銚子商vs成田国際
伊藤(銚子商)
1点の重みを味わった三日間
銚子商業対成田国際。
昨日に延長15回を及ぶ熱戦を演じながらも決着がつかずに再試合に持ち込むこととなった。
銚子商業・成田国際は三日連続の公式戦。疲労の色濃い中でプレーボールした。
1回の裏、銚子商が仕掛ける。先頭の仲田がセンター前ヒットで出塁すると2番笹本の犠打で二進し、3番滑川の遊ゴロ失によりワンアウト1,3塁。打者は4番川口。
「昨日は体が開き気味だったので、とにかく右へ打つ気持ちで打席に入った」
右へ打つことを意識し、甘く入ったストレートをおっつけて右中間を破る二塁打を放つ。二者生還し、銚子商業が2点を先制する。4番が意地の一打を見せた。ツーアウト三塁となって6番神山。ここで銚子商は仕掛けた。神山はセーフティバント。三塁手のぎりぎり前に転がる打球。左打者の神山は全力で走り間一髪にセーフさせた。勝負を仕掛けたセーフティバントは成功し、貴重な3点目を入れた。この場面でセーフティバントを仕掛けた理由を石井監督に尋ねてみた。
「フィールディングの良い林君ではなく、左投手の大川君だったので。三塁線ぎりぎりに投手を処理するような打球を転がすことができれば、反転して送球をしなければならない大川君はロスが生じる。それを賭けてセーフティを仕掛けました」
試合の序盤で迷いなく勝負に仕掛け、神山が実行し、得点をもぎ取った。勝負にいって点を取りにいった得点はどんな形であれ、大きなものになる予感はした。試合は守る銚子商、追う成田国際という形で進行していく。
銚子商の先発は2年生右腕の伊藤。
捕手の川口は「打たれたらしょうがないという気持ちで思い切り投げろ」と伊藤に伝えた。伊藤は粘り強い投球で、ヒットを浴びながらも打たせて取る投球で6回無失点に抑える好投を見せる。一方で成田国際も二番手で登板したエース林が銚子商業打線を封じ込む。そして7回の表、成田国際はワンアウトから9番林が左中間を破る二塁打で出塁すると1番藤井がこの日3安打目となるライト線を破るスリーベースで1点を返す。8回の表、銚子商はここまで好投の伊藤に代えて1年生右腕の岩田が登板。公式戦初登板の岩田。緊張によって腕が振れない。下半身をうまく使えない。成田国際は岩田から8番大坂の犠牲フライで1点を返し、3対2の1点差。4点差を追いつかれた昨日(25日)を思い出させるような試合展開になった。8回の裏、無得点に終わり、9回の表。
銚子商はエースの小原を投入する。小原は1番藤村をショートゴロに打ち取りまずワンアウト。2番江里は痛烈なショートゴロ。処理が難しいバウンドとなったが、ショート仲田が逆シングルキャッチ。そこからワンステップし、スロー。ぎりぎりのタイミングでアウトとなり、ツーアウト。ショート仲田のファインプレーであった。そして3番松田。松田はストレートを強振。打球はレフトへ伸びしていくが、レフトが背面キャッチし、ゲームセット。その瞬間、マウンド上の小原は大きく万歳をして喜びをあらわし、ナインは小原の下に駆け寄った。銚子商が粘り強い戦いで3回戦に進出した。
小原(銚子商)
銚子商はこの三日間を公式戦に臨んだが、濃い内容の試合ばかりだった。初戦の茂原戦では4点ビハインドから逆転。そして成田国際の第1試合では9回まで勝っていたものの、追いつかれて延長再試合へ。そしてこの試合でも成田国際の猛追を振り切り接戦を制した。石井監督はこの三日間を終えての感想を聞いてみた。
「連続3試合は投手にとって負担になりますし、苦しい戦いを強いられる中で勝利したのは大きな経験になったと思います。最近は金属バットにより簡単に手が入ってしまい、一点取る重みというのが薄くなっている。しかし今回はあまり点が取れない。そして常に1点を守りきる状況で1点を守る大変さを痛感したと思います」と1点の重みを主張した。1点を大事にする石井監督の考えは戦いぶりにしっかりと浸透しているように感じる。ただ塁に出たらバントをするという野球ではなく、大事な場面では迷いなく勝負にいける石井野球だ。その野球はしっかりと選手たちが実行している。
9回の表、小原がマウンドに上がった場面について。
「成田国際打線の追い上げを見たら彼を投げざるを得ない場面だった。その中で彼は良く投げてくれたと思います」とエースを讃えた。そして小原のリズムの良さを評価した。
「小原はリズムが良いです。一定のリズムで投げることができているので野手は投げやすい。9回もショートの仲田が好守備を見せましたが、小原のリズムの良い投球が生んでいるのは間違いないと思います」
捕手の川口も「小原はリズムが良いので、守りやすいです」と彼のリズムの良さを評価する。
リズム。これは上の世界で活躍するほど大事な資質である。どんなに速いストレートを投げようと、鋭く曲げる変化球を投げられても、リズムを悪くし、味方のエラーによって崩れてしまえば意味がない。しかし突出した速球、変化球はなくても一定のリズムで投げ続けることは守りのリズムを良くして、安定した守りを築き上げることができるのだ。小原の安定した投球はリズムの良い投球が支えている。
この三日間は銚子商にとって大きな教訓と自信を得たものに違いない。試合後の選手たちの充実した表情を見て実感した。
(文=編集部:河嶋 宗一)