健大高崎vs樹徳
星野君(健大高崎)
健大高崎辛抱勝ち、4年ぶり関東大会進出へあと一つ
創部9年目、近年確実に上位に残る力を示しはじめた健大高崎。創部当初、鳥籠のようなグラウンドからスタートしたのだが、野球部をゼロから作り上げてきた青柳博文監督にとって、ここへ来ていよいよチームとしても充実感を感じられるようになってきたのではないだろうか。
昨夏、準々決勝で中盤に大量失点して敗退した樹徳に対し、この日は我慢して雪辱を果たした。同じ相手に続けて負けないということでも、また一つ階段を上ったともいえようか。
3回まで、お互いに走者を出しながらも得点には至らなかった。健大高崎は2度の盗塁死、樹徳はスクイズ失敗などがあった。そんな展開の試合、先制したのは樹徳だった。
4回の樹徳は先頭の根岸君が右線へ二塁打すると、バントで進め、廣瀬君の左中間への一打で迎え入れた。ついに入ったという感じの1点だった。
ところが、健大高崎も5回、すぐに八番の星野君が右翼へソロホームランを放ってあっさり同点とした。
3回などは満塁で四番という場面でも入らなかった得点が、こうして簡単に入ってしまうのだから、改めて野球というのは不思議なものだとも思わせてくれる。
振り出しに戻った試合は、樹徳・矢野君、健大高崎・星野君のお互い粘りの投球での辛抱戦という展開にもなってきた。序盤は球にばらつきのあった矢野君は、巧みにコースを投げ分けて打たせて取っていくようになった。星野君はオーソドックスな右腕だが、スライダーが低めに決まり、右打者の多い樹徳にはより効果的だったようだ。
延長の可能性もあるかなと思い始めた8回、健大高崎は1死後二番小池君が左中間を破る三塁打を放つ。
両翼90mながら中堅からの膨らみは比較的とれている桐生市民球場の一番深いところで跳ねた打球だったが、小池君も好走塁だった。
ここで、健大高崎ベンチは代打湯本君を送り出したが、その初球に少しスクイズの動作でけん制したこともあって捕逸を招いてあっさりと三塁走者が帰った。健大高崎にとってはラッキーな決勝点となった。
矢野君(樹徳)
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9回は2死から、少し勝ち急いだのか星野君が連打されて、さらに九番の代打野村君を迎えてフルカウント。安打が出たり、歩かせたら一番富澤君に回るし、わからなくなるというところだったが、最後は星野君が踏ん張って三振に切って取った。そのボールを捕った長坂捕手は思わずガッツポーズだった。
試合後の青柳監督はさすがに安堵の表情で、「星野がよく投げました。この大会ほとんど投げていなかったのですが、今日はコントロールがよかったですね」と評価した。
さらに攻撃に関しては、「例年に比べると、ドカンと一発を打つヤツがいなくて、迫力はないかもしれません。四番においている内田もつなぐ四番という意識ですが、足を使える選手が多いので、機動力が生かせます。前半はアウトでもOKというつもりで仕掛けました」と、これまでの健大高崎とはやや異なったカラーのチームとして仕上がりつつあることをアピールしていた。
一方、樹徳は昨夏決勝まで進出したチームなどに比べると、やや小粒という印象は否めない。試合展開としては、序盤にあと一本出ていればまた違った流れもあったかなとも思える場面はいくらでもあったものの、逆にいえば星野君の巧さにかわされたということであろうか。
(文=手束 仁)