試合レポート

竜ヶ崎一vs取手二

2010.07.17

2010年07月16日 土浦市営球場  

竜ヶ崎一vs取手二

2010年夏の大会 第92回茨城大会 2回戦

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取手二・山村

オールドファン垂涎の伝統校対決は竜ケ崎一が制す

 少し古くからの茨城の高校野球ファンにはたまらない実績のある名門校同士の好カードといっていい。というのも、取手二が26年前に県勢として初めて全国制覇を果たしたときの、茨城大会決勝のカードでもあるからだ。

その後、取手二を作り上げた木内幸男監督が

常総学院

へ移ったということもあり、低迷が長くなった取手二。一時は部員も集まらず廃部の危機さえあったという。それが、関口秀文監督が就任して、今春は4強に進出して地元開催となった関東大会出場を果たしたこともあって、俄かに取手二のOBや関係者たちも期待が大きく膨らんできたのだ。

一方、明治36年に創部という超伝統校の

竜ヶ崎一

は古くからのファンも多いが、県内の指導者も多く輩出していることでも知られている。図らずも、関口監督も

竜ヶ崎一

一の出身である。それだけに、試合前は、「竜一のOBの方から、『おい、関口頑張っているな、今日は頼むぞ』と、声を掛けられても、どう返事をしていいんだか困ってしまいました」と、いくらか困惑気味だった。

そんな因縁ともいえる試合は初回、

竜ヶ崎一

が先頭の大浦の安打で勢いづき、三番鳥羽の右中間三塁打などで2点を先取する。

 反撃したい取手二は、4回に2死二塁から六番和田の左越二塁打で1点差とした。
しかし、

竜ヶ崎一

はそれ以上に力強かった。すかさず5回に九番江口が左前打で出ると大浦の二塁打で帰し、さらに溝上の右前打で一三塁とすると、併殺の間に三塁走者が帰りこの回2点。
6、7回にも

竜ヶ崎一

はワイルドピッチや神谷の中前適時打などで小刻みに得点を重ねて試合をリードした。

 粘りを見せたい取手二の反撃は8回に有坂の安打などで2死二三塁の好機を作ったが四番鳥井のやや幸運な右前適時打で2点を返すにとどまってしまった。結局、

竜ヶ崎一

の170cm73kgという、ややずんぐりした感じの秦投手が緩急の使い分けの巧みさと、度胸のよさで好投して取手二を押さえ込んだ。
 終始、ベンチから大きな声で後輩でもある選手に指示を与えていた

竜ヶ崎一

の飯塚親弘監督も勝利の瞬間は思わず笑顔がこぼれた。一方、取手二のユニホームに身を包んでベンチ前で敗者の指揮官として母校の校歌を聞いた関口監督は、「今日だけは厭な歌に聞こえました」と悔しさをにじませていた。試合後、ベンチ前で泣き崩れる取手二の選手たちだったが、低迷していた全国優勝の実績のある学校を再浮上させる切っ掛けを作ったということだけでも十分に、当時と変わらないスカイブルーのユニホームを着た誇りを今後の自信として欲しいと思う。関口監督も、「野球部が学校全体を引っ張っていく起爆剤となっていくという役割は十分に果たしてくれた」と選手たちを称えていた。

 ところで、「千秋の雪積もりたる 富士の高嶺の雄姿ぞ…」という竜ケ崎一の校歌は、かつて旧制第一高等学校(現東京大教養部の前身)の西寮寮歌「アムール河の流血や」として歌われ、その後、日清戦争や日露戦争では「歩兵の本領(万朶の桜)」として歌い継がれたものがベースになっているという由緒あるものだ。ややレトロな土浦市営球場にも似合う校歌だった。それに、ぎっしりと入った応援席で繰り広げられたオーソドックスなスタイルも含めて、名門校対決は昭和の匂いを感じさせてくれるものでもあった。
 そんな余韻も引きずりながら、野球オヤジは球場を後にした。

(文=手束 仁


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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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