鴨島商vs徳島市立
鴨島商業先発・川人祐太(2年)
鴨島商業、エースの奮起で「最後の甲子園」への一歩目刻む!
来年4月には阿波農との統合再編により「徳島県立吉野川高校」となる鴨島商。阿波農に野球部がないことで選手たちに実質的な影響はないとはいうものの、今大会が1968年(昭和43年)には甲子園出場も果たしている古豪の名を再び甲子園に灯す最後のチャンスであることには変わりない。
そんな鴨島商のエースは県内でも好サウスポーの呼び声高い川人祐太(2年)である。1年秋からマウンドを守り続け、「最後の鴨島商業で甲子園に行ける機会だし、この大会では悔いのない試合をしたい」と、校名への思いも人一倍な彼。ただし、この試合では「緊張はなかったが、気負ってしまった」と本人も言うように、その思いが空回りする場面が散見された。
1回裏には自らの暴投が絡んだ1死1・3塁のピンチで徳島市立4番・福田泰顕に犠牲フライを放たれて先制点を失うと、その後も5回まで毎回ランナーを背負う展開。「立ち上がりが悪いし、ムラがある」と川平伸也監督が指摘する課題を抱えた序盤における彼の出来は、3回に5番・岡田雅(1年)の適時打と押し出し四球で逆転したチームにとっても心配の種となっていた。
鴨島商業の校歌を歌えるのもあとわずか
しかし6回以降、川人のピッチングは一転する。そのきっかけはグラウンド整備中「どれだけバックに迷惑をかけているんか!」という川平監督から浴びた叱責。昨秋には準々決勝で徳島城南に、そしてこの夏には1回戦で海部に突如集中打を浴び、先輩たちの涙を目にしてきた彼にとって、その言葉は奮起する何よりの発奮材料となった。
その後は130キロに満たないながら、「走っていた」ストレートとスライダーを交えて安定感ある投球を見せた川人。後半唯一のピンチとなった2死3塁のピンチもピッチャゴロで切り抜け、鴨島商は今春以来となる県大会1勝をマークしたのであった。
とはいえ、鴨島商が「四国の水をたたえたる 流れつきせぬ吉野川」で始まる校歌を勝って歌えるのは、どんなに多くても10回あまり。この美しい校歌を歌い続け夢舞台に到達するためにも、エース川人はあえて思いを背負い成長を続けていく。
(文=寺下友徳)