それにしても北條は夏に比べて成長した。彼の打球方向はレフト方向が多かったが、センター~ライトへの打球が増えた。センター返しを意識しているのか?という質問に対しては「今まではそれほど意識しているわけではなかったのですが、センター返しを意識したら、良い感じで打てているので、センター返しを心掛けたいと思っています」と更に進化を予感させてくれるコメントを残してくれた。

そして9回の表、エースの金沢が最後の打者をカーブで空振り三振。振り逃げに見えたが、打者の足に当たったためボールデッドとなり、ゲームセット。光星学院が初優勝を達成した。


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エース・金沢(光星学院)

お互いミスが見られた試合内容であった。光星学院はレフトが逆光で目測を誤って1点を失うプレーがあった。そして正捕手の田村のキャッチング技術がまだまだで、後ろに逸らして進塁を許すことが多かった。
愛工大名電は守りのミスが目立った。全体的な球際の弱さ、同点に追いつかれてから暴投で進塁を許す。そして逆光で目測を誤る。5回の表にはワンアウト満塁からエンドランのサイン。しかし空振り三振・三塁走者タッチアウトでダブルプレー。全体的にチグハグとした印象を受けた。

お互いミスが見られる中でも、光星学院は浜田から6得点を奪ったことは自信になっただろう。甲子園準優勝に終わり、全国制覇を標準に置いてスタートした新チーム。旧チームの経験者は田村龍弘北條史也城間 竜兵天久 翔斗の4人のみ。その4人が中心となってチームがガラリと入れ替わってもチーム力の高さを維持してきたことには素晴らしい。
だが慢心することはない。仲井宗基監督は「まだチームは発展途上です。足元を見つめ直して再び鍛え直したいと思います」とチームをしめ直して鍛えるつもりだ。

4回から登板し、5イニングを投げて3失点のエースの金沢湧紀は「今の投球では選抜に通用しない。それまでにフォームを固めて、冬の練習では自分を追い込んで、すべての面をレベルアップさせたい」とエースとしての自覚十分であった。

東北勢としては平成5年の東北(宮城)以来の優勝。東北はその時代の東北地区を引っ張るリードする強豪校となり、今なお東北地区のトップに位置する。光星学院は夏の甲子園準優勝、そして神宮大会初優勝。光星学院は新たに歴史を刻み、チームとしての「旬」を迎えつつある。

(文=河嶋宗一

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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