試合レポート

唐津商vs佐賀西

2011.07.22

エースの強さ

最後の打者を外のスライダーで空振りで三振を奪い二日間に及んだ熱戦にピリオドを打った。

実に二試合で24イニング、計408球の熱投だった。
「疲れは感じなかった。肩もちょうどいいくらいに張っていたので、連投は全く気にならなかった」
試合後、北方悠誠は連投の疲れもみせず笑顔をみせて応えた。

初回は先頭打者をストレートで三振に打ち取り、この日も北方の奪三振ショーの始まりを見ている側に期待させた。続く二番船津をセカンドゴロ、3番松田はセンターフライに打ち取り、三振は奪えなかったが、上々の立ち上がり。
この日最速の146キロを記録したストレートはうなりを上げて捕手佐々木のミットに収まり、昨日の257球を投げ込んだ熱投の疲れは感じさせなかった。このストレートに佐賀西打線は全くタイミングがあわせることができなかった。

序盤、変化球を振ってこないとみると、このストレートを主体にし佐賀西打線を封じる。
4−0とリードの5回に佐賀西納富の三塁打でなどで2点を失うが、走者を出しながらも追加点を許さない。

最大のピンチは5点リードの9回。
先頭打者の高森智之をこの日三個目となる死球で出すと、9番代打井上伸乃介にはレフト前に弾き返され無死一二塁。ここから1番納富大輔に死球を与えると、続く船津にはストライクが入らず連続四球で押し出し1点を与える。リードは4点。なおも無死満塁のピンチが続く。この攻撃に、佐賀西スタンドの応援はこの日一番の盛り上がりをみせた。
この乱調ぶりに「ヒヤヒヤしてみていた」
と吉原彰宏監督。


だが、ここからが北方の独壇場だった。
三番松田出海をストレートで追い込むと三球三振。四番中村唐十郎にも同じくストレートで追い込み三振。五番重田貢二には2−2から、最後は外のスライダーで空振りを奪い三者連続三振で試合を締めた。
終わってみれば、被安打6、11奪三振も四死球10個を与えながら三失点で凌いだ。

「今日の出来は80点。連投ということを考えれば、まあまあよかった。ストライク先行でいけなかったところがマイナス」とこの日の投球を振り返る北方悠誠
9回の突然の乱調を問われると、
「またやってしまった。ただ追いつめられた方がバッターに集中できる」と連続四死球で招いたピンチの場面にも涼しい顔。

二年春には最速144キロを記録。一躍注目を集めた。その秋には、3完封を含む全5試合に完投し46季ぶりとなる県制覇し九州大会へ出場。
その九州大会では甲子園で清原以来となる1年生四番でホームランを放った九州学院萩原英之に一発を浴びた。
試合も雨による8回コールドで初戦敗退した。
その悔しさをバネに飛躍を誓った冬。足、腰を続けて故障し、走り込みなどができなかった。さらに、春季大会ではピッチングの感覚をつかみかけた矢先の準々決勝で、バントの際に右手指を負傷。本格的にピッチングを再開するのは5月にはいってからだった。不運の敗戦が続き、夏の大会の前哨戦となるNHK杯では調子があがらず、2回戦で登板を回避。チームも敗れた。その時期には投球フォームを模索する姿もみられた。

この夏の大会前まで決して順調ではなかった。
だが、昨春からの幾度とない試練を乗り越えてきた経験はエースを成長させていた。
昨日の延長15回、13四死球で招いた毎回のようにあるピンチを凌ぎきった。
この日も九回の無死満塁のピンチを三者連続三振で切り抜け、追いつめられると抜群の強さをみせる北方
だが、最後の夏、まだまだ追いつめられるつもりはない。
チーム27年ぶりの夏キップを手にするまでは。

(文=藤吉ミチオ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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